第31話 俺の中の邪悪

どれも短期間しか続かなかったけど、今までの人生で何度か女の人とは恋愛関係になった事がある。直近だと去年3ヶ月くらい恋人がいた。もちろん俺が振られた。


俺は自分の人生を振り返って、仲の良い男友達がいた経験が殆どない。一方的に俺が仲が良いと思っていても、裏では全員に嫌われていた。若い頃からそんな経験ばかりだ。他人が怖くなって、俺は俺のことが好きな人しか好きにならないようになった。


中学、高校で野球部だった頃の夢ばかり未だに見る。俺は夢の中でも現実同様に全く人間関係がうまくいかない。見たくもない過去の夢を見て、起床してから20分くらいはベッドに座って死んだ目でタバコを吸っている。俺は人間社会でどれだけ普通の人を演じてみても、無理だった。今思えばそもそも「演じる」という前提がおかしい。普通の人は普通に普通の言動ができるから普通なんだ。「演じないといけない」って時点で何かがおかしい。自分が周りとのズレを感じているからこそ、それを矯正しようとする。その違和感は周りに伝播するし、「なんかこいつ変だな」ってなって思われてしまう。


俺は意図的に明るく振る舞おうとしない限り、めちゃくちゃ暗い人間で何も喋らない。いつも無理しないと人と喋れない。だったら一生黙ってろよと俺は思うのだが、俺も人間なので寂しくなったり欲求不満になったり人と関わるのが得意な人に嫉妬を覚えたりもする。ある程度は俺の努力で何とかギリギリの水準まで持っていく事はできたが、それでも人と喋る時は緊張するし、酒に頼らないと声も出ない。出たとしても声は少し震えている。


基本的に俺はずっと過去の自分の言動を反省していて、悩んでいる。過去がいつも俺を追いかけてくる。考え事すら出来ないくらいに今を忙しくすれば良いんだろうけど、もう俺は何もしたくない。


「社会不適合者」と一言で片付ける事もできる。俺は物事を深く考える知能もないし、頭が悪い。思想家や哲学者の言葉に自分という存在を当てはめてみたりして、楽になるのが好きだ。ただでさえ頭の回転は速い方ではない。当たり障りの無い人間を目指した結果、今では「自分」がどこにもいない。


でも俺の感情が昂ったり、相手と喧嘩になると、絶対言っちゃいけない事をヤケクソで普通に言ったりする。相手が一番傷付くであろう言葉をあえて選んで相手を攻撃したりする。俺は意図して相手を泣かせる。あとからすごく反省する。言葉は人を殺す力があるからだ。でも俺の根っこのゴミな所が治らない。精神科の心理士のカウンセリングを受けても、何年も薬を飲んでいても。


悪気は全くなくても、相手が不快になる言葉を簡単に言ってしまう事もある。


最近テレビやネットで兵庫県の知事が問題になってるけど、俺ももしかしたらあいつと同じ種類の醜悪な人間なのかもしれないと思っている。権力や立場を手に入れたら、俺だってもしかしたらあれくらい傲慢になってるかもしれない。


発達障害を抜きにしても、単純に俺の性格がめちゃくちゃ悪いクズなんだと思う。男同士の友情というものがどうも分からない。男の親友ができたこともない。


特に20歳を過ぎてからは、友達ができたとしても、99%女友達しかできた事がない。


多分俺は女性を性欲抜きにして好きになった事が一度もない。2017年くらいによく関わっていた人が「Unknownさんは私が女だから私の事を受け入れたんだ」と言った。そして実際その通りだった。女だから好きになった。


俺は浅ましい。


色々考えまくって、その結果に出た答えは、俺はもう人と関わりを持つなよっていう答えだった。


俺の根っこはとても軽薄で、人の命だって軽く見ている。でも「良い奴」だと思われたいから、良い奴っぽい発言や振る舞いをしてるだけだ。俺の心の中にはドス黒い言葉ばかり浮かぶ事もある。


はっきり言って俺は、過去の色んな無差別殺人犯の思想に共感できてしまう。もう自分の人生なんて全てどうでも良くなるし、どうでもいい人を殺したい気持ちもわかる。でも俺の中には「善でなくてはならない」という気持ちがあるから、凶行に及ばない。俺は家族が大切に思っている。家族を「殺人犯の家族」には絶対したくない。家族の事が大切だから犯罪は絶対しない。でも俺がもし全く愛の無い家庭で育っていたとしたら、俺の今がどうなっていたかは、わからない。


もうリアルの世界で誰かと恋愛関係を持つつもりはない。俺もだんだんおっさんになるし、若さを完全に失ったら本格的に誰からも相手にされないと思う。ただでさえ今は働いてなくて終わってる人間だからな俺は。


俺と関わる事で、きっと相手はプラスよりもマイナスの方が大きい。コップの中に不満という名の水が少しずつ溜まっていって、コップの表面張力が壊れて水が溢れ出した時、俺は人から縁を切られる。


俺は常に加害者としての経験しかしていない。


俺から相手を嫌いになった事は一度も無いけれど、相手が俺を嫌いになって俺と縁を切る。だから俺に問題があるのは間違いないのだが、もう俺には改善策が見つからない。


俺が良い奴のフリをして他人を欺くのは、結局は女とやりたいだけだからか。それとも俺は普通に良い奴の面もあるのか、俺はもう自分では判断がつかない。


俺が身につけた優しさは、きっと元からあった物ではなく、学習して人工的に身につけた物だと思っている。本質的に優しいわけでは全く無い。悩んでいたり病んでいる人にこういう言葉をかければ当たり障りがないんだという事を学んだから、病免状は優しくなれるだけだ。


俺自身も病んだ時期は長いが、別にそんなのは大した問題ではない。


「性善説」と「性悪説」っていうのがあるけど、俺が自己分析する限りでは、俺は良い性格で生まれて、色々あって性格が悪くなったが、大人になるにつれて学習して良い性格を取り繕うようになれたって感じの流れだと思う。


中学の時は素行がかなり悪かった。学校の廊下に画鋲を撒きまくった事もある。ガキの頃の俺は単なる犯罪者だ。他にも色んな悪事を働いた。中学の俺は野球部かつ学級委員長もやってて、横柄になりまくって本当に性格が悪かった。クラスメイトの女子に酷いあだ名をつけてしまった事もある。


色んな人に当たり前のように備わっている人間性が、俺には多分なにもない。だから学習して身に付けようとしたけど、そんなハリボテの優しさや愛はすぐ偽物だとバレてしまう。


自分が加害者という意識が常に頭の中にあるから、他人と深く関わるのが怖い。




続く

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