第18話 ネットのサイコパス診断を受けた

 サイコパス診断を興味本位でやってみた。画像を見て想起した感情を選択するという内容の物だ。俺はとても素直に回答した。その結果は、黒に近いグレーだった。あなたはサイコパス傾向が強いですが、サイコパスとも言い切れません。みたいな曖昧な結果だった。俺の心の中に「優しいフリして邪悪な一面」があるのも自覚してるから、サイコパス傾向が強いと言われて腑に落ちた。


 俺は世の中のスピードや厳しさに戸惑いながら生きてるのは確かなので、昔から考え方や価値観が周りとズレてる事は多かった。「なんでみんなはこうなんだろう」みたいな。なのでサイコパスというよりは単に俺のコミュニケーション能力や共感力が足りなくてズレてるように映るだけかと思う。


 例えば女の子が「私、焼肉行くとご飯いっぱい食べちゃうんだよね」と言ったとする。そのとき普通は「どのくらい食べるの?」と聞くのかもしれない。だが俺の場合は、「わかる。俺は丼で5杯くらい行く」みたいに主語を自分だけの話題に切り替えてしまう癖がある。よくない癖だなと思っているのだが、訓練しても治らないし、無理に直そうとすると会話の中にラグが生まれ、ぎこちなさが出てしまう。


 俺は自分主体のコミュニケーションばかり取ってしまう傾向にある。だからこそ、いつも相手の言葉を俺なりに噛み砕いて傾聴するように心掛けている。この言葉はどんな感情でどんな意図で俺に送られたのか、あるいはその人の文化的背景や思想も汲み取るように心がける。リアルで会話する際、俺は相手の話を遮る事は全く無い。表情や声のトーンや目の動き、声の感じで色々汲み取るようにしている。


 俺と同じように自分主体のコミュニケーションをするタイプの人もたまに居ると思う。おすすめは、主語を自分に持っていくにしても文頭に「わかるわー」みたいな共感を一個置いてからコミュニケーションを取ることだ。それが無いと、相手を拒絶してるとかマウントを取られてるとか勘違いされる事もある。


 ゲームみたいに選択肢から言葉を選べるならどれほど楽だろうか。とよく思う。相手もNPCじゃないから相手の気持ちも想像した上で、なおかつ円滑なコミュニケーションを取ろうって考えると、俺には難しくて仕方ない。


 あと最近なんとなく気付いたのだが、俺が女の人と電話してる時に出る口癖として、「そうそう」がある。後から振り返ると「そうそう」って言ってる回数が多いなと思った。


「●●だよね。うん、そうそう」


 みたいな。


 俺もやっとこの年齢になって異性と通話することに抵抗を感じなくなった。


 友達や恋人に絶縁された経験がめっちゃ多い。その人にとって俺が毒になったんだと思う。毒にも薬にもならない人は絶縁までは流石に行かない。調子に乗ってるかもしれないが俺は劇薬かもしれないし、猛毒かもしれない。今は優しいふりをして、そういう文を心がけてるが、俺の本質は別に全く優しくない。


 でも俺の人生を物語として考えた時、一人一人が俺の物語の中において必要不可欠な存在であったことは言うまでもない。


 俺みたいな社会のゴミと仲良くしてくれた全ての人間に感謝と謝罪をする。


 俺が自分から他人との縁を切った事が人生で一度もないという事実から、俺は俺をサイコパスなのではないかと疑う。黒確定なんじゃないか。


 あとサイコパスは罪悪感もなく平然と嘘をつく。


 あーもうめんどくせえ、ええい、ままよ!


 ってなって思考を停止してしまう事もあるが、思考停止は良くない。特に人間関係については。


 ◆


「苦手な人」と「敵」は似てるようで全く違う。


「俺はあなたの味方ですよ、理解者ですよ」みたいなスタンスで近づいてきて結局相手を利用するだけの俺みたいな奴は100パー敵だから関わるべきではない。俺みたいなクズは優しいふりをして追い詰めてくるし、最悪の場合、あなたの良心を利用して罪悪感を植え付けようとしてくる。


 逆に、耳が痛いことを言う人が自分の真の味方であるパターンも多い。


 他人に何をどうするのが優しいのかは、パワハラと同じで結局のところ相手の受け取り方次第だと思うから、答えが無い。でも「こうしちゃいけない」っていう不文律は沢山ある。それもパワハラと同じ。


 自分のことを本当に思ってくれてるかどうかの見極めは難しい、はっきり言って。


 俺がどういう所で人を判断してるのかは自分でも分からないが、テレビとかで「なんかこの人苦手だな」と直感的に思った芸能人の多くが不祥事を起こして居なくなったり干されたりする。


 なんか嫌だなあって感じるセンサーが俺の中にある。誹謗中傷に当たったら嫌なので芸能人の名前は一切出さない。


 俺は人前で表情を作るのが苦手だが、作り笑いをしてお互いに疲弊するくらいならずっと無表情でいようと思っている。だから今まで笑顔が求められる仕事はほとんどした事がないし、したとしても苦痛すぎてすぐ辞めた。


 また、俺自身、ずっと笑って喋る人が苦手なのと、そもそも相手の顔を見るのが苦手なので、あまり見ない。


 ◆


 やりたい事が何も無い。なので俺がもしいつか何者かになっているとしたら、いつの間にかなってるんだと思う。


 俺が人生を賭けてやりたい事が一つだけある。彼女ができたら2人で同棲してみたい。でも、笑い飯の西田みたいなマンバンヘアーのブサイクのニートと同棲するって、相手からすると罰ゲームも甚だしいので、まずは清潔になった上で金を得るっていうのがスタート地点だな。


 自分の人生を物語として考えた時に俺は正しいか間違ってるかどうかではなく、面白いかどうかで考えたい。映画で言ったらまだ序盤。


 砂漠で彷徨って死にそうになってる時に原価100円くらいの水をくれて命を助けてやれるような人間になろうと思うが、むずい。


 俺自身どうしようもない暗い穴の中から抜け出せずにいるからだ。


 井の中の蛙大海を知らずという諺があるが、大海を知った時の衝撃やストレスに耐えかねて、俺はまた井戸の中に籠るようになってしまった。狭い井戸から見上げる真夜中の月明かりは綺麗に見える。




 次回に続く

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