第13話 お盆が終わったら一人旅したい/創作論について

 今めっちゃお盆だ。This is お盆。


 なすときゅうりに割り箸などで4本の足を生やしたものを飾ってる家も多いのではないでしょうか。あれは精霊馬と呼ばれている乗り物で、あのナスときゅうりに先祖が乗って家とあの世を行き来するそうだ。


 あのナスときゅうり、見た目が可愛いから好き。


 たしかきゅうりがこの世に来る為の乗り物で、なすがあの世に帰る為の乗り物だ。


 何故なすときゅうりになったのかは諸説あるが、大昔の日本でお盆の時期によく収穫できる作物がなすときゅうりだったからっていう説が最有力だ。


 俺の場合、今年は新盆だからちょっと実家に行ったり祖母の家に行ったりする。寺にも行く。今年は祖父が亡くなって初めて迎えるお盆である。ちょっと実家がバタバタしてるから、俺も少し家の手伝いをしてる。


 ちなみに俺の祖父はかなり偏屈で内向的なタイプだった。だが、生前、俺が会いに行くととても嬉しそうに笑ってくれた。俺が野球をしていた頃は試合を見にきてくれた。最期は病院で眠るように死んだ。距離的に遠くて祖父の最期を看取る事はできなかったものの、祖父の遺体が安置されている施設にはすぐ向かって、白い布をめくって祖父の顔を見た。とても安らかな顔をしていた。俺は少しだけ泣いた。祖父が笑っているように見えた。


 名称は知らないが、チーンって鳴らすやつを鳴らして、デジタル式の線香をその部屋で上げた。今は煙の出ない電気式の線香があるのだと、その時初めて知った。


 遺体の腐敗を防ぐためにエアコンが効いていて、寒いくらいだった。


 葬式にも参列した。久しぶりに会った親戚の子が高校を卒業して赤髪になっていたのが印象深い。俺はその子としばらく話していたが、お互いに会うのが久しぶりすぎて会話は少しぎこちなかった。俺はその子が赤ちゃんの時から知ってる。


 ちなみにセレモニーホールでの葬儀の受付は俺の妹と旦那さんがやっていた。


 俺は黒い喪服を3年ぶりくらいに着た。


 俺も一応スーツと喪服は持ってる。専門学校に入学する前にたしか洋服の青山とかで採寸して買った。


 スーツ無いと面接できないし、葬式も出れない。


 でもスーツに関してはレンタルもできるから、必ず常備しておく必要はない。


 ◆


 今日は朝の4時半に起きたのだが、倦怠感がひどくて、しばらく動けずに結局10時くらいまでベッドに横たわって目を閉じていた。眠っていないが、半分夢を見ているような感覚に陥っていた。起きてから行動を起こすまでに俺は時間がかかるタイプだ。エンジンが掛かるまでに時間を要する。鬱を発症してから、なかなか治らない。


 死者が如く横たわりながら、俺はふいに(一人旅がしたいな)と強く思った。そしたら、心が少し楽になった。


 2人とか3人で旅しても良いんだけど、俺の数少ない友人はみんな遠方に住んでるし予定を合わせるのが難しい。


 俺は基本的にアパートから近い範囲でしか行動していないし、基本は引きこもって過ごしている。例外的に外に出る。その例外が今なのだ。部屋にずっといると、気分も落ちてくる。たまには旅行でもする。


 今は、お盆休みで色んな場所が混んでるだろうから、お盆が終わって落ち着いたら一人旅がしたい。できれば群馬県外がいい。


 今、俺が1番行きたいのは神奈川の江ノ島とか。特に理由は無いが、なんとなく江ノ島がいい。海があるし群馬からも比較的近い。こないだ、ニートの男性が1人で江ノ島旅行をしているスレッドをとある匿名掲示板で見かけて、俺も江ノ島に行きたくなった。数日旅行に行くくらいの金ならあるから大丈夫。


 海をぼーっと眺めたりしたい。おいしいもの食いたい。海鮮料理食いたい。水族館行きたい。


 俺は1人でどこでも行ける。1人焼肉は余裕、1人カラオケはもっと余裕。1人映画はもっと余裕。直近で見た映画はルックバックだ。今年、プイプイモルカーの長編映画が公開されるので、公開されたら見に行く。アラサーのいい歳した男が1人であんな可愛いアニメを映画館に見に行ったら不気味だろうか。まあどうでもええわ。俺はモルカーが大好きなんだ。ぬいぐるみも家に6匹いる。内訳はポテト、シロモ、えびモルカー、救急モルカー、パトモルカー、タクシーモルカーだ。みんなでかくて可愛い。


 俺は、1人で行動できるというより、1人でしか行動できないと言った方が正しい。


 俺の生活圏内には友達がいない。ネットで知り合った友達は沢山いるが。俺は元々の性分がインドアだから、むしろ学生時代にずっと野球やってたのが変だと思う。とりあえず友達に誘われてなんとなく始めただけだが、野球が大好きだから高校までやってた。


 俺は性格の中に陰と陽が混在している面がある。でも喋り声はかなり小さい。俺の性格タイプはINFP-Tなのだが、この性格タイプは内向的でありつつも心の中にめちゃくちゃ熱いものを持ったタイプらしい。その乖離や矛盾に苦しむ事も多いのだとか。あとロマンチストかつ理想主義者らしい。俺の性格タイプは、作家や俳優やミュージシャンに多いらしい。


(でも性格診断なんて半分くらいしか真に受けていない)


 作家も俳優もミュージシャンも、才能や力だけではなく運要素も強く絡む職業だ。小説の場合、下読みの人が「これつまんねえな」と思ったらどんな傑作であろうと一次選考で落ちる。


 それに、仮にそれらの職業につけたとしても、それ一本でメシを食える人はほんの僅かだ。東野圭吾とか池井戸潤くらい映像化されまくってる作家はずっと仕事しなくても暮らせると思うが。


 特に小説家は今は昔に比べて全然売れない。


 芥川賞や直木賞を取った著名な作者でさえ、2作目からは鳴かず飛ばずでずっと兼業作家を続けてる人も多い。というか小説家は兼業作家の方が多いはずだ。


 現代は、コンテンツの消費がかなり早いし、回転率も高い。ネットやSNSで手軽に消費して、みんなにすぐ忘れられる。


 読書する人自体、少なくなってる。


 今はもっと楽に消費できる娯楽が世の中全体から求められている。


 俺は個人的に本を読むのが大好きだ。哲学書や思想家の本から小説から漫画まで色々読む。電子書籍でしか売ってない本や漫画は電子で買うしかないが、極力全て紙媒体で買うようにしてる。本も漫画も。


 紙の方が暖かみや体温を感じるので、作者の想いをストレートに心で感じる事ができる。


 そういえば今年、コロンビアの小説家のガルシア=マルケスの「百年の孤独」の文庫本が出たから本屋で買った。


 俺が1番最近買った小説は、ロシアのウラジーミル・ナボコフの「ロリータ」って小説だ。小児性愛者の主人公の語りによって進む形式の小説だ。いわゆるロリコンの話だ。レビューサイトを見ると賛否あるみたいだが、俺はロリータをすごく面白く感じた。「ええい、ままよ!」の精神を感じた。とりあえず書き始めて完結させてしまえば後はどうでもいいみたいなノリを感じて、ある意味清々しかった。


 俺も10代から27歳の今に至るまで小説を書きまくっているが、その全ては作者である俺自身が救われる為だけに書いていたもので、他人を救いたいとか思って書いた事なんて1度もない。小説に限らず創作はそのくらい独善的で良いと思っている。共感するなら勝手に共感すれば良いし、救われるなら勝手に救われれば良い。


 そのくらい突き抜けてないと面白い小説は書けないと思う。極論、自分が書いた小説を自分で最高に面白いと思える事ができたなら、世界で最高の小説家は自分自身だ。そこにプロやアマという境界など存在しない。


 ◆


 どんな人もそうだと思うが、俺も生きれば生きるほど考え方や思想が変化していく。


 10代の頃の俺はかなり尖った文を書いていたが、今はむしろその逆を行こうとしている。


 なにしろ俺は17歳から27歳の今に至るまで、10年もずっと姿や形を変えながら文を書きまくっているのだ。


 ちなみに俺が人生で初めて書いた小説は、文字通り光の速さで帰宅する、友達がいない帰宅部のコメディー小説だ。2014年に書いた。


 その小説についた初めてのコメントは今も覚えている。「小説で爆笑したのは初めてです」ってコメントだった。10年前、別のサイトで連載していた小説だったが、初めてついたそのコメントを見て死ぬほど嬉しかったのを覚えている。脳内麻薬が分泌されまくって、俺は笑った。


 それからは俺自身の人生にも色んなことがあって、暗い方向に進んだが、なんだかんだ今も生きてるから俺は充分だ。


 ちなみに俺は10代の時は芸人になるのが夢だった。ノートにコントや漫才のネタを書きまくっていた。でも姉や妹や母や父にそのノートを勝手に見られてしまい、顔から火が出るほど恥ずかしかったのをよく覚えている。


 あと、ガキの頃はよく野球漫画を描いていた。それも家族に見られた。リビングで描いて、そのまま昼寝してしまったのが敗因だ。自分の創作物を家族に見られる事ほど恥ずかしい事は無い。でも家族はいつも俺の創作物を褒めてくれたので嬉しくもあった。





 次回に続く

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