第19話 危機

 晩御飯を食べ、さあ行くかってなった時だ。


「……」

「……」

「……」


「えっと、みんな行くの?」


 ○父さん→DIY用ツナギ&キャンプ用スキレット装備


 うん。スキレットは分厚くて攻撃力はありそうだよな。


 ○義母さん→ジーンズ、長袖Tシャツ、エプロン&玉子焼き用フライパン装備


 いや……それは小さいと思うし、毎日弁当に入れてくれる玉子焼き作ってるヤツだよね!


 それで明日も作るのかなっ! ま、まあスライムだし、汚れる事はないんだけど……。


 ……ちゃんと洗ってから使ってね義母さん。


 ○愛美→学校指定の制服ダンジョン装備&鉄の爪、中華鍋装備


 ところで愛美さん。中華鍋はどうかと思うぞ。


 みんながフライパン系の武器を持ってるからって選んだとは思うけどさ、叩き潰すのには的してない。丸まってるし……。


「……ま、まあ良いか。みんなありがとう。疲れてると思うけど、手伝ってくれるんだな」


「ああ。毎日は無理だと思うがな。父さんも会社の方針でレベルは10まで上げてあるからな」


 そうらしい……会社の方針か。どこと戦うつもりだその会社。


「私はね~、レベルもステータスも無いから本当にちょっとしたお手伝いよ」


「私は元から手伝う予定だったしね」


「うん。じゃあ明日のことも考えると、二時間くらいかな。行くよ」


 三人が思い思いの場所を掴むのを確認して、個有ダンジョンに移転。


 スライムを家族総出で狩りまくりタイムだ。






 二時間の家族団欒討伐会の結果は――


 俺→785匹、Sオーブ4個

 愛美→122匹、Sオーブ0個

 父さん→219個、Sオーブ0個

 義母さん→38個、Sオーブ0個


 ――だった。


【速さ】18→26


 思ったより出た。うん。出て上がったんだけど……。


「ねえ。Sオーブは勇斗しか出ないのかな?」


 そうなんだよな。思ったより出たけど、俺だけだ。


「う~む。そうだな、私も頑張った方だと思うんだが、こうまで出ないとなると……な」


「そうね~、これじゃあ手伝う甲斐がないわね~」


「この結果だとそう考えた方が良いかも。でも魔石は昼からの分も合わせて二千個は越えたんだ。ダンジョンも喜んでくれるだろ」


「そうだな。勇斗の命を救ってくれたダンジョンの頼みなんだ、これからも魔石集めは時間後ある時になってしまうが手伝おう」


「私も手伝うわよ~。その前にもう少し大きなフライパン買ってこなきゃ」


「そうね、私は最初から決めてたけど手伝うわ。レベルも上げたいし。そうだママ、私の分もお願い、中華鍋は失敗だったわ」


「うん。じゃあ戻ろうか。個有ダンジョン――帰還」



 煙!?


「ゲホッ――なんだっ――火っ! 火事だ!」


「嘘っ! あなた!」


「ゲホゲホッ――みんな煙を吸うな! 外へ出るぞ!」


「窓割るよ! ついてきて!」


 煙で視界が悪いけど、一番窓に近かったから、なんとか見える。


 庭に続く窓に向かって数歩走りおもいっきりガラスにフライパンを――


 ――ガンッ! 割れない!? くそったれが! ガッ! ガシャン。


「よっしゃ! みんなこっち!」


 枠にまだガラスが残ってるけど、追撃して大人でも十分通り抜けられる大きさに割れた。


 ドガシャッ――


「――ガッ!」


「きゃっ! あっ、あなた!」


「勇斗義父さんが!」


 大きな音が鳴り響き、義母さんと愛美の声に振り向く。


 焼け落ちてきた天井が父さんの頭しか見えないように覆い隠してしまっていた。


 それも火が着いた天井がだ。


「嘘だろっ! 愛美は先に出てろ! 父さんは俺が引っ張り出す!」


 すぐ後ろにいた愛美の手を引き寄せ窓の方へ押し出した。


「きゃっ! う、うん! お願いっ!」


 愛美が庭に出るのを視界の端に映し、父さんの元に走る。


「あなたしっかりして! あなた!」


「義母さんも外に早く!」


 燃える天井を必死に持ち上げようとしてる義母さんを引き剥がし、天井に手を掛けた。


 あぢぃいぃぃ!


「まっ、負けっか! 父さん起きろ! 這い出てくれ!」


「…………」


 気を失ってるんかよ! クソッ!


「ぐぎぎぎぎぎっ!」


 天井と床の隙間に体を滑り込ませ、背中で押し上げる。


「なんかつっかえさせるヤツ――あっ!」


 手が届きそうなところに倒れた椅子が――


「クソッ届かねえ! なっ!」


「あなた! ゆうくん!」


「戻ってくんなよ義母さん!」


「それよりその椅子ね! 任せて!」


 せっかく外に出てくれたと思ってたのに!


「いや! 椅子なんかより、俺が支えてっからこっち来て父さんを引っ張って! 早く!」


「うん!」


 持った椅子を放り出し、駆け寄るとうつ伏せに倒れてる父さんの手を取り引っ張り始めた。


「んんー! 駄目っ! 何か引っ掛かってるわ!」


「くっ、分かった、もうちょい奥から押し上げてみる!」


 クソッ――熱いってんだよ!


 四つん這いになり、燃え盛る天井と床の奥へ頭から潜り込む。


 体が完全に天井の下に入って見えてきたのは――


「嘘だろ」


 父さんの足に木が刺さり、さらにそれは床へ刺さっているように見えた。


「――っ!」


 なんだよそれ! なんとかしないと――


 無理矢理父さんの足元まで這って行く。ズボンに刺さってるだけにしてくれ頼む!


 腰に差してあるナイフを取り出しズボンを引き裂いた――よし!


 刺さっている。刺さっているがふくらはぎをかすめるようにだ。


「くそ、切れろ切れろ!」


 邪魔になる所は全部切れた。


「よし! 義母さん父さんを引っ張って! 早く!」


「うん! 任せて! ゆうくんも早くっ!」


 その声が聞こえた次の瞬間、父さんは無事に天井の下から引きずられていく。


 よし、俺も出なきゃ――え?


 方向を変え、天井の下から見えたのは――


 父さんを抱えた義母さんの上に降り注ぐ炎の塊――


 目の前で俺に手を伸ばした愛美だった。


 ―――――現時点のステータス―――――

【名前】ユート ミカミ(御神 勇斗)

【Lv】0

【状態】打ち身 擦り傷 火傷(Ⅱ度熱傷)

体力HP】6/10

魔力MP】0/0

【 力 】4

【耐久】6

【速さ】18→26

【器用】9

【知能】3

【精神】7

技能スキル

 ○個有ダンジョン

【装備】フライパンスライムクラッシャー

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