第16話 できるじゃん

「できるじゃん!」


 個有がプライベートって意味ならワンチャン一緒に入れないかと試してみたら、正解だった。


 プライベートビーチ説が立証されたわけだ。


 てか、あまりにも簡単に入れたから思わずつっこんじまったじゃねえか……。


「ここが勇斗のダンジョンかぁ」


「雰囲気は普通のダンジョンですけど、ここが勇斗くんのダンジョンなのですね」


 二人はキョロキョロとまわりを見渡してる。まだ腕に抱きついたままだがな。極楽じゃ。


「そうだ。ここで依頼された魔石を集めてる」


「そして言ってたSオーブもドロップするのですね!」


「【速さ】のステータスだけって言ってたけど、2ずつ上がるのよね?」


「うん。愛美には言ってたけど見せてなかったな。ほら見てコレ」


 スマホを取り出し二人に見せてあげる。画面には――


【名前】ユート ミカミ(御神 勇斗)

【Lv】0

【状態】打ち身 擦り傷 筋肉痛(微)

体力HP】10/10

魔力MP】0/0

【 力 】4

【耐久】6

【速さ】14

【器用】9

【知能】3

【精神】7

技能スキル

 ○個有ダンジョン

【装備】フライパンスライムクラッシャー


 うん。【速さ】だけが尖ってるな。


「ほえー! 凄いです勇斗君! 本当に上がってます! 本当に良かったです! これからももっと上がるんですよね!」


「たぶんね。まあ青色しか出たこと無いから速さしか上がらないだろうけどな」


「他のも上がれば良いのに。勇斗、ダメ元で頼んでみたら?」


「そうです! ダンジョンさんに頼めば他のもドロップするかもですよ!」


「そんな都合の良い……事もあるのか? まあ明日にでも聞くだけ聞いてみるか」


「そうしなよ」


「あ、やっぱ駄目じゃね? 俺が倒せるのってスライムだけじゃん。もし、違うSオーブ出せるようになっても」


「あー、レベルの壁かぁ」


 レベルの壁。それが最大の難点だ。


 0からのレベルアップは、ほぼ誰でも無傷で倒せる|ム《》


 スライムオンリーだ。


 なにかの格闘チャンピオンだったかがレベル0のまま二階層へ下りる挑戦企画があったんだ。


 二階層はスイーパースネイル。掃除屋のカタツムリと言われてる。移動した所が綺麗だからなんだが……。


 安直な命名だよな。


 まあバスケットボールくらいある、デカいだけのカタツムリなんだが、いくらしても倒せなかったんだ。


 蹴り、パンチ、肘も駄目。武器も木刀からバット、さらにバール、ハンマー、斧とか使っても。


 だけどバリアでも張ってるのかと言うくらい、そのことごとくが失敗に終わった。


 スイーパースネイルは1ミリも衝撃を受けた様子がなく、床をゆっくり進んでいたんだ。


 それなのにだ。撮影で来ていて、その日にレベル1に上がった方。企画と監督してるとか言ってたな。


 二階層に行くまでの邪魔なスライムを蹴り飛ばして倒していたそうだ。


 戦えば確実に格闘家の方が勝つような一般的な人なんだけど、『企画失敗じゃねえかよっ!』とたぶん英語で。


 そして日本語のテロップが出てる言葉を叫びながら、蹴りを入れた。サッカーボールキックだ。


 見事に当たる。動きが遅いからたぶん誰でも当たるんだけどな。


 俺も蹴りに行ったし……。


 で、スイーパースネイルは蹴りで殻が砕け、黒い煙が出たと思ったら魔石が現れたんだ。


 俺はビクともしなかったし……。


 そんなわけで、その動画が話題となり、色んな研究者たちがその事について調べたそうなんだけど……。


 判明したことは――


 ○レベル0はスライムにしか攻撃が通用しない

 ○最低レベル1になってないと、二階層以降の魔物は倒せない


 ってことだ。だから俺はスライムしか倒せないんだ。


「それがありました。では【速さ】を上げていくしかありませんね」


「そうね、超ー速くなって、あのクズの攻撃なんか避けまくってやればいいのよ」


「そうです! 闘技大会はポイント制ですから避けまくって、ポコポコ叩けば勝てるのですよ!」


「おお! それだ! ダメージ無くても殴りまくって、殴られなければ勝ちじゃん!」


 この作戦なら上手く行けば一方的に勝てる。


 ヤツは確かもうすぐレベル10って言ってたよな。


 なら【速さ】は20前後のはず。それと

 アイツの事だ、速さを上げるアイテムなんて物も持ってるかも知れねえ。


 出回ってるのは、色々あった気がするけど、速さの腕輪とかだよな。


 速さ+5とかで、数百万もする高級品だが、手に入れられるだろう。


 それ以上の物は四桁万円してた。可愛い孫の為とは言え、さすがに無いと思う。無いよね?


 レベルが上がり、そんなのも装備してくると仮定して30くらいは余裕を見て上げておきたい。


 なら、後8個Sオーブを見つけたらいけんじゃん!


「よし、勝ち筋が見えたぞ。愛美、歌音。ありがとうな」


「どういたしましてです」


「いいって。お礼はそうね、ハーゲンダッツの……今回は抹茶で良いわよ」


「分かった。愛美は抹茶で、歌音はクッキー&クリームで良かったよな?」


「はい。覚えていてくれたのですね」


「当たり前じゃん。とりまスライム倒していくか。二人はどうする? 戻っておくか?」


「「手伝うに決まってるで手伝います!しょ!」」


 俺たちは早速スライムを……倒す前に、二人の装備を整えるため、部屋に戻るのであった。


 ―――――現時点のステータス―――――

【名前】ユート ミカミ(御神 勇斗)

【Lv】0

【状態】打ち身 擦り傷 筋肉痛(微)

体力HP】10/10

魔力MP】0/0

【 力 】4

【耐久】6

【速さ】14

【器用】9

【知能】3

【精神】7

技能スキル

 ○個有ダンジョン

【装備】フライパンスライムクラッシャー



 プライベートダンジョンで、【速さ】のステータスアップが始まります。


 頑張って欲しいですね

 ガンバレو(^∀^و)

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