第13話 弁当タイム

 歌音の机が愛美によって俺の机と合体。


 いつもの弁当タイムの形だ。


  歌音

  ┏━┓

  ┃机┃愛美

  ┗━┛

   


「あっ、今日はかのんちゃん特製サンドイッチだ!」


「おお! マジかっ! これめっちゃ好きなんだよ!」


「えへへ。早起きして頑張っちゃいました」


 いつもより大きな弁当箱を出してきたと驚いたけど、中身はさらに驚きだ。


 玉子とキュウリ、ツナとレタス、ハムとトマトのサンドイッチが詰められてある。


 それだけじゃない。おかずも多種多様だ。


 唐揚、フィッシュフライ、プチトマトにブロッコリー、ハッシュドポテトとゆで玉子だ。


 よく見るともう一つ小さめの弁当箱が出てきた。


 そこにはベーコンとウインナー、キュウリやニンジンのスティック状のヤツが入ってる。


「スゲーな歌音。良い奥さんになれるぜ、俺が貰いたいくらいだ」


「うんうん、本当だよ! でも貰うのは私だからね!」


「奥さん! 勇斗くんの……しょ、しょうかな!」


「かのんちゃん駄目っ! かのんちゃんは私のなんだから!」


「いやいや、あのな愛美、お前のじゃねえからな。それに歌音も落ち着け」


「あ、そ、そうだよね。と、とりあえず食べよっか? 二人に食べてもらいたくって、多めに作ったの……良いかな? 食べてくれる?」


「「もちのろんだ!もちろんだよ!」」


「では、おあがりください」


「「いただきます!いただきまーす♡」」


 自分達の弁当も机に広げ、三人でシェアしながら食べれるように配置する。


 うん。義母さんの弁当も美味しいんだが、歌音のサンドイッチも絶対美味い。


 何度かこうやって交換しながら食べた事があるんだが、義母さんに負けない料理の腕を持ってる。


「おいひいよ~、さすが私のかのんちゃん」


「だから歌音はお前のものじゃねえぞ愛美」


「え~、だったらやっぱり勇斗のかのんちゃん?」


「はへ? ゆ、勇斗きゅんのわた、わた、わた、わたひ? え? へ? しょうにゃにょかにゃぁ?」


 歌音のあわてふためく様子をおかずに、サンドイッチをもう一つ貰おうと手をのばした。


 うんうん、歌音なら一家に一欲しいよな。冗談抜きで。


 そんなやり取りをしながら楽しくも美味しい昼休みを過ごしていた。


 ――が、やはり時間が進み、朝の九頭とのことに話題が移る。


「ねえ。あのクズ、実習で何を仕掛けてくるのかしらね」


「勇斗くんには危ないことはして欲しくないです。あの人怖いですし」


「あー、そうだよなぁ。何をやってくるんだろアイツ」


「ん~、ダンジョン実習の時間だし、級ごとのダンジョンへ入るんだしぃ~」


「そうだよね。前は勇斗くんが走って行っちゃったから止められなかったですけど」


「そうだかのんちゃん! 二人で勇斗にくっついてたら、クズだって簡単には近づけないわよ」


 結構デカい声だが九頭のヤツはいない。昼休みが始まってすぐに出ていったからな。


 ここに残ってる女子からは生暖か……以下略。


 下っぱの取り巻きたちも一緒にたぶん学食に行ったと思うから大丈夫だ。


 二人が話してるように、近くにいてくれるだけでも牽制けんせいにはなるな。


 悔しいが今だとたぶんまともにやれば負けるだろう。朝のヤツは完全になめてたはずだしな。


 だけど朝に攻撃を避けて、反撃までしてしまってる。


 いくらアイツが馬鹿だったとしても、今度は油断なんかしねえだろうな。


 したらしたで面白……なんかやりそうだな……。


 だが一番考えられるのは、下っぱを使うことだろうな。


 このクラスだけじゃない。実習は全クラス合同だからヤツに従う人数は増えるはずだ。


 そうなったら、まず勝つ事なんてできない。確実に負けるだろうな。


 せめて今の倍、いや、三倍は早く動けないと、九頭と取り巻きたちも含めて太刀打ちできねえだろし。


 時間が足りないな。それと致命的に攻撃力も足りない。


「ねえ聞いてる? 勇斗?」


「勇斗くん、何か集中して考え事かな?」


「ん? あ、ごめん、ちょい考え事してた」


 二人が心配そうに顔を覗き込んでいた。


「もう勇斗たら、私たちが良い案が無いか話し合ってるのに」


「俺もそれ考えてたんだ。今日、いや、夏休みが明けるまではなんとか時間を稼ぎたい」


「夏休み明けまでで良いの?」


「あー、あれの事ね」


「うん。ちょっとアテがあるんだよ、今ここでは言えないけどな」


 歌音なら教えても大丈夫だけど、教室で、まわりにも人がいる中じゃ止めておいて方がいい。


「そうなんだ。う~ん、だったらあの人のお兄さんに相談するとかどうかな?」


「「お兄さん?お兄さん?」」


「うん。小学校の時にもたぶんいたよ? 顔は憶えてませんが、同じ苗字だからそうだと思う。この学校の生徒会長してる人です」


「「……………………」」


「ふ、二人とも知らないみたいですね、は、はは」


 マジで知らない。そういや入学式で……いたような気もするけど、どんな人だったか憶えてない。


 聞くと愛美も、『あー、挨拶してた? ……いた気がする』だった。


「で、その生徒会長に相談して、九頭の野郎を止めてもらう訳か」


「なるほど、その作戦やっちゃ――」


龍也たつやは居るか!」


 そんなタイミングだった。なんかデカい声で龍也ってヤツを呼びながら知らないヤツが教室へ入ってきた。


「……龍也? 聞いたことあるような気もするけど……そんなヤツいたか?」


「ん~、私が知ってる人にはいないかな」


「ふ、二人とも、その名前って確かあの人の名前だよ?」


 あの人? 誰だ?


 ……あ、龍也って九頭じゃん!


 小学校で知り合ってから苗字の九頭しか呼んでなかったわ。


 ってか見た感じ、たぶん先輩だな。ってかなんで先輩がアイツを呼ぶんだ?


 アイツ、なんか先輩ともめているんか? 


 ……ありそうだな、乗り込んで来てるくらいだし。


 ―――――現時点のステータス―――――

【名前】ユート ミカミ(御神 勇斗)

【Lv】0

【状態】打ち身 擦り傷 筋肉痛 満腹

体力HP】9/10

魔力MP】0/0

【 力 】4

【耐久】6

【速さ】14

【器用】9

【知能】3

【精神】7

技能スキル

 ○個有ダンジョン

【装備】フライパンスライムクラッシャー


 お昼ごはんも終わり、作戦会議もまとまりかけたのに、九頭を探してる先輩がやって来た。


 九頭の事だから、色々と火種は蒔いてるだろうし、分からんでもないですね。


 さて、来訪者はいったい誰か?

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