第11話 最強への一歩目

 めちゃ心配された。


 蹴ったヤツを探すのに時間をかけすぎたな。


「それで勇斗、警察には連絡したのか?」


「あっ……完全に忘れてたよ」


 父さんに言われて、そんな事も忘れてたって事に驚いた。マジ何やってんだ。


「でもお義父さん、警察頼りないよ、先日のクズの事だって全然進んでないし」


「そうなのか?」


「うん。九頭はいつも通り学校に来てる……」


 警察が九頭の爺さんに謝りに行ったのは、言わない方が良いだろうな。


 父さんは絶対怒るし、何かしようとする。やれば今度こそ家族に権力って暴力の圧力がかかってくる。


「分かった。勇斗、とりあえずその上着は明日父さんが警察へ届けてくる。何も証拠は出ないと思うが、被害は届けておかなきゃな」


「分かった。ビニール袋にでも入れた方がいいよな?」


 義母さんがデカいジップロックを出してきた。だいたい一辺が三十センチはあるヤツだ。


 何に使うのか分からんけど、このデカさなら余裕で入るな。


 蹴られた背中をなるべく触らないように上着を脱ぎ、放り込む。


「えっ! ゆ、勇斗その怪我何っ!? 治療してあるのもあるよ!」


「あっ……あーこれは、何て言うか~」


 自爆の怪我だ。【速さ】が上がって体の操作ミスっただけなんだよな。


「ちょい恥ずかしいのと、嬉しいことがあるんだけど……とりあえず恥ずかしい方は、ほぼ自爆なんだコレ怪我


「「「自爆?」」」


「そうなんだ。今日、ちょっと速く動けるようになったんだけど、つまずいて転けたり、壁にぶつかったりな」


「おい、お前それ、大丈夫なのか?」

「いきなり速くなるものなの?」

「勇斗、それってアレダンジョン絡み?」


「大丈夫だ。すぐに慣れたしな」


 ってか愛美は鋭いな。


「アレ関係だな。レベルは上がってないけど、【速さ】が倍以上に上がったからさ」


 三人には話しておく事にしよう。ずっとレベルが0のままで心配かけてるし。


 これまでの事を話した。


「じゃ、じゃあその言ってたダンジョンのスライム倒して青いステータスオーブ? 飲めば勇斗は強……速くなるの」


「うん、そうなんだ。4から10にな。一個で2上がるみたいなんだよ」


「え! 10なの! 私と変わらないじゃん! 凄いよ勇斗!」


「うおっ!」


 愛美っ、おまっ、ノーブラじゃん! ふにゅんって殺す気か!


 大きく……はないが、ちゃんとあるんだぞ!


 あ、さらにふにゅにゅんと……ご、極楽浄土が見え……。


「きゃー、じゃあじゃあお赤飯炊こうかしら、ねえあなた」


「いやいや、お赤飯は違うだろ。まあ、ケーキは明日帰りに買ってこよう」


「ケーキやったぁ! お義父さん、勇斗は苺のか、チョコのだからね」


「あっ……」


 父さんのケーキにつられて離れてしまった。


 ケーキに負けたのか俺……。愛美、カムバック……。


「分かった。楽しみにしておくんだぞ。よし、明日は定時上りにする」


「あらあら、じゃあ私はゆうくんの大好物をたくさん作るわね♪」


「うん。じゃあ明日は早く帰るようにするよ」


 ざる蕎麦にえび天、チクワ天、とり天最高。


 野菜もだな。ナスビ、カボチャ、ししとう、しいたけ。一皿目の蕎麦がなくなってしまった。


 蕎麦はおかわりだ。二人前茹でてもらった。


 途中にうずら卵。まろやかさが最高だよな。


 次はとろろ芋を追加だ。きざみ海苔とのコラボでシメにした。


「ごちそうさま、もー食えん」


「勇斗、食べ過ぎ。三人前じゃん、太っちゃうよ?」

「あっはっは。沢山食って、世界最強だろ? もっと食っても良いぞ」

「そうよ、天ぷらはもう無いけど蕎麦はまだ茹でたら用意できるしね♪」


「いや、だからもー食えんから」


 ちょっと休もう。風呂入ってダンジョンだな。


 速さ特化になるだろうけど、最速も最強への第一歩だ。


 まずは最速、闘技大会目標だな。






「個有ダンジョン、移転!」


 腹ごなしにちょいスローペースで、二百にしよう。


 目に映るスライムに駆け寄りフライパンを一振する。


 パンッ――


 もーいっちょ!


 パパパンッ――






 一時間くらいか? 魔石が二百集まった。それにSオーブは二個。


 二百にもう少しってところで出たから速攻飲んだ。


 これで速さは14に上がった。


「いちち、やっぱり上がってすぐはぶつかるな」


 終わる予定の魔石は集まったけど……も少し動きに慣れておくか。


 いや、止めとこう。いくらスライムだけしかいないからって、油断は駄目だよな。


 頭とか打って気絶したらヤバい。よし、引き上げだ。


「個有ダンジョン、帰還!」


 ふう。帰ってきたら、疲れがどっと来るな。


 着替えて寝よっと。装備を外してパジャマに着替える。


 ベッドに倒れ込んだらもう目が閉じてきた。


 あー、バテたぁ……これ……明日も……筋肉痛だ……な。








 予……想通りだ、ぜっ――痛たたた。


「筋肉痛ヤバすぎだぞマジで」


 ―――――現時点のステータス―――――

【名前】ユート ミカミ(御神 勇斗)

【Lv】0

【状態】打ち身 擦り傷

体力HP】6/10

魔力MP】0/0

【 力 】4

【耐久】6

【速さ】10→14

【器用】9

【知能】3

【精神】7

技能スキル

 ○個有ダンジョン

【装備】フライパンスライムクラッシャー


勇斗は速さ特化するようですね~。

頑張ってスライムをペシペシしてもらいましょう。


しかし、愛美ちゃんの小ぶりな胸部装甲でも勇斗にはクリティカルヒットするようです。

裏山……(´˘`💢)


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