第8話 一生に一度はやってると思う自爆

「はぁ」


 あまりにもムカついたから口から出ちまった。


 闘技大会出場かぁ……自爆だよなぁ。


 ため息しかでないが……しゃーないよな。


 それに……愛美と歌音以外のクラスメイトだ。


 やっぱり、よくある無視ってやつなのかね……。たぶんヤツのしわざだろうけど……。


 んー、考えてても始まんねぇーし、スライム狩りやるか。


 最寄りのダンジョンに入る。フライパンを片手になんだけど……見られてるよね。


 小さい声だけど――


『フライパンだわ……』

『フライパンね……』


 良いじゃん! フライパンはスライム最強だしっ! うりゃっ!


 ビリッ――


『あっ、スライムワンパンだよ!』


 くくくっ、見たかお姉さんたち。


『ホントね……でもフライパンね……。あっ、あれ……』

『縦縞のトラ――ンクスね。じゃなくってどう見てもフライパン……』


 ――と、聞き耳をたててる時に湧いたスライムを倒しただけなんだけど、他にもなんか聞こえるぞ?


 小さすぎてよく聞こえないけど……良いじゃんフライパン! ワンパン最強だしっ!


 その後も横道にそれるまで後ろからボソボソと……。


 すまんフライパンよ。俺がたぶん悪いんだ、そのためにディスられたんだ。


 ……フライパンよ、お前はやれる子だ。ドラゴンスレイヤーならぬスライムクラッシャーの名を贈ろう。


 見えなくなったお姉さんたちだって、いつか分かってくれる日が来るさ。







 パシッ――


「ふう。百匹っと」


 いつもやっててクセになってるステータスの確認……いつも通り変化はない。はぁ。


 ――18:03――


 時間だな。成果は二百か今日は。帰ろ。







「次の――あっ、御神くん平日なのにお疲れさまでした。うん。今日も怪我は無さそうですね」


「はい。いつも通りスライムですから」


 いつものやり取りだ。毎回ダンジョン帰りに聞いてるとなんか帰ってきた感あるよな。


 おっと、魔石出さなきゃ。


 ウエストポーチからトレーに出していく。


 あっ、そうだエコバッグの――


 忘れてたけど何か残ってたよな。ついでに出してしまおう。


 バックパックに押し込んであったエコバッグを取り出し中身を探る。


 えっと、どこだ……ヤッパあった。色違いのヤツ。


「すいません。この色違いのヤツも買い取れますか?」


 トレーには出さないで、魔石を二個手のひらに乗せて差し出した。


「ん? 何かな? ……何ですかその青い魔石っぽい物は」


「見たこと無いし、魔石かなって。俺も調べてみたんだけど、分かんないのでここで聞けば分かるかなって」


 お姉さんは手から一つつまみ上げ、光にかざしたり、ルーペで見たりしてくれたが……。


「魔石ではないですね。こんなの見たことありません」


「魔石だと思ったんだけど違ったかぁ。まあしゃーないですね」


「ごめんね御神くん」


 返してもらった物と一緒にポケットにしまった。


 まっ、そのうち分かるだろ。キレイだし、愛美にでもやるか。


 返してもらった後すぐに集計が終わり、2,030円の買い取り金を受け取り帰ることにした。


「あっ、み、御神く――」


 ん? 呼ばれた? でも次の人がカウンターにいるし気のせいか。


 うっ、またお姉さんが誘いたそうに見つめてきた……ごめんなさい。





 コンビニで買ったのは玉子サンドと、お気に入りの高千穂牧場カフェオレ。


 カフェオレならコレだ。コレしか勝たん≪俺ランキング1位≫。


 涼しいコンビニから出て、むあって湿度の高い熱気に包まれる。


 少し夕立でもしてくれたら涼しくなるのにな。


 玉子サンドの一つ目を噛り地下道へ。


 そーいやここで襲われたのが最初か。前から突っかかっては来てたけど……何考えてんだろなアイツ。


 色々考えたが、いくら九頭の爺さんが偉いって言っても、こんな事しまくってたら愛想も尽きると思う。


 それに今回は人殺未遂しだ。


 握り潰すのも、家族を人質に黙っとけとか言ってたがそれも本当にできんのか?


 普通に犯罪だろ? それを国の大臣が本当にやるのか?


 それがメディアとかSNSとか、あ、犯行の動画撮ってネットに流したとしたら?


 一度出た動画とかは全部消してしまうのは難しいって聞いたし。


 まあ撮ったことも無いからそんな犯行動画は存在しないけどな。


 



 何事もなく地下道を抜け、バスに揺られ帰宅した。


「ただいまぁー」


『ん? おかえりー』


 リビングから愛美の声が聞こえた。お笑いなのかテレビの笑い声が聞こえる。


 カチャ――


 おお~、涼しいぃ~。


「おかえり勇斗」

「お帰りなさい、ゆうくん」

「帰ったか、おかえり勇斗」


 くつろぐ三人は口々におかえりを言ってくれる。


「ただいま。義母さん、晩ごはん何?」


 いや、聞かなくてもカレーなのは分かる。


 隠そうにもリビングに漂う匂いでバレバレだ、


「トッピングは揚げナスとウズラの卵フライなの」


 ほうほう。CoCo壱でよくトッピングするヤツだ。


「了解」


「は~い。温め直しておくからすぐに下りてきてね」


「うん。すぐ戻るよ」


 二階の部屋に入るなりバックパックを椅子の背もたれにかける。


 フライパンの整備は寝る前にするか。


 整備ってか、ちょっと拭いて欠けとか、ひび割れ見るだけなんだけどな。





「げふっ」


 おかわりで二杯食ってしまった。


「ごちそうさま」


「はい。おそまつさま。お皿は水に浸けておいてね~。あっ、お風呂はゆうくんが最後だから」


「分かった。流しておくよ」


「勇斗~。闘技大会出るって大丈夫?」


 は? なんで知ってんだ?


「クズが放課後言ってたから。勇斗はすぐにダンジョン行ったでしょ?」


 これで結構な数のクラスメイトが知ってるわけか……。


 はぁ、これじゃあキャンセルもできないか。最悪当日出なきゃ良いかと思ってたんだが……。


 周知されたら出ないわけにも行かねえよなぁ……しゃーない。やるか。


「おう。そのつもりだ」


「大丈夫なの? あのクズ、勇斗をボコボコにするとか言ってたよ?」


 九頭の野郎! どうする……、レベル0でも何か勝てる方法は無いか……。


「あ、ああ。返り討ちにしてやるさ。任せとけ」


 無理矢理笑ったが、ほっぺたがピクピクしやがる。崩れる前に風呂に逃げる。


 何か『あっ、勇斗おし――』聞こえたが早々にリビングを出て洗面所に。


 はぁ~、レベル上がんねえのにどうすりゃ勝てるか……か。


「あっ……ズボン破けてんじゃん……」


 お尻……。いつ破けた……いつから丸見えだった……。


 ―――――現時点のステータス―――――

【名前】ユート ミカミ(御神 勇斗)

【Lv】0

【状態】健康

体力HP】10/10

魔力MP】0/0

【 力 】4

【耐久】6

【速さ】4

【器用】9

【知能】3

【精神】7

技能スキル

 ○個有ダンジョン

【装備】フライパンスライムクラッシャー


 誰得なパンちら勇斗。゚(゚ノ∀`゚)゚。アヒャヒャ

 青い玉の正体は分からずじまいですが、近々判明する予定です( ̄^ ̄)ゞ


 高千穂牧場カフェオレ、マジで美味しいから騙されたと思って飲んでみてね(*´・ω-)b


 CoCo壱。私のよく頼むパターンはアサリカレーにほうれん草3辛で、うずらの卵フライ&揚げナスは財布に余裕があればですねꉂ(*´ᗜ`*)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る