第6話 日常に戻った朝

 三日間は個有ダンジョンに通い続けた。


 謹慎初日のお風呂でスキルが発動。ダンジョンに行ってしまった時はビビった。マジで。


 すっぽんぽんでダンジョンだもんな。武器防具はもちろん無い。あるのは体だけだし。


 風呂に浸かりながら『起動!』『開け!』『開門!』と色んな掛け声でスキルが発動しないか試してた。


 発動したのは『移転』ってキーワード。


 最初に教えろや! と俺は言いたい。


 帰りも苦労したんだぞ! 最初に教えろや! と俺は言いたい。


 武器無しでなんとか踏んづけてスライムを一匹倒した。倒したんだ。


 避けられた時は地面を裸足で強打だ。めちゃ足は痛くなったけどな。


 その一匹以降は逃げまくった。やっと『帰還』がキーワードと分かり戻ってこれたんだ。


 最初に教えろや! と俺は言いたい。大事すぎて三度も言った。


 だが、タイミングは神がかってた。


 愛美が入ってた風呂に入ってたんだ。


 ナイス俺。グッジョブ俺。神様にありがとうと祈ったくらいだ。


 だけど脳内のHDDへ永久保存版は、頬への強烈な衝撃と共に消えた。事にして許してはもらえた。





 やっと、まあ三日だが謹慎明け。まだ登校には早い時間に出かける準備。


 机の上に約千個の魔石。ウエストポーチでは入りきらず、エコバッグに入れてある。だいたい五キロくらいだ。


 重い。重いが思っていたより集めることができた。と思う。


「これ持ってくのか……やっぱり学校の前にダンジョンへ持っていく方が良いだろうな」


 よっこらせと肩にかけ、部屋を出た。


「勇斗おはよう。……もう行くの?」


「おはよう愛美。うん、ちょっとね」


「ふ~ん。それなに?」


 エコバッグに視線が、行くよね~。普段持ってないし。どうやってごまかそう。


 ん? ごまかさなくても良いか。


「魔石。貯めてあったの持っていってから学校行く。結構あって、重いからさ」


「ふ~ん。そ。なら私も出ようかな。一緒に行くでしょ? ちょっと待ってて」


「あっ――」


 マズイかも。絶対換金すると思ってるよな。


 愛美の部屋のドアが閉まるのを見ながら言い訳を考える。


 ……言っちまうか。隠し事はあんまりしたくないし。


 よし。そうしよう。


 階段を下り、リビングに入ると、厚切りの食パンにベーコンエッグ、プチトマトとレタス、シーチキンのサラダが用意されてた。


 いつもの朝ごはんだ。


 ベーコンエッグは半熟。今日は塩コショウ。これはそのまま食べて、サラダは和風ドレッシングを採用。


 パンはバターが半溶けを塗り伸ばした。


「いただきます」


 ガチャ――


「あっ、先食べてる! もー、待っててよ、一緒に行くんだから!」


 愛美がバタバタとリビングに飛び込んできた。


「あみちゃん女の子はもっとおしとやかにしなきゃ駄目ですよ。あっ、ママはもう出かけるから鍵お願いね」


「「はーい」」


 義母さんにそろって返事した後、横に座りバターナイフを持つ手から奪う愛美。指先がちょっと触れるのも……良き。


「あっ、猫ちゃんのご飯も出してあげてね、行ってきます」


「「いっふぇらっふぁい」」


「二人とも口の中空にしてから喋りなさい! じゃあお願いね~」


 あわただしく出ていく義母さん。


 食べ終わった後、猫のエサを皿に入れ、水もだ。


 その間に愛美は食器を軽く洗い、食洗機へ放り込みスイッチを押した。


「行くぞ」


「はーい」


 玄関で猫にまた邪魔されながらスニーカーに足を通し、家を出た。なんで前足乗せてくるんだろな。







「ねえ。役場はこっちじゃないよ」


「あー、役場には行かない。用事があるのはダンジョンだ」


 頭の上に『?』を浮かべる愛美に訳を話していく。


 またこないだの病院レベルで眉間にシワが……。


「ちっ! あのクズ。やっぱりけちょんけちょんにっ!」


「だよな。なんとかしてたやり返したいんだが、障害が多すぎる」


「あー、言ってたね、大臣だか理事長だか」


「うん。そのおかげで今のところ警察も学校もダンジョン協会も駄目だろうしな」


 やっぱり強くなって。声を聞かせられるくらい強くならなきゃ、何ともならない。


「ん~、そのダンジョンの依頼さ、こっちのリターンをもう少し多くできないの?」


「あー、生きれるようにしてもらったから無理じゃね?」


「命の対価……ね。そうだ、勇斗のレベルを簡単に上がるようにしてくれたらもっと下層の魔石も~って言えばどう?」


 ふむふむ。愛美先生の提案は、一回聞いてみても良いかも。


 もう一回話せるかどうかだけど。


「っと、言ってる間についたな」


「どうするの? 中に入れば良いのかな?」


「たぶん」


 ほぼほぼノーヒントで戻されたからな。


 朝早い平日。早朝からダンジョンへ入る者はまばらだ。学生服を着てる者は当然いない。


 ちょっと注目を浴びながら――そこっ! 愛美をジロジロ見んなや!


 まったく。可愛いから見たくなるのは仕方ないけど、ジロジロはすんな。


 視界を遮る位置に体を割り込ませ、ダンジョンの入り口をくぐった。


 結構人いるな。人の目を避けるなら……横道にそれるか。


 二階層へ向かう探索者の流れからそれて横道に入る。


 誰もいない。スライムは居るが。


「さて、誰も居ない場所に来たけど、ぬおっ! 眩しっ――」


「きゃっ! 何――」


 眩しすぎて目を閉じてしまった。


 ―――――現時点のステータス―――――

【名前】ユート ミカミ(御神 勇斗)

【Lv】0

【状態】健康

体力HP】10/10

魔力MP】0/0

【 力 】4

【耐久】6

【速さ】4

【器用】9

【知能】3

【精神】7

技能スキル

 ○個有ダンジョン

【装備】フライパン+

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