第5話 謹慎

「は?」


 え?


「ここ……」


 学校じゃん……。戻って来れたってことで良いのか?


 ……あれ? なんかダンジョン行くんじゃなかったか? 魔石取りに……。


 よく分からんが、生きてるし戻って来れた。はぁ、あんなところから落とされて……落とされ?


 ああああっ! アイツ! 九頭の野郎、マジで殺そうとしやがった!


 いや、実際問題、あんなところから落としとんだ。生きてるからって殺人未遂だぞ! くそっ!


 ずぐに警察――は駄目だ、役に立たないのは分かった。


 なら、学校……も駄目だな。なんだあんなクズ野郎が大臣やら理事長なんてデカい力を持ってるんだよ……。


 力が欲しい。全然足りない。


 どうしたら。


 なにが良い案は………………すぐには浮かばないか。ん……今なんの時間――


 ――っ! そういや授業中じゃん! 今何時だ――


 ――13:42か、まだ五限目の途中。とりあえずはダンジョン前に……?


 スマホを凝視してなにか引っかかる。


 ん~、見てても分からん。いつものステータスアプリを開いたままの待ち受け画面なのに。


 いつもの変わることがなかったステータスなんだが……なんか変だ。違和感というか――


【名前】ユート ミカミ(御神 勇斗)

【Lv】0

【状態】健康

体力HP】10/10

魔力MP】0/0

【 力 】4

【耐久】6

【速さ】4

【器用】9

【知能】3

【精神】7

技能スキル

 ○個有ダンジョン

【装備】フライパン+


 ――ん~ん? あっ! スキル! スキル生えてる!


「マジかっ! スキル! やった……やった、初スキルだ」


 何度見返してもちゃんとある。


 そういや【特異点へのスキル、個有ダンジョンの作成に成功しました】とか言ってたな。


 DPダンジョン・ポイントを使ってスキルができてのか。


 五億って言ってたしヤバくね? いや、魔力が足りないだけでポイントは大丈夫ってことかもな。


 ……考えても仕方ねえか、また話すこともあるだろうし、今それよりスキルだな。


 個有ダンジョン……か、これを使えば魔力の多いダンジョンに入れるのか?


 あ、入るダンジョンの魔力が上がるとか……はなさそうだな。


 個有ってついてるんだから、色んなダンジョンで使えるわけねえもんな。


 それに、それができるんならとっくに誰かに頼んで……あ、消滅してるとか言ってたな……怖っ。


 やっぱり個有だし、プライベートなダンジョンってこと? かな?


 で、スライム倒せと? 考えていてもキリがないな。やってみるか。


 スキ――


「あ、授業中じゃん……」







 パンッ――パンッ――


「……百個。……はぁ」


 ウエストポーチに魔石を放り込み、次の百匹チャレンジに向かう。


 ダンジョンからの依頼は続けてる。はぁ。頭の中はあの日こことがぐるぐるとループしてる。


 ダンジョンで落とされたあの日、九頭と取り巻きたちの罪。俺への殺人未遂は揉み消された。手も足も出ないまま揉み消されたんだと思う。


 授業に戻るためダンジョン前に行くと九頭たちが――


 ――俺が間違ってA班のダンジョンへ入り、誤って崖から落ちた――


 と、デタラメな証言し、九頭はもちろん、下っぱは、涙まで流して演技してた。


 九頭たちはそれを止め、助けようとした正義だと。


 黙ってられないとそこへ割って入ったんだが、九頭の野郎、あろうことか俺に抱き付き耳元でクソな事を言った。


『御神~、今回の事は~黙ってねえと~、てめえんとこの親に権力って暴力を使って圧力かけてやるからな~』


 すぐさま引き剥がしてやろうとしたがびくともしなかった。


『暴れんなよ~。そ~なったら家族そろって路頭に迷うことになるぜぇ~。あ~そうだなぁ~、迷ってるうちは良いけどよ~、…………間違って死んじゃうかもなぁ~』


 なにも言い返せなくなった。俺だけじゃない。父さん義母さん。それに愛美に被害が及んでしまう。


 負けだ。そんなの黙ってるしかない。……くそっ!


 そして学校のルール。ケガ防止のためのルール。それを破ったことも要因だが、今回は命の危険もあったってことで療養……。


 何をやってしまったかをゆっくり考え、反省し、落ち着くようにと。


 自宅療養という名の三日の自宅謹慎きんしんとなった。








 パンッ――パンッ――







 ――パンッ。


「なんだ?」


 魔石じゃない……ものがドロップ? スライムで?


 大きさ形は魔石と変わんないけど、色が黒じゃなくて青色だ。


 ググってみるか。


 スライム ドロップ


 出た。ドロップ一覧ね、スライム、これか。


 ●スライム:魔石


 魔石しかドロップしないのか。ってことはこの青色も魔石なんだ。


 あ~、そうか、魔力が多いってのがこの青魔石ってことなのかもな。


 ま、考えても仕方ないか。倒しまくるだけだ。


 ウエストポーチに魔石を放り込み、近くで湧いたスライムへ。


 パンッ――






 ――16:23――


 もうこんな時間か。そろそろ愛美が帰ってくるな。


 朝からノンストップだったし、切り上げるか。


「スキル個有ダンジョン――帰還」


 口にした瞬間、自室に戻っている。


「あっ、靴」


 慌ててベッドへ腰をおろし、靴ひもをほどいた。


 靴はダンジョンへ入る前に床に敷いていた上に置く。


「約二日で六百ちょっとか。青い魔石が二個。謹慎明けたら普通のダンジョンへ、だな」


 はぁ……シャワー浴びよっと。





 ―――――現時点のステータス―――――

【名前】ユート ミカミ(御神 勇斗)

【Lv】0

【状態】健康

体力HP】10/10

魔力MP】0/0

【 力 】4

【耐久】6

【速さ】4

【器用】9

【知能】3

【精神】7

技能スキル

 ○個有ダンジョン

【装備】フライパン+


 自宅謹慎中だけど、家から出てないし? たぶんオッケー。


 気になるのは青色の魔石っぽいヤツ。

 勇斗は魔力が多い魔石と判断したみたいやけどどうなることやら。

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