第4話 落ちたら……ね?

「待ちやがれ九頭っ! ……は?」


 な、なんだここは……。いつもと違うぞ? こんなのまるで洞窟じゃないか。


 足元も石畳じゃないし。両脇が崖? 先は見えない。天井も見えねえ……なんなんだよここ。


「御神ぃ~。ここは一年A班用のダンジョンだぜぇ~、ちょ~っと笑っただけでバカみたいに追いかけてきやがって、一昨日おとといみたいにヤられに来たのか~」


 っ! またあの笑い。


「てめえ! なんであんなことしやがった! 警察も動いてる、もう話も来てんだろ!」


「ちっ、うぜえうぜえ。あれくらいの事でいちいちうるせえんだよ。警察? あー来てたな、うちの爺さんに頭ペコペコしにな」


 どういう事だ? 警察が九頭の爺さんに頭を下げる? 逆だろ?


「分かってねえみてえだから教えてやるか~。爺さんは政治家ってやつだ。ダンジョンに関係する大臣ってやつだな」


 大臣? ダンジョンの? それで警察は頭を下げた?


「くひっ。まあ多少の事は揉み消せるってやつだ、せっかく通報したってのによ~残念ね~御神ちゃ~ん」


「てめえ……そんなのずりいじゃねえか! 捕まれよ!」


「あー、ハエがうるせえなぁ~。ついでに言っとくがここの高校、理事長もやってっから憶えといてね~」


 ……理事長? 校長より上? だからコイツがヤってたいじめや暴力沙汰も問題になってなかったってことか?


 考えがまとまらない……ヤツは取り巻きとなんか話してっけど、九頭に仕返しは無理ってことか?


 そんなのねえぞ……なんなんだよ、ヤられっぱなしで終わりかよ……やり返す方法は、くそっ頭に回んねえ――。


「おい、引率の先生は?」


「はい、いつも通り先の安全を確認しに行ったまままだ戻ってません」


 ――何か、何か無いか、どうすりゃいい。政治家を、ダンジョンの大臣をどうしたら黙らせられる――


「ならちょうど良いか、そっから落とせばうざいハエともお別れできるんじゃね?」


「お、落とす? し、しかし九頭さんそれはあまりにも――」


「お前もうぜえな、落ちたいか?」


「い、いえ、申し訳ありません、もう――」


「じゃあボケぇ~としてるアイツを落としてこい。上手く落とせたら、そうだな、お前の親父を出世してもらえるよう爺さんに言っといてやるよ」


「え? ほ、本当に?」


「ああ、今ヤバいんだろ? ニュースにはなってねえが裏金問題でメディアに追いかけられてんだろ?」


「……や、やります。父さんが捕まったらうちは終わりです。だからやります。やらせてください!」


「よ~し、じゃあやっちゃって~」


 ――強くなれば……誰よりも。政治家、どんな権力にも負けない強さ。


 金も力も持った強さだ。


 ……無理だ、今は。レベル0じゃ話しにもならない。


 上げなきゃ。何とかしてレベル上げて、九頭より、いや足りない。日本で――駄目だ。


『一緒に最強の探索者になるの! 勇斗、分かった!』


 そうだ。


『任せとけ! 最強になるぞ愛美っ! 世界最強探索者になろう!』


 そうだった。


 約束した。こんな理不尽の火の粉なんか簡単に振り払える強さ。


 最強になってやる!


「――ゴメンッ!」


 ドンッ――


「ぐっ――っ?」


 なんだ――なんで上に九頭と取り巻きが?


 っ! 落ちっ! 落ちてるっ!


 くそぉぉぉぉぉぉ…………。









【特異点と成り得る者の並行世界接触を確認】

【特異点と成り得る者の存在消滅まで138秒】

【カウント開始します】


「――――――! ――――――――!」

(ちょっ、待てっ! 消滅ってなんだよ!)


【――意識があるのですか? これまでの者はなす術もなく消えたのですが】


「――――――! ―――――――! ――――!」

(訳わかんねえよ! 消えんのか俺っ! 答えろ!)


【消えます。このまま落ちればですが】


「――――――! ――――――――――――!」

(どうすりゃいい! 消えるわけには行かねえんだ!)


【……気絶しなかったばかりか、この状況で我を失わない……。この者には少し期待ができるかも知れませんね。では――】


「は? とまっ……た?」


 う、浮いてる!? どどどどどうなって――


【精神を静めてください】


「お、おおおおおう。おおお落ち着いたぜぜぜ」


 こんなの落ち着けるかぁぁぁぁ!


【……DPダンジョン・ポイント使用。床を形成します】


「うおっ! 痛っ!」


 …………床。触れるし消えない……よな。


「す、スゲーな。魔法か? でもありがとう。流石に浮いたままは落ち着けなかったし」


【では、少し長いですが説明を開始します】


「あ、ああ。死ぬわけにはいかない。助かるんなら話しでも何でも聞くぞ」


【ダンジョンの成り立ちは知っておりますか?】


 ――から始まって、正直に知らないと答えた。


 聞くとダンジョンは人が出す魔力で存在できたり成長できるそうだ。よく分かんないけどそう言うもんだそうだ。


 でも、探索者がダンジョンで出す魔力は微々たるものだと。


「へぇ。それで俺が役に立てるのか? 立てるならやるぞ、死なない、ってか消えないですむんだろ?」


【はい。用意する特殊な異界に繋がったダンジョンで魔力を採取し、この世界にあるダンジョンへ魔力の輸送を依頼したいのです】


 ん? 別ダンジョンからダンジョンさんのダンジョンへ?


「……ややこしいな。ん~、魔力が取れるダンジョンで魔力を取ってきて、えっとダンジョンさんに渡せば良いってこと?」


【そうです。魔石の形で輸送です。引き受けてくれますか?】


「おう。それなら問題……あー、スライムの魔石でも良いか? レベル0だから二階層に行く許可出ないんだよ」


【問題ありません】


「なら魔石の運搬は任せてくれ。で、生きて帰れるんだよな?」


【はい。ではDP500,000,000の使用。個有ダンジョンの解放を始めます】


 も、もう始めるのか!? どうしたら良いんだ!? 待ってれば良いのか!?


【特異点へのスキル、個有ダンジョンの作成に成功しました】


 は?




 ―――――現時点のステータス―――――

【名前】ユート ミカミ(御神 勇斗)

【Lv】0

【状態】健康

体力HP】10/10

魔力MP】0/0

【 力 】4

【耐久】6

【速さ】4

【器用】9

【知能】3

【精神】7

技能スキル

 ○個有ダンジョン

【装備】フライパン+


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 九頭、ほんまマジでクズやね( ;゚皿゚)ノ

 勇斗くんは初スキルも手に入れたようだし、念願のレベルアップも近い……かも(੭ ᐕ))?

 ってか殺人未遂だよね九頭……揉み消せるのか?

 あっ、実行犯は下っぱくんやし、殺人教唆ならそそのかしただけだからまだジッチャンの力でなんとかなりそうな気がするな。

 下っぱくんはあかんやろけどな( ̄▽ ̄;)

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