エピローグ

 「今僕が使っている能力は『騒々しい幽霊ポルターガイスト』。お前の能力と違って人も操れるぞ?」


 そういうと、何の前触れもなく亮介が吹っ飛ぶ。


しかし、それでも亮介は、倒れない。


「こなくそぉ!」


辺りの瓦礫が浮かび上がり、桜に向かって突撃させる。


しかし、どこからともなく現れた水滴が、がれきを貫き桜へ衝突することを防ぐ。


――『雨垂れ岩を穿つ』。


そして竜の頭を持ちながら蛇の体の……アンバランスな生物が、亮介に巻き付く。

すっかりおびえあがり、動けない。

さながら、蛇に――竜ににらまれたカエルのように。


――『竜頭蛇尾』。


そして、地面の無数の土が、亮介を巻き込みながら山のごとく隆起する。


――『塵も積もれば山となる』。

 

あまりの重量に、亮介が気絶する。


 すると、桜の拘束が解けた。


「ふむ。気絶すると能力が解けるのか。南北西」


「はーい」


 ふわり、とどこからともなく南北西が現れる。


「あいつらを片付けろ」


「まータ派手にやりましたね」


「ついな」


 後片付けを南北西に任せ、桜は生徒会室に戻ろうとする。しかしそのすきを見計らって、土を払いのけ、気絶から復活した亮介と、その取り巻き達が一斉に襲い掛かる。

 が――それを許す東雲南北西ではない。

 瞬時に氷の刃を生成。それを飛ばす。

氷の刃が触れると、瞬く間に全身が凍り付く。

 体の氷を、気絶から復活した亮介が自身の能力で砕くが――それも、意味がなかった。


 眼前には、炎刃が付きつけられる。


――『麟鳳亀竜』


「はーい、チェックメイト」


 轟っ、と音を立てて、あたりを焼き尽くした。


 ※※※


「で?不良どもを焼きつぶして帰ってきた、と」


「つぶしてはいません!」


「焼いたのは否定しない、と」


「記憶にございません!」


「政治家か」


 富士山のような書類を片付けながら、桜はため息をつく。その悩みの種は、東雲南北西。彼は優秀なのだ。普段は。しかし、ひとたび暴走すると手が付けられない。悪と見定めた敵はぜったいに許さない。

 本人が悪みたいな性格をしているのに。


「(普段が優秀なだけに何も言えんのがな……)」


 眉間を抑え、唸る。


「あの、あと数分で授業ですが」


「は?」


 ちょうど、予鈴が鳴る。


「まずっ、急ぐぞ南北西!」


「はいはい」


 ※※※


 この世界には、秘匿されている事実がある。


 これは、秘匿されている少年少女の物語。


 予鈴のベルが、今日もなる。

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