第2話

~放課後~


体育館裏で、金髪ロングの美少女と、件の不良生徒たちが相まみえていた。

 

「てめ……あなたがあの手紙を?」


「違うが?」


「はぁ!?こんの、なめ腐りやがって!」


 たったこれだけの言葉で逆上し、殴りかかって来る。

 そしてそれを軽々とかわすと――がら空きの腹に膝蹴りを食らわせ――吹っ飛ぶ。校舎の壁に激突した。


「がぁ!?」


「なっ……あの亮介さんにダメージを!?」


「てめぇ!なにもんだ‼」


「てめぇ!なにもんだ‼と聞かれたら――応えてあげるのが世の情けというものだろう。不良ども」


 そういい、その文字通りの化けの皮をはがす。そこに立っていたのは――


「ひぃっ!?」


 歴代最強の生徒会長独裁者の姿があった。


 「え?そんなにやばいんですかそいつ」


「あ!新入生の子分!いいか、教えてやろう。あいつの名前は神薙桜。戦挙ポスターに書かれた言葉は『天上天下唯我独尊』。その言葉の通り、戦挙の最終選考ではあらゆる候補者を同士討ちさせ、気に食わない奴は八つ裂きにした!そのことからついた忌名が――」


 ――独裁者だ。


「そういうことだ」


「「ひえ⁉」」


「説明ご苦労。馬鹿A馬鹿B。残りは貴様らだけだが――どうする?」


「あ、あぁ」


「降伏か、死か」


「く、糞ったれがぁぁぁぁ!」


 馬鹿A――先ほど説明していた不良が拳を握り締め、桜に殴り掛かる。

 が、それを軽々と受け止め、投げとばす。


「馬鹿B。ここまで来たら、私と戦うか?しっぽ巻いて逃げたら馬鹿どもにボコされるぞ」


「んー……逃げさせてもらいまーす!」


 馬鹿B――新入生が、全力で逃げ始めた。逃げ足だけは割と早く、桜では追いつけそうにない。


「ふむ、このままでは逃がしてしまうな……」


 あきらめかけたその時。

 突如、新入生の動きが止まる。

 そして、壊れた玩具のような挙動でゆっくりと振り返る。

 後ろを振り返ると、生きているかわからないほどに血まみれの亮介と呼ばれた不良が、手をかざしていた。


「何をしている?」


「くくく……てめぇ、おれの能力知らねぇだろ」


「まぁ。全校生徒全員のことを把握するのは難しいだろうな」


「だったら教えてやるよ。俺の能力!」


 ――手練手管!

 ――生物以外を自由自在に操る能力!

 ――操れるものの上限は、自身の体重!ただし、操れば操るほど体力を消耗する!

 ――故に!体育会系デブが一番うまく使える!なんだそのキメラ!


「ふむ。だが、操っているのは馬鹿Bに見えるが?」


「いいや?俺が操っているのはあいつの服……てめぇの服だって操れるぜぇ?」


 ――手練手管!


「む」


 手を桜にかざした途端、馬鹿Bはどさりと崩れ、桜は動けなくなる。


「なるほど……これは厄介」


「このままタコ殴りにして……終いだ‼」


 こぶしを握り締め、顔面を殴りに行く。

 しかし――その拳が、神薙桜に届くことはなかった。


「ッ、ンだよこれ!」


「せっかくだ……教えてやろう。僕の能力」


 ――神薙桜の能力!

 ――天上天下唯我独尊!

 ――あらゆる能力のコピーが可能!その条件は相手を屈服させること!


 ――その自由度ゆえに、彼女は!


「僕は、この能力で」


 ――「独裁者となった」!

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