第2話 面倒事
(こいつが...
実はこれまで俺は明寧守紅音という少女を直接見たことが無い。見たとしても少し視界に映り込んだ程度で、正面から見るということはこれが初めてだ。
(確かに学校中の男子が騒ぐ理由が分かった気がする)
こんなにも整った容姿をした女子は、世界中どこを探しても見つけるのは難しいと言える程に彼女は美しいと言えるが
「...」
「あれ、どこ行くんだ?」
そう、別に俺には関係ない。関わる気なんて毛頭ないし、喋るなんてそれ以前の問題だ。だから俺はなにか言うわけでもなく教室の教卓の方に行き、自分の席を確認する。
「はぁ、ごめんな明寧守さん。あいつ悪いやつじゃないんだけど人と喋るのが嫌いなんだ」
(あぁ、そういえば秋永はそうやって誤魔化すんだったか。)
そう思いながら俺はとある準備を進める
「ふふふ、大丈夫ですよ。ええっと...」
「そういや自己紹介してなかったな、俺の名前は
「私は
「皆さん、知ってる人の方が多いと思いますが一応...私は明寧守紅音です。これからよろしくおねがいします」
それぞれ自己紹介が終わったところで準備の終わった俺は教室を出る。
「今度はどこ行くんだよ」
「別にいつものやつだ」
「大変だねぇ桜花くんは〜」
「ちっ」
そうして俺は教室を出ていった。
Side:桜燐秋永
俺は桜花が教室を出ていったのを確認した後、二人に目を向ける。
「しっかし本当に大変だなあいつも」
「まぁしょうがないよ、あの桜花でもこればっかりは避けられないし」
「山茶良さんには私でも勝てませんからね...」
そんな雑談をしていると教室にクラスメイトになるであろう生徒が続々と集まってくる。その数は時間ごとに増えていき、そして全員が集まった。やはりクラスの話題は明寧守さんで持ち切りだ、男女問わずその人気が高いことを思い知らされる。なんせ明寧守さんのところにはクラス中の生徒が集まっているのだから。
(流石、としか言いようがないな)
そうしてその様子を眺めていると教室の扉が開かれる。
「はいはーい皆、席についてなー」
俺より少し背の高い女性が入ってきた。おそらくこのクラスの担任の先生だろう、少し気さくな人そうでホッと胸をなでおろす。先生というのはクラスの雰囲気を作るうえで大事な鍵となる人物だ、そんな先生がはずr...あまり印象の良くない先生だと先が思いやられる。
「始めまして皆さん、これからこのクラスの担任になる
そう言って先生は今後の流れを説明し始めた。この後のすぐに始業式がありその後ホームルームをして終わりらしい。
「じゃ、そろそろ行くか」
先生の合図とともに俺達は体育館に移動する。体育館には先に移動していた三年生が綺麗に並んでおり、それに合わせるように俺達のクラスも並び始める。そうして一年生の全部のクラスが並び終わり、少し経った頃に始業式が始まる。まず最初に教頭先生の挨拶その次に校長先生の挨拶そして次は...
「在校生代表、山茶良桜花」
我らが
Side:山茶良桜花
(めっちゃめんどくさい...)
俺だって別にやりたくてやってるわけじゃない。仕方なくだ、仕方なくやっているのだ。ほら、あるだろ学年の成績が一番優秀なやつが始業式とかでスピーチをするやつ。俺はあれをやらされているのだ。そして思ってるやつもいるだろうが「三年生の人がやれば良いのでは?」と、これに関してはこの学校では毎回スピーチする生徒をその時の生徒会長と各学年ごとの学年主任の先生が相談して決めるらしいのだが...
(なぜか毎回俺を選ぶんだよなー)
そう、なぜか毎回俺を選のだ。確かにテストの順位は学年一位をキープしてはいたが、それは他の奴らにも言えることだった。それに俺は他の奴らとは違って友好関係を広めていない、友好関係を広めている他に奴らではなく俺が選ばれるのはおかしいと思い、毎回生徒会長達に説得に行くのだが未だに説得に成功したことが無い。
「在校生代表、山茶良桜花」
あぁ、どうやら呼ばれてしまったらしい。俺は「はい」と返事をして全校生徒の前に立つ。その時秋永と目があったがその顔は殴りたくなるほどにニヤニヤしていた。
(後でデコピン一発だな)
そして俺は胸ポケットにしまっていた紙を開いてスピーチを始める。
「あれほど厳しかった寒さも徐々にゆるみはじめ...」
嫌々ながらもそしてそれを感じさせないように慎重にそれを読み始めるが内心では結局
(めっちゃめんどくさい...)
と思ってしまうのであった。
そうして俺はスピーチを終えて元いた場所に戻っていた。するとそこには
「お疲れ様山茶良くん」
見知らぬ教員が立っていた。
「誰ですか?」
「新しい君の担任だよ、山茶良桜花くん」
第一印象は気さくそうな先生である、というか多分そうなのだろう。そう思いながら俺は元いた席に座る。
「なんだ、無視かい?先生悲しいな」
俺はこの瞬間察してしまう
(この先生と俺、相性が悪い...)
俺はあまり人と喋りたくないが、こういった先生は生徒と喋らないと死んでいまうのかと思うほどに喋る人が多い。なのでこの状況は俺にとって最悪とも言えるのだ。どうしたらこの地獄から逃れるか考えていると
「それにしても君、頭良いんだね」
先生が質問をしてきた
「まぁ一応は」
「へぇ、羨ましい限りだね。私はあんまり頭が良くなかったからなー」
「そうなんですね」
「む、君結構冷たいタイプだね」
「...」
(もしかするとこの先生、スピーチより面倒くさいかもしれない)
そう思いながら俺は先生の質問に適当に付き合いながら始業式が終わるのを待つのだった。
やがて始業式が終わり、教室に戻ってきた俺は黙って秋永に近づき
「ぐへっ!なにすんだよいきなり!」
「いや、スピーチのときお前がむかつく顔してたから」
「そんなむかつく顔してたか?」
「まぁ、殴りたくなるくらいには」
「そんなに!?」
そんなふうに俺等が駄弁っていると
「おつかれ桜花!」
「お疲れ様です山茶良さん」
二人ほどこちらに近づいてくるのが分かった。
(ん?二人?)
そう、二人である。一人はおそらく桔埜で間違いないだろうがもう一人恐らく...
「桔埜と...明寧守さんか」
「えぇ、先程のスピーチ素敵でしたよ」
「...ありがとう」
正直俺はあまり彼女と話したくない。理由は明白で周りからの目線が痛いからである。そして恐らくだが、彼女が此処に来たということはそれすなわち桔埜と仲良くなってしまったのだろう。
(これは、避けようがないのか?)
「ん?桔埜と、明寧守さんまできたのか」
「そうだよ!朝話してから仲良くなったんだ!」
「そうか、これからよろしくな明寧守さん」
「はい、よろしくお願いします」
微笑みながら明寧守さんは返事を返す。
(あぁ、なんでこうなるんだ..)
「なぁ、折角だし学校終わったらこの後四人でどっか行こうぜ!」
今日は初日ということもあり、午前で終わるためそれを見越しての提案なのだろうが、俺は行く気は起きなかった。
「いいね!私さんせー」
「私も大丈夫ですよ」
「あ、俺パs..」
「よし!全員から許可も得られたわけだしどこ行くか決めるぞー」
「おい!俺は良いなんて一言も...」
なんて言葉は虚空に消え、俺は諦めて眼の前にいる奴らの会話を右から左に流していた。
「てことなんだがいいか?桜花」
「ん?あぁいいぞー」
どうやら近くのショッピングセンターに行くことに決まったらしい。桔埜と明寧守さんが話し始めたので俺は秋永をこっちに引き寄せて少し
「おい、お前どういうことだ?」
「まあまあ、そんな怒んなって。案外楽しいかもしれないぞ?」
「はぁ、まあお前がそこまで言うなら行くが...」
「行くが?」
「俺は一度家に帰るからな。流石にこのままはこの学校の生徒に刺されるかもそれないからな」
「あぁ、確かにな」
苦笑いをしながら秋永は俺の発言を肯定する。それから休み時間が終わった俺達は自席へ着く。その後先生が入ってくる。
(そういえば、この人の名前知らないな)
そんなことを思いながら俺は先生の方に意識を向ける」
「改めて、今日からこのクラスの担任になった、水浅沙奇だ。よろしくな」
(水......浅...?)
わずかに心臓の鼓動が早くなったのが分かった。
(まさか、まさか...な)
そう自分に言い聞かせ俺は先生の話に耳を傾けることにした。
拝啓、不香の華と言われた君へ。 kota @k-zap
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