正夢

@21wakana.

抽選会

私はお母さんとショッピングモールに買い物に来ていた。

始めてくる場所なのでどこに何があるのかまったく分からない。

私とお母さんは迷いながらも買い物を終えた。

帰ろうとしたタイミングでアナウンスが流れる。


「この後13時より、中央広場にてお正月の大抽選会を行います。」


そういえば、お会計のときに抽選券を貰っていた。

13時まではあと20分程なので抽選会場近くのイートインスペースでドーナツでも食べながら待とう、ということになった。


5分前になり抽選の列へ並んだ。

だが、1等の景品が見当たらなかった。

近くに店員がいたので聞いてみることにした。


「1等の景品って何ですか?」

「1等は抽選開始の13時にお披露目となりますのでもう暫くお待ちください。」


店員に言われた通り、13時になるまで1等の景品を楽しみに待った。


13時になるとベルが鳴らされた。


「13時になりましたので、抽選会を開始します。1等の景品はこちらです。」


赤いサテン布を被せられた1等の景品が代車で運ばれてきていた。

定員の「こちらです。」の合図とともに、別の店員がサテン布を取ると、四角い氷がでてきた。

その氷の中には、私の顔があった。

なんで私の顔がここにあるのだろうか。

そう考えていると、店員が言った。


「こちら、1等の景品は女子高校生の顔になります。飾るもよし、自分の顔と変えるもよし、そして今回は特別に、転売もよしとしましょう。この顔は売れば大金持ちですよ。さあ、抽選会を始めましょう。」


自分の抽選が終わってもまだ私は混乱していた。

なんで勝手に私の顔を景品にされているのだろうか。

私以外が1等を当てたら私の顔はどうなるのだろうか。

疑問と焦りで正直頭が回らない。

とにかく、もっと抽選券を集めなければ。

そう思い、私はお母さんに訴えた。


「ねぇ、早くしないと他の人に取られちゃう。早く集めないとだよ。」


でもお母さんは平然としていた。


「そんなに欲しいの?売りに行くまで家に置いておくのも大変だしいらないでしょう。帰るよ。」


帰るよ?

いや、帰れるわけがない。

なんでそんなに平然としているのか不思議でしかない。


「なんで?私の顔なんだよ?早く取り返さないと。」


そんな私の言葉にお母さんは笑う。


「何言ってるの。あの顔はあなたのじゃないでしょう。あの顔があなたのなら今のあなたはどうなってるのよ。」


私ははっとした。

確かにそうだ。

あの顔が私の顔なら、今の私はどんな顔なのだろうか。

いや、そもそも顔は付いているのだろうか。

私は今どこから景色を見ているのだろうか。


急いでトイレに駆け込み、鏡で自分の姿を見た。

鏡に映った私の顔は鉄製のロボットのような顔だった。

私はさらに混乱した。

そうか、これは夢だ。

起きよう、起きるんだ。


タイミングよく目覚ましが鳴った。

私は目を開けてほっとした。

よかった、やっぱり夢だった。

そう思いながら顔に触れると、硬く冷たい感触がした。

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