第40話 『アンダーシブヤ』
――――『要塞都市渋谷』地下軍事基地――――
ここは「アンダーシブヤ」と呼ばれる、要塞都市渋谷の地下にある軍事拠点だ。
地上の全ての建物には「避難ブロック」と呼ばれる移動式の部屋が設置されている。
警報が鳴って一定時間が経つと、それぞれのブロックが異なる経路を通り、この地下基地へと収容されるのだ。
……この避難ブロックに乗り損ねた者は、旧型のシェルターへ徒歩で避難しなければならない。
私たちは旧型の対怪異スーツを着込み、退怪術士専用の輸送シェルターに乗り込んでいる。
しかし、地下10㎞にまで張り巡らされたルートは乗り心地など全く考慮されていない。
そのため、揺れる缶詰に閉じ込められたかのように乗り心地は最悪だ。
「みなさ~ん、初めての実戦です!くれぐれも……生きて帰れるとは期待しないように!」
「せ、先生……それは……」
「でも、可能な限りお守りしますわ。未来の可能性を担う皆さんですもの。ただし、今のところ“可能性”という価値しか示していないことは、お忘れなく。」
「そ、そんな……」
重要な軍事施設は基本的に地下に存在する。
このアンダーシブヤは人類の反撃拠点であり、天井高はおよそ1㎞、幅は十数キロにも及ぶ。
まるで、もう一つの渋谷が地下に広がっているようだった。
間もなくして、退怪術士を地上に送り出す「射出カプセル」がずらりと並んだ空間に到着する。
退怪術士はこのカプセルを通じて地上へと送られるのだ。
「退怪術士WR11258、浅見エツコ! アンダーシブヤ4番区射出口に、援助学生を連れて到着!!」
しかし、無線から聞こえてきたのは……。
「来るなぁ!逃げろぉ!!こんな化け物!ナンバーズ……いやムーノ様以外、無理だ!学生を連れて……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「な、なんですって!?応答願います……応答を!」
「せ、先生!今、ナンバーズ案件って……」
「いやだ……私、まだ死にたくないぃ……」
この射出口から無線が届くということは、上位退怪術士以上の階級者が発信しているはずだ。
それが一瞬でやられてしまったというのか?私のいる国で人々が殺されるなんて……
もし私が最初から『朔月ムーノ』として出動していれば……。
「全員……やられましたの?一体渋谷に、何人の上位術士が常駐していると思っておりますの!?」
「せ、先生!逃げたほうがいいんじゃ……」
エツコ先生の顔が一瞬、曇った。基本的に退怪術士はナンバーズでもない限り絶対のマニュアル厳守が鉄則......
たとえ未熟な学生でもこのまま地上に射出し、ナンバーズが来るまでの「肉壁」として使うことが正解なのだ。
「撤退しますわ!ムーノ様案件ならば、あなたたちでは肉壁にさえなりませんもの!!」
「先生……」
生徒たちは安堵の表情に包まれた。
「上で一体何が起こってるんだろうね?月乃ちゃん。」
「そ、そうだね……」
私は冷静を装って答えるが、内心焦っていた。
上の方にある地下シェルター避難経路から聞こえてくる機械音が異様なほど小さい。
もしかして避難ブロックがどこかで足止めされているのか、それとも……破壊されたか。確実に異常事態だ。
すると突然、妙な音が耳に入ってきた。
「ん?サクラ、ちょっと待って……何この音?」
「え?何か聞こえる?とりあえず月乃ちゃんは私の後ろに……」
この音は地上からのもの?でもここと地上には何そうにも重ねられたぶ厚い障壁があるはず......。
まさかそれを打ち破ってこちらに向かっているというの?
すると隣の神様達も反応する。
「......不味い。大分当てを付けてきてるな......多分ルシアの性格を利用した罠か。」
「この波長……タイプ・オイドマよ?」
「クソッ……だが、そう簡単に足を掴ませないぞ。」
「い、一体何が来るんですか……?」
異質な音が段々と大きくなり.......
甲高いドリルのような音はついに、強烈な破壊音と共に天上を突き破った。
「先生!!あれ、何ですか!!」
「わ、わかりませんわ!何でしょうね!?」
「怪異じゃ……ない……」
「月乃ちゃん、下がって!!」
数キロ先に、40mほどもある巨大な液状ガラスのような物体が姿を現した。
その表面にはわずかに青い色がかかっており、形状は絶えずグニャグニャと変化している。
――それはとても......地球で生まれたものの形状ではなかった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
降臨する謎の液体存在?形状を変化させるその素体は......
怪異ではなく「タイプ・オイドマ」と呼ばれる未知の何かだった。
次回、未知の存在に朔月ムーノが立ち向かう!!
面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をくれると超嬉しいです!!
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