第33話 輝きを放つ極光
【勝ちたいか?ならば僕の指示に従え。】
「誰!?」
【誰でもいい。このままじゃ君は生き残っても「サクラ」はタダじゃすまないぞ?それにあの銀弾や触腕は熱線の影響を受けない。今のままでは君の異能のいくつかが奪われる。】
「なっ!?」
――罠かも知れない……だが、この指示を信じてみるしかない。
でもなぜだろう......希守月乃という存在はこの指示に従いたくて仕方がないのだ。
心の奥底がまるで歓喜しているような......
【ポイント6-V11。0.0002gの反物質爆弾を設置、3.24秒後に起爆。】
命じられた瞬間、線分で刻まれたポイントに視線が向いた。
その空間には未だ何の攻撃も来ていない。しかし考える暇もない私は、言われた通りその座標に爆弾を設置する。
【次、ポイント2-K7へ。45m四方、厚さ1.5mのアダマンタイト障壁を構築。障壁が形成されてから3秒後、そこに銀弾が到達する。】
「は、はい!」
私がアダマンタイトの障壁を形成すると、まるで時間が計られたかのように銀弾がそこに命中。
まさかこれほどの精度で予測が可能なのかと不安が頭をよぎるが.....もう私には従う以外の選択肢はなかった。
【着弾を確認次第、座標-13-J18に運動エネルギー操作を事前発動、上方98度の反射角度を維持しろ。これで小熱線が一の触腕に直撃する。】
「え?一の触腕は全然別の所に......」
答えを得る間もなく、私は操作を実行。
すると指示通り、移動してきた一の触腕に反射した熱線が直撃した。
見えない何者かが、私の視界を超えてすべてを見通しているような……
やめよう......今はこの指示にただ従おう。
ただでさえ私は超巨大熱線を止めるので手一杯なのだ。
もしこの熱線が地球に落ちれば日本は......サクラは確実に蒸発する。
【大型熱線の結界5層目の耐久を強化。余剰エネルギーの70%を注ぎ込め。右方向から来る触腕には、小型核1kTを使って15度上方へ逸らすズレた触腕同士は9-G6で交差する。『模倣』で極点圧縮と熱エネルギー干渉を取り出し、集中照射。】
「……あなた、いったい何者な...んですか?」
彼は答えなかった。あまりにも的確な指示......桁違いの空間把握能......
私の視覚情報を瞬時に書き換えるその力......間違いない、この存在も『神』だ。
【5層目までの『護光結界』完全消失を確認、既に半壊した4層目は無視し、3層目の耐久強化に徹しろ。並行して-8-H17に共有する条件の転移ゲートを準備。そのポイントから相手が一点突破を試みる、転移ゲートで攻撃を無効化。転移先は-3ーG0。その後......】
「何なの一体......あなたも神な...のでしょうか?」
指示通りに転移ゲートを展開すると、大怪異王の触腕は根本から焼き切れた。
しかし相変わらず彼は答えない。すると後ろから声が聞こえてくる。
【横軸0の場所で良かったのかしら?後方となるマイナス座標の方が......】
【いやこれでいい。何せ僕たちは最適解を踏むわけにはいかない。】
「え?」
こ、この声。間違いない忘れるはずもない『淡藤の神』だ。
ということは......一緒にいる彼が以前言っていた『ルーク』と呼ばれる神なの?
【触腕再生まで、次は1-U15に神の杖を12本創造、6秒後に全てを発射。】
「再生前なのに……どうして?」
――未来を見ているわけじゃない、これは敵の行動パターンを読み切っているのだ。
しかも私の反応速度や異能の発動速度まで見越している。
全ての戦術がその究極的な予測の上に、緻密で完璧に組みあがっているのだ……
【結界の耐久強化を終了。余剰の全てを使い、運動エネルギー操作の異能を発動。8本全て触腕を中心から外側に押し出せ、その先の座標に神の杖を設置、触腕を射出しろ。破壊した触腕は『異能・模倣』の絶対零度で凍結し再生を遅らせる。】
「でも......そんな事をしたら護光結界が!」
【問題ない。巨大熱線はあと6秒で終了する。】
「え?」
確かに巨大熱線の光がわずかに弱まり、明らかに減衰している。
彼が言った通りだ……どうやらこの攻撃は無限に続けられるわけではないらしい。
【巨大熱線再装填に掛かる時間は、推定1.9秒。その間に仕留めろ。できるな?】
「......できます!」
怪異の神の行動が鈍り、次第に熱線の威力も弱まっていく。私の壁は残り2枚……これなら余裕で防ぎ切れる!
熱戦が切れた瞬間に……間合いを詰めて最大火力で消し飛ばす。
絶対に見逃してはいけない……チャンスはたった1回。
それを伸ばせばまた泥沼の長期戦が待っている……
「ここで倒す!人類のために!」
「やらせはせぬ!人類を排し、地球の癌を取り除く!!」
怪異の誕生に関係ありそうな、重大そうな話だが今は全て無視する。
全ての異能を総動員させ、来るべきその瞬間の為に全身が弾けそうなほどの強化を施す。
――そしてその時は来た……
一瞬ではあったが確実に熱線は途切れた……
【行け、君の到達地点を見せてくれ。】
「ハァァァァァァ!!」
「ぬぉぉぉぉぉぉ!!矮小な人類種ごときが!!」
私の身体から溢れ出す黒いエネルギー、それはまるで光を反射しない新月の影。
これは私が誇りうる最強の切り札にして、人類という生命の到達点!
「『共振奥義・新月』!」
「怪神権能!鉄壁の白陽星!!」
かつて考えた......最強の力は何だろう?氷?炎?それとも神様のような全能?
頭の良くない私にはそんな難しい『最強の能力』は分からなかった。
だったら私らしくシンプルに......あらゆる理不尽を、ただただ圧倒的な『力と速度』で叩き潰せばいい。
あらゆる全ての迎撃より速く、いかなる防御も突破する現時点の私が誇りうる最強の奥義『新月』
「これで......終わり!!」
「ガハッ......」
怪異の神の肉体に、巨大な正円の穴が空く。
まるでそこに「新月」があるかのように、黒くそして空虚な空洞ができる。
「……人間の勝ち。」
「……不完全とはいえ、最後には我を圧倒して魅せるとは、だが……失望したぞ。」
「な!?」
「……これは仮初の受肉。されど完全なる力で世に降り立つは近い。さすればその程度の児戯には負けぬ。」
仮初?完全な状態ではない?まさかこれでも完全体じゃなかったの?
どちらにせよ関係ない。こいつの能力はある程度理解できた。
完全看破で見破った情報だって山のようにもある。
これを人類全体に共有して、人間みんなで怪異の神に勝つ!!
「負け惜しみ?次はもっと圧倒的に殺してあげるから。」
「神々が特異点と呼ぶ存在が……この程度で思い上がるとは。だが覚えておけ……」
「……特異点?」
「人類絶滅の日は近い......輝けぬ月には止められぬ......」
そう言い残して怪異の神は、遥かなる宇宙の暗闇へと消えていった。
こうして『人類最強』と『怪異最強』の一度目の戦いは......人間の完全勝利で幕を閉じた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
『最強』VS『最強』遂に決着......
しかし、お互いに一騎打ちではないので優劣は未だ不明......
果たして朔月のムーノはこれから訪れるであろう、最終決戦に勝利することができるのか?
面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をくれると超嬉しいです!!
私のもう一つの物語である、「輝冠摂理の神生譚」最新話は、「満輪因果の叛逆譚」の33話から約4~5年前になります。(10/15時点での最新話。)
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