第32話 怪異の神





 ――こいつさえ殺せば!全部終わる!!!――



 私は全身の神経を研ぎ澄ます。怒りと不安と期待で高ぶっていた体の感覚を、一気に冷ましていく。

 相手の出方を伺ってやるもんか!私から仕掛ける!これまでの攻撃で分かった。

 あいつは『神の杖』を含め、私が知るどんな破壊兵器でも倒せない……。反物質兵器でさえ、多分あいつには効かない。


 異能『創造』は確かに便利だけど、決め手にはかける。私以下の力を大量に量産しても意味がない。

 ならば――私自身の力で! 超高速の近接攻撃で、あいつを押し潰すしかない!

 音などしない。私が放つエネルギーが輪となり、私の通った場所に後から痕跡を残す。そして瞬く間に距離を詰める――



「!?……射陽蒼壁!」


「無駄!砕けろ!」



 大怪異王の防御を破り、奴の腕が肉片となって周囲に飛び散った。だが、次の瞬間、空間に異様なものが広がる。

 まるで巨大の水銀の種子を実らせた無数の木が、空に根を張り始めるようだ。


 巨大な種と不気味に揺れる幹が、あまりにも不自然なバランスで成長していく。



「生まれ出よ、種銀弾。」


「!?......なにこれキモイ!」



 無数の種が爆発し、私に向けて一斉に射出される。

 しかも威力と数が尋常じゃない!!私がオートで展開している『暗月空壁』を容易に突き破ってきた。



「押し合いで勝てないから、私を防御に追い込むつもり?甘い!」


「我が触腕よ、かの者より奪え。」



 瞬間、私の背後から伸びる触手が迫ってくる。直感で分かる――あれに触れられたら終わりだ。

 何……それ。ふざけないで。私達から『異能』まで奪おうって言うの?」



「察しが良き怪物よ。我が触腕に触れられたが最後……異能は失われ、ただ人となる。」


「奪った異能はどうなんの?」


「……怪能へと変化させ、新たな怪異の礎となる。」


「殺せば殺すほど強くなるって事?」


 ヤバい。こいつが何の際限もなく異能を奪えるとしたら.......

 私以外とバッティングさせるのは不味い!!サクラの異能がもし奪われたら……いくら私でも勝ち目はない!



「一の触腕は異能を、二は心を、三は命を、四は体を、五は言を、六は愛を、七は記憶を、八は……人であることを奪う。」


「ッ……」



 こんな怪物、地球に返すわけにはいかない! 触られた瞬間、どんな強い退怪術士でも無力化される。

 それどころか向こうの力になってしまう!怪異の神......こいつだけは今ここで私が倒さなきゃいけない!



「されど......どうやら貴様を屠るには未だ力が不足らしい。故に、絶対滅亡の一撃が必要だ。」


「何がきても、あんたの速度じゃ当たらないし。」


「人類よ、我が力の前に滅びるがいい!」


「は?まさか……この距離から地球に……?」



 その言葉と共に、膨大な力が奴の頭部に集中していく.......

 だが速攻で阻止しようとした私に、怪異の神は冷たく言い放った......



「我が最凶の一撃で、人類.......特に日本を消し去る。」


「え?……」



 日本?何で日本を狙う?もっと大きな大陸を攻撃すればいいはずなのに。

 しまったまずい!!完全に動揺した。反応が遅れた――



「やはり日本に思い入れがあるな? 家族か?友人か?それとも恋人か?今宵、全て塵と化す。」


「させない!!異能共振・極限守護式!!七層護光月壁!」


「終焉の時!!絶滅の暗黒星!!!」



 その声と共に、視界を埋め尽くす暗黒の天空が地球に接近する。

 まるで......空が全部落ちてきたみたいだ......そんな圧倒的すぎる暗黒の前に、障壁を次々に破壊していく。



「くっ……」


「貴様の敗因は、守るべきものが多すぎたことだ。でなければ、私の方が不利だったのに。」


「ぅぅ......異能・創造、神の杖!」


「地球を守りつつこちらに攻撃を仕掛けるか。だが、そんな片手間程度の異能出力では、我には届かぬ。」



 このままじゃ、私の防御が先に破られる!

 どうする……? おじぃに回してるエネルギーを使うわけにもいかない……。



「くぅぅぅ。異能『条理超越』!!」



 私は七層護光月壁に『条理超越』の異能を重ね掛け、防御力の上限を超越させる。

 さらに同時進行で『運動エネルギー操作』の異能で少しづつ力を逃がしつつ、残った余力と異能で必死に反撃を試みた。



「驚いた.......だが潮時。貴様の異能を奪い、人類を滅ぼしてくれる。何せ、今お前はぁ.......そこから動けぬ。」


「こんのぉ!!」



 八本の触腕が私に向かって一斉に伸びてくる。

 私は迫りくる暗黒を防ぎつつ、何とか触腕を迎撃しようと試みるが......


 じりじりと......確実に間合いを詰められていた。

『条理超越』のお陰で何とか結界は持ちそうだが......異能を一つでも奪われれば全て瓦解する!


 でもここで逃げることは......逃げても逃げなくてもサクラが……

 サクラもおじぃを見捨てて私だけ?そんなの絶対できない!!



「どうしよう……このままじゃ……」



 私の視界が歪み始めた。焦燥感が全身を包み込む中、ふと、おかしな光景が目に飛び込んでくる。

 何もない空間が奇妙な線で、分割されて見えるのだ......


 そして線の重なる場所には、アルファベットと数字が見える……



【勝ちたいか?ならの指示に従え。】



 どこからともなく、声が聞こえた......









 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 人類最強のムーノがまさかの大ピンチ?

 そして聞こえてくる謎の声の正体とは?

 

 『人類最強』VS『最強怪異』その決着はいかに?

 

 面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をくれると超嬉しいです!!



 余談ですが、時系列でいうと「輝冠摂理の神生譚」最新話は今話から約4~5年前です。

 (2024年10月5日時点での最新話。)




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