第31話 種の頂点 





『人類最強』と『怪異最強』

 共に『最強』を冠する両雄がその眼前に向かい合う。



「あの老いぼれを屠ったことが、それほどまでに憎いか?」


「は? 何殺した気でいるの?もしかして名前だけの雑魚?今治療中なんだけど?」



 一瞬、大怪異王が黙り込んだが、その眼には依然として人類を侮る冷たさが宿っている。

 まるで本当に自分が、世界の全てを破壊できると信じているかのようだ。



「……特異点とは何とも不条理なものよ。」


「不条理?突然地球に現れて、一方的に人間を攻撃したあなた達がそれ言う?」



 私は周囲を見回す。そこには地平線まで残る熱線の跡がはっきりと見える。

 これが怪異王の攻撃によるものだと考えると、私は一瞬、背筋が凍る。

 もしこいつがこの規模の破壊を何度も繰り返せるなら、圧倒的に私が不利になる。


 私は地球を守りながら戦わなくちゃならない。こんなのバカスカぶっ放されたら、人類なんて直ぐに滅ぼされちゃう。

 地表に掠っただけでどんな被害を及ぼすか見当も付かない......



「長話が過ぎた。魅せてみよ、人間の特異個体!『怪神権能・必滅の黄金』」


「な!?」



 あれ?これ......さっきのよりもはるかに強力じゃない!

 もし私が避けてしまったら……ユーラシア大陸が丸ごと蒸発しかねない!?

 しかも、こいつ、わざと私が避けられないように攻撃してきてる!


 位置取りも最悪。距離を詰めても、ギリギリ間に合わない……



「もう遅い。金色の灼熱放射の中、弱き人類を呪って潰えよ!」


「この……外道!!」


「壊放!!!」


「ィッ!?」



 防げるかな?この攻撃......余波だけでも日本が無事で済むとは思えない。

 そもそも、こんな規模の攻撃を受けたことなんてない。

 でも……サクラを蒸発させるわけにはいかない。ここで完全に止めてみせる!!


 私は防御に仕える全ての異能を動員する。『運動エネルギー操作』『護光結界』『創造』『模倣・反転』『条理超越』。

 全てを使って、この攻撃を防がなきゃ!!『回生と融合』はおじぃの治療にほとんど使ってるから、今はこれに頼れない……。



「くぅぅぅ!何のこれしき!!」


「『怪神権能・権能強化』」


「ッ!?」


「……お主、本当に人間か?」



 さらに威力が上がった!?ダメだ、このままじゃ防ぎ切れない……

 でもここで退くわけにはいかない!!だったら、せめて軌道をずらして宇宙に飛ばしてやる!



「ハァァァァァァァ!!!」



 私は巨大な熱線を全力で宇宙へ捻じ曲げた。幅15kmはあろうこの熱線を、私の異能をフル稼働して逸らす。

 しかし……利き手の右腕はもう使い物にならない。おじぃを完全回復させるまで、回復には限界がある。


 おじぃの今の状況は最悪だ......既に心肺機能は停止してしまっている。

 おまけに歳も歳で回復力も高いとはいえない.......でも、この状況で止まるわけにはいかない。



「……化け物め。」


「あんたにだけは言われたくない......」


「故にもう一撃、撃たせてもらうとしよう。」


「おじぃ……異能、借りるね、『異能・模倣:対象浮遊』」


「む?」



 地球の上で戦い続けるのは無謀だ。全力で相対しなきゃ殺せない、地上での戦闘は自分の首を締めるだけ。

 なら……この怪物ごと、宇宙へ連れていくしかない!



「異能・『従刃転移じゅうじんてんい』」


「!?……」



 転移だけじゃ大気圏外までの距離は足りない!

 浮遊で超速移動と転移を繰り返して、大気圏外まで持っていく!そして……。



「『怪神権能・必貫の白銀』」


「邪魔!!」



 私は銀弾を『運動エネルギー操作』で捻じ曲げ、逸らした。

 そしてついに、地球というゆりかごの外へと到達する。



「……この惑星を美しいとは思わんかね?」



 何これまさか......ね、念話!?



「は? 酸素不足で頭おかしくなった?」


「人間は、この美しい星に巣食う害虫である。他の生き物を殺し、壊し、そして遂には同族で共食いを始めた。愚か……などという言葉で片付く域ではない。」


「確かにそうかも。でも、それはマイナス面しか見てない話でしょ。プラス面を語らず、マイナス面ばかりを取り上げて真実みたいに話すのこそバカでしょ?」



 私はサクラやおじぃを、死ぬべき人間だとは思えない。ほとんどの人間には悪意なんてない。

 ただ当たり前の生活をしようとした結果、地球が少しずつ壊れているだけなんだ。



「……理解できぬか。ならば分からぬまま宇宙の塵となれ。」


「そっちこそ、勘違いしたまま死ね。異能共振……」


「おぉ......これが特異点。」


「顕現『朔月』」



 私の背後に正円の暗がりが浮かび上がり、黒い一対の翼が生える。

 左右の瞳にはそれぞれ、剣と杖を円陣にしたような黒い模様が浮かび上がる。

 更に溢れんばかりの力があふれ出し、周囲の空間を振動させている。



「それがお主の共振か……余波だけで怪異の神たる我を身震いさせるとは、なんという……」


「……地球で発動すれば、生態系さえも破壊しかねないもん。 とにかく死んで?」



 私は、思いつく限りの『破壊』を全て作り出した。

 神の杖や核弾頭、架空の神話の武器、そしてこれまで模倣してきた人類の異能。すべてを……。


 その全てが宇宙という膨大な空間に一堂に会しているのだ。

 それはきっと人類の集大成だろう......



「良かろう。我も真の姿を晒すとしよう。怪神権能・全開放……『日没』」


「フゥー.......」


「......」



 ――神経を研ぎ澄ませ......異能を極限まで解放しろ、こいつさえ殺せば.......


 ――全ての怪神能を使用して特異点の命を捕捉する、こやつさえ殺せば.......



「「全て終わる!!」」







 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 ついに宇宙までやってきた最強達。

 『異能共振・朔月』と『権能解放・日没』が衝突する。

 互いに切り札を発動し開始早々、戦いはクライマックスへ!?

 

 『人類最強』VS『最強怪異』その勝敗はいかに?

 

 面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をくれると超嬉しいです!!





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る