第34話 ダメージ
怪異の神が消えた後、私は極度の疲労と怪我で地球へと落下した。
着陸にはなんとか成功したものの、右腕は骨が露出するほど損傷している。
しばらくはまともに動けそうにない。
「ハァ……ハァ……私のバカ......てか腕、グロ。」
異能の超連続使用に加え、宇宙空間での長時間の無呼吸運動……
おじぃの治癒に神経を集中させすぎたせいで、回復が間に合わず出血が止まらない。
怪異の神とは謎の念話?みたいなので話していたから余計気づかなかった......
「アドレナリンって本当にヤバい……もっと計画的に回復しつつ戦わなきゃダメだった……」
意識が遠のきそうになる中、必死で踏みとどまる。
私は人類の希望......私がこんな無様な姿を晒せば、人々は再び恐怖に怯えることになる。
『朔月のムーノ』が勝利の象徴でなければ、人類の心の支えにはなれないのだから。
「せめてここから……移動しないと。」
本当に全力で追い詰められたというのなら仕方ない。でもアドレナリンで気づかず回復忘れました~!
なんて......そんなバカみたいな理由で醜態を晒すわけにはいかない!!
すると、遠くから知った声が聞こえてきた。
「さ、朔月?」
「……ラナ?」
「ちょっ、その傷……早く手当しないと!」
「大丈夫。あなた達とは体のスペックが違うから。でも、ちょうどいいから肩くらい貸してちょうだい。」
ラナが恐る恐る近づき、肩を貸してくれる。
え?そんなに私が怖い?それとも、私の怪我が一般人から見ると相当酷いってこと?
「重っ!」
「だから言ったでしょ?体のスペックが違うって。」
「え……冗談じゃないの?身体構造から違うの?」
「黙って、木陰に運びなさい。ドローンに撮られたら大惨事になる。」
木陰に着くと、私は異能で認識阻害を作り、外部からは見えないようにする。
寄りかかる木に安堵しながら、私は静かに目を閉じた。おじぃの回復がまだ終わっていない。
負った傷は元々重く、さらに胴体まで裂かれている……
90歳を超えた老人を回復させるにはいくら私でも相当の力がいるのだ。
ラナが、そんな私に話しかけてきた。
「朔月は……どうして退怪術士になったの?」
「……あのね、休ませる気があるの?」
「わ、悪かったわね。」
でも、彼女の真剣な顔を見て、私は答えることにした。
彼女の目には、無力感が浮かんでいる。これは......自分の限界を必死に認めんと苦悩する顔だ。
「まぁいっか......私、誰かの為に命をかけるのが好きなの。」
「え……そうなの?意外ね。」
「……命令に従うのも好きだし、誰かを守るのも好き。私は……誰かに仕えたいんだ。もっと誰かに無理難題を命じて欲しい……まるで社畜みたいでしょ?」
ラナの顔が、感動から「んん?」という疑問に変わっていくのが分かる。
「え?どういうこと?ドMってこと?」
「変でしょ?自分でも思う……生まれたときから、ずっと心にぽっかり穴が空いているの。何かが足りない、何か違うの。もっとこう……違うの!私はもっと!」
「……朔月?」
「……やめとく。困らせたいわけじゃないし、どうせ叶わない。」
きっとこれは、無い物ねだり。時間が経って大人になれば、消えていくはず……
だって私は17歳なんだ、きっと厨二病みたいな一時的なものだ......きっとそうだ......
......きっと大丈夫、時間が解決してくれるはず......
「とにかくサクラには連絡させて貰うわよ?あの子、今頃気が気じゃないだろうし?」
「そうね。月乃ちゃんとやらも、トイレに行ってからはぐれたみたいだし?」
「……は?」
「え?」
あっ……これ、ラナには月乃のこと話してなかったんだ。
サクラもこの理由をラナに説明していないみたい。
やばい……完全にやらかした!ここでラナに私の正体がバレるわけには......
――いつもそうだ......私は最後の詰めが甘いんだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
思ったよりダメージを受けていた主人公。
そして遂にボロを出してしまうムーノ?果たして正体を隠しきれるのか!?
面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をくれると超嬉しいです!!
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