第10話 ナンバーズ






「遂に来たか!朔月!!久しぶりに見たなぁ!!」


「あれ?あなたの席そこだっけ?アルマイン。」



 私に問いかけてくるのは髪の毛をレインボーに染めて、鼻ピアスを開けている派手な中年女だ。


 大して美しくもないオバサンが、派手に着飾っているその姿は絶望さえ覚えるほどだ。

 ※個人の感想です。



「お!よくぞ聞いてくれたねー!!上がったんだよ順位が!!8位に!」


「いよいよ危なくなってきたね?……おじぃ。」



 私がそう言うと、会議室に静かに座る老兵が重く、そして静かに話し始めた。



「何を言っとる。次世代がこれだけ強くなっとる。なんと頼もしきことか。」



 彼は『不屈のセルス』かつて私が超えた元世界1位にして……私の育て親だ。


 遂に9人いるナンバーズの最下位にまで下がってしまった。

 これは一重に次世代の急速な進化と、本人の衰えによるものだ。



「さて。集まったな。ではナンバーズ定例会を開催する。」



 齢93歳。怪異の出現前からこの世に生を受けている老練。世界最初の異能保有者。

 年老いた今でもその圧倒的な経験と、貫禄からナンバーズのまとめ役を担っている。



「ではルフトくん。皆に詳細を話してやってくれ。」


「承知いたしました。では皆さん!この『契略のルフト』が!僭越ながら!お話させて頂きます!!」



 丸メガネに七三分けの独特なスタイルを持つインテリ?は序列6位のルフトだ。

 彼は屈服させた怪異を従わせる事のできる、恐ろしい能力を持っている。



「時間も差し迫っていますので本題から入ります。北太平洋、経度53.1179緯度173.5973の地点に……伯爵級の大怪異と思しき存在を複数体確認。」


「伯爵級複数体?んなの私が行くしかなくない?」



 事実この中で伯爵級複数体と戦闘になった際、問題なく勝てるのは私と2位とラナくらいだろう。

 他のナンバーズも勝てるかもしれないが……不安要素が残る。



「いえ。朔月さんは動かすなとのFCTからの通達です。万が一に備えてフリーにしておきたいのでしょう。こういった陽動作戦が前にもありましたから。それに今回の任務は偵察です。殲滅じゃない。」


「……じゃーロンドンの時はよっぽど人がいなかったわけ?子爵級に私を呼ぶなんて。」


「あの時は近辺の退怪術士が、軒並み出払っていました。さらに言えば侵入された場所がロンドン……国際連合の重要支部とかなり近い。そういった背景があったのだと。」


「りょーかい。そこはもういい。小言はこれくらいにする。で?誰が行くの?」



 すると1番この状況にそぐわない人物が声を上げる。



「あたしが行くんだから!」


「「「お前は寝てろ!」」」



 どうやら先の戦いの結果を挽回したいらしいが……

 満場一致の反対に、流石の駄々っ子も大人しくなった。



「わしが行こう。わしなら経験から読み解ける事も多い。異論はあるか?」


「でもおじぃ……今のおじぃだと勝てなくない?」


「見てせやるわい。老兵の底力をな。」


「あ……これ死亡フラグ……」


「縁起でもない事を言うでない!」



 幼少期……私はすぐにその才を見出され、親から高値で売り渡された。

 親は異能結婚というものをしており、強い子供を作ってその子を売った金で遊んで暮らす計画だったらしい。


 異能には親の異能を受け継ぐ、といった類の特性は一切ない。つまりただの迷信なのだ。


 しかし……偶然だったとしても私は生まれてしまった。

 結果私は闇市でオークションにかけれる。経緯は省くが、偶然にも私はそこで彼に見出されたのだ。


 いや……発見された、助けられたの方が近いかもしれない。



「とにかく異論はないな。ワシが行く。」


「それが……おじぃの最後の言葉だった……」


「だからやめぃ......」



 その後、今後の対策や新しい要塞都市の建造計画などについて話し合った。

 私はほとんど聞いていないのだが……

 正直私がいれば問題ないとさえ思っている。


 そうして私はいつの間にかおじぃと2人で廊下を歩いていた。



「ムーノよ。」


「なーにおじぃ?」


「お前に見せてやりたい。1999年以前の世界を。」


「別にいい。」



 おじぃはオードリー・ヘプバーンの大ファンだったらしい。

 オードリー・ヘプバーンがいた1993年以前どれだけ素晴らしいか、耳にタコができるほど語られた記憶がある。



「今は上手く抑え込めているが……お前のその狂気はいつか自身以外の全てを滅ぼしかねん。」


「そんな事ないよ?今はおじぃもみんなもいる。だからFCTに仕える。」


「いずれお前が認めた何かが……善のものである事を祈っておるぞ。」


「うーん?大丈夫じゃない?」



 おじぃはいつも私のことを気にかけてくれる。

 私もおじぃの事が大好きだ。

 今在学している育成学校に入るまでずーっと一緒に暮らしていた唯一の家族……


 私が退怪術士になることに唯一反対した愛情深い人なのだ。



「まぁよい。先のことは分からぬ。だが少しはワシの言葉を心に留めておけい。お主は古今東西『最強』故に、お主が道を踏み外した時、止めてやれるものはおらぬのだからな。」


「はーい。」



 そうして私はおじぃと別れた。

 しかし……私の心には大きな取っ掛りができていた。



「最強か……私が最強?そんなの所詮……この狭い揺りかごの中の話でしょ。」



 かつて……垣間見た深淵が私の脳裏を過ぎる。

 あれはおそらく、実在さえ観測されていない何か。


 そして思い出す……2041年『要塞都市渋谷』





 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 第10話をここまで読んでくださりありがとうございます!


 伯爵級の怪異が集まる理由とは???

 そして『不屈のセルス』ムーノの狂気とは??


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をしてくれると.....超嬉しいです!!


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