第11話 淡藤の『神』





 ――2049年『要塞都市渋谷』【ムーノ13歳】――



 ……6歳の頃、当時最強と言われていた怪異術士を倒して最強術士の称号を手に入れた。



 それから7年。

 人類が16年奪還できずにいた135の『要塞都市』を怪異から奪還。



 遂には種の到達点、『朔月のムーノ』と呼ばれるにまで至った。



 生まれ持った紋章の数は脅威の『11刻み』

 そしてその全てが漆黒等級以上……


 深紅の紋章に至っては、世界で私1人しか確認されていない。



 当然子供の私は舞い上がっていた……。


 13歳のある日に……

 あの『淡藤の神』に出会うまでは。





 ――――『渋谷』スクランブル交差通路――――



 姿はかつてから大きく変わったらしいが、スクランブル交差点。


 当時の私は13歳だった私は、年に数度しかない休日を楽しんでいた。



「ぁぁー!今日は何買おっかなぁ!お金いっぱいあるし?」



 ただスクランブル交差点を歩いている。

 そして買い物をして……美味しいものを食べるだけの何の変哲もない休日。


 ……になるはずだった。



「ゾワッ」



 私は一瞬で……本能よりもっともっと深い。

 己の魂の奥底で『死』を強烈に感じ取った……


 そして不気味な事にそれは『怪異』の気配では無い。

 当然、周りの人達は全く気づいていない。いや……気付けるわけがない。この私でさえ正確な場所が掴めないのだから。


 根本的にモノが違う……存在としての桁が違う。



「一体......何者?」



 確かなければ……

 もし敵であれば……恐らく人類史は『数分』で終わりを告げる。


 私は人混みを押しのけ、スクランブル交差通路を逆流した。

 その『ありえない何か』の気配を全力で辿り、確かめなければならない。


 もし接触して危害を加えて来るのであれば、人類最強の私が何としてでも抵抗するしかない。

 例え、どれほどの犠牲を払っても……



「どいてください!!どいて!」


「うぉ。君危ないな……」



 人混みをかき分け、数十秒後……

 私は遂に気配の現況に辿り着いた。



「見つ……けた!」



 間違いないこの人からだ!

『異能』も『怪装』のオーラもない。それどころか強者の風格さえも完璧に隠蔽しきっている。


 でも……なぜだか私には分かる。

 この人が何か得体の知れない存在だと。


 幸い悪意は一切感じない。

 そして私は義務にも似た焦燥感とこれまでにないほどの緊迫感を持って……


 意を決して彼女の肩を掴んだ。



「ん?どなたかしら?」


「!?」



 思わず息を呑んだ……


 薄紫に輝く美しい長髪……


 薄紫の美しすぎる瞳……


 凡そ人間とは思えないほど整った、スタイルと美貌……


 そして何故か手に持っている......クレープ?



「それは一体……」


「これ?そこの路地で買った栗のモンブランクレープよ?」


「食べ物じゃない!あなたは何なの!!」


「私?私はルシアよ。」


「違う!!あなた!一体何者なの!?」


「え?いや……その……人間よ?」



 違う……絶対に違う……

 ていうか反応が不自然すぎる……


 確かに『完全鑑定』の全てが彼女を人間だと判定している。


 でも分かる……本能で分かる……

 この人は人間じゃない。どちらかと言うと『神』に近い何か……



「変な子ね?お母さんとハグれちゃったの?」


「違う!お母さんは……今はそんなのいいの!お願い……何でもします……話を聞いてください……」


「ごめんねぇ……私これから少し忙しいのよ。ちょっと旅こ……お仕事の予定があってね。」


「また……会える?」



 何でそんな事を聞いたのか……今でも分からない。でも何故か聞いた……

 ポッカリ空いた……私の心の何かを埋めてくれる。そんな気がしたのだ。



「あなた……寂しいの?なるほどあなたが……」


「……寂しい?私が?」


「おいで?お姉さんが抱きしめてあげるわ。」


「え?」



 ダメだ……これは違う。

 これは……何がするつもりだ。



「偉いわね。お姉さんの方に来るなんて。」


「あ……がっ。ちが……」



 人類最強の力を持ってしても、一切抵抗ができないほどの強大なマインドコントロール……


 引き寄せられていく……声さえも出せない。

 種の到達点とまで歌われる私が抗えないほどの強大な力の奔流。


 私はこれまでに無いほどの全力で『完全鑑定』を使った。

 一つでもこの人について何か情報を取らなくては……何か一つでもこの『淡藤の神』について知らなくては!


 そして彼女に抱きしめられた瞬間……



「どうしたの?やっぱり寂しかったのかしら?」


「え……?」




 完全鑑定を通して私が覗いたのは……

 光の粒子が立ち込める金色の草原だった……


 その中心には小さな1本の木。

 姿がモヤで見えない誰かに『淡藤の神』が寄りかかり、2人で本を読んでいる。


 そんな光景の中、彼女がその誰かに微笑みかける笑顔は……


 まるで……この世の幸せを凝縮したような幸福な顔だった。


 温もりなどそんな生易しいものでは無い。

 海よりも山よりも遥かに深い……『愛』。


 彼女の『幸』そのものだった。



 そして彼女は私を抱きしめ、耳元で静かに唱える。



「第4階梯神術・沈黙の真実。」


「あ……」



 深淵……私は宇宙の深淵を見た気がした。

『人間』ごときが抗えるはずのない圧倒的な神の御業……


 これが……神々の力?


 こんなものを当たり前のように使う者が山のようにいるのなら……


 地球なんて10秒も掛からず滅ぼせてしまう。

 私達は......生かされているのだ。


 ......ただ神々に生存を許されているだけなのだ。

 しかし、私の記憶は消えてはいなかった。



「あ、れ?記憶がある?覚え……てる?」


「ルークみたいに記憶を消されるのは可哀想だから……」


「ルーク?」


「そう......私の大切な人。」



 そして彼女は……

 高速で大気圏を突破していった。


 私以外の誰1人としてその存在には気づいていない。


 私は悟った......

 私達はこの地球という小さな揺りかごの中で、蠢くだけの矮小な生命なのだ。



「異能が......11?たったの?それだけ?」



 何を満足しているのだろうか。たかが異能如きで……

 絶対に追いついてみせる……


 神々に!!



 私はその日から……血のにじむような鍛錬を始めた。

 鍛錬をしている内にいくつかの『異能』は等級が上がった。


 でもまだ足りない……何故なら私の目標は人類最強ではなく『宇宙最強』なのだから。








☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★


 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 第11話をここまで読んでくださりありがとうございます!


ムーノが見た神は「輝冠摂理の神生譚」のヒロインのルシア!?

そして今後2つの作品を覆う運命は???


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をしてくれると.....超嬉しいです!!


 何かあればお気軽にコメントを!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る