第68話 反撃開始
俺たちの前に姿を現した最強の敵――闇色のドラゴン。
その攻撃力もスピードもこれまで戦ってきたドラゴンとは桁違いだった。
バークス分団をあそこまで追いつめたドラゴンなんだから、そりゃ手強いというのは頭に入っていたんだが……こいつは想定以上だ。
「ヤツの緑色の炎には防御魔法は一切効果がない! すぐに使い魔を通じてすべての魔法使いに情報を共有するんだ!」
現場にやってきたベテラン魔法使いがすぐに指示を飛ばす。
恐らく、あのドラゴンをどうやって食い止めるのかが一番の課題となるだろうが、どうも他も苦戦が続いているらしく、これ以上の増援は望めそうにない。
さらに俺たちの希望を削いだのが、闇色のドラゴンが持つさらなる武器だった。
「ガアアアアアアアアアアッ!」
けたたましい咆哮とともに、闇色のドラゴンは大きな尻尾を振るう。
身を伏せてなんとか回避するが、直撃を受けた石像は真っ二つに分断された。
「な、なんて威力だ」
どうやら、ヤツの尻尾は鋭利な刃物と同等の切れ味を有しているらしい。あれだけの体格から放たれた攻撃なら、普通の尻尾であっても無事では済まないだろうが、それでも防御魔法があれば死ぬほどの重傷にはならないはずだと踏んでいた――が、あの威力を目の当たりにすると自信がなくなるな。防御魔法ごと切断されそうだ。
ヤツの攻撃は魔法で防げない。
戦うごとに明らかとなっていく驚愕の事実に、魔法使いたちの戦意は次々とへし折れていった。
「しっかりするんだ! ここで俺たちがヤツを止められなければ王都は沈むぞ!」
なんとか周りを鼓舞するも、闇色をしたドラゴンの猛攻から身を守ることで精いっぱいの状況が続いた。
「なんとかしないと……」
さっき使った、まとめてドラゴンを氷漬けにする魔法ならば対抗できるかもしれないが、それでも仕留めるまでは至らないだろう。
俺ひとりだけでは倒しきれない。
ここはやはり――
「メイジー! マリーナ!」
あのふたりの……いや、厳密にいえば「四人」の力が必要になる。
そんな俺の願いが届いたのか、こちらに向かってくる強いふたつの魔力を感じていた。
「来てくれたぞ、あのふたりが」
「えっ?」
「そ、それって!」
「ああ……ユマとシャーリーだ」
襲撃してきた三体のドラゴンを相手にするのだって大変だというのに、魔法兵団の中でも実力者であるふたりをこちらへと派遣してきた。これはかなり思い切った作戦だ。
しかし、この闇色のドラゴンがジノン・バークハートの切り札だとするなら、まずはそちらを倒しておくべきと決断を下したのだろう。
魔法兵団全体にかかわる作戦……指示を出したのはグラムスキー兵団長か。
「……先生、私やります」
「四人揃ったら負けられないよね!」
同じ時期、一緒に魔法を学んだ弟子であるシャーリーとユマのふたりが駆けつけてくれたおかげで、消えかけていたメイジーとマリーナの闘志に再び火がともった。
【炎麗】。
【風慧】。
【雷英】。
【水聖】。
魔法兵団がその未来に期待を寄せる若き四人が集結。
これで一気に風向きが変わったぞ。
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