第65話 校舎搭へ
ついに黒幕の居場所を掴んだ。
時を同じくして、俺の援護に来たというメイジーとマリーナ。
正直、いるかどうかも分からない黒幕を追うより凶悪なドラゴン退治の方に力を注いだ方がよさそうだと思っていたのだが、こうして黒幕の位置がハッキリした今となっては頼もしい援軍となった。
俺はすぐさまふたりに使い魔を各地へ送って黒幕の居所を掴んだと伝えてもらう。
それから俺たちは黒幕が待ち構えていると思われる校舎塔を目指す。
「あの校舎搭……随分と変わった造形をしているな」
「あそこでは魔法の研究を主に――あっ」
「何か思い出したのか、メイジー」
「前に話をしていたハインリック先生が古代魔法を研究していたのもあそこなんです」
「っ! そういうことか……」
失念していた。
ジノン・バークハートに関する場所が分からなくても、彼が尊敬をしていたハインリックにゆかりの深い場所ならば見当がつく。
そうなってくると、いよいよこの屋上にいるのがジノンである可能性がグッと高まってきたな。
「学園に教師はいないのか?」
「今日は休校日だから手薄になっているはずだよ」
マリーナからの言葉を受けて、俺は「なるほど」と納得する。
休校日という学園側の事情を把握しているのもこの場所を選んだ理由のひとつとしてあるのだろう。
「先生、このまま援軍が来るまで待機しているの?」
「攻め入るのもひとつの手ではあると思いますが」
そう語るマリーナとメイジーの目は戦意に満ち溢れていた。
マリーナはともかく、あのおとなしかったメイジーがここまで闘争心の強い子になるなんてなぁ。
――って、今はそれどころじゃない。
とにかく頼もしいふたりの元弟子と一緒に学園の校舎搭へと乗り込んだ。
「結界魔法の類はないな」
「来る者拒まずってことでしょうか」
「何それ! 余裕ぶってむかつく!」
余裕……果たしてそうだろうか。
確かに、ドラゴンを使役して戦うなんて前代未聞だ。
今は騎士団や魔法兵団という組織で立ち向かっているからなんとかなっているが、単独で戦うのは絶対に避けたいところではある。
きっと他の魔法使いや騎士でも同じ気持ちだろう。
だから余裕を持っているというマリーナの考えも分かるのだが……どうにも違和感を覚えるのだ。
彼はむしろ自分を探し出してほしかったんじゃないのか?
本当に自分の邪魔をされたくないのなら、この校舎搭に結界魔法を張って侵入を防ぎ、その間に逃走するという手も考えられたはず。
だが、あえてそれをせずにむしろ招き入れているような相手の行動……そこには絶対何かしらの意図があるのだろう。
罠という可能性もあるので探知魔法は継続して使用しつつ、俺たちはついに屋上へとたどり着いた。
「この先に黒幕がいるはずだ……気を引き締めていくぞ」
ふたりにそう声をかけ、頷いたのを確認してから屋上へと続くドアを開ける。
そこにはこちらに背を向けて立つひとりの男の姿があった。
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