第64話 黒幕の行方

 予想通り、ドラゴン軍団の第二波が王都を襲撃。


 今回は三体だけだが、最初に来た十体より明らかに格上だろう。それにまだ後続に控えているかもしれない。


 何もかもが不透明のままではこちらの対応は常に後手となってしまう。

 この状況をなんとか打破したいのだが……鍵を握る黒幕の存在は未だ不明。手がかりすら掴めていない状況だ。


「今度のドラゴンは手強そうだが……どうだ? 黒幕の位置は把握できそうか?」

「この状況で特定は難しそうですね」

「そうか。なら、専念できればどうだ?」

「えっ?」


 ウィンタース分団長からの提案に、俺は思わず聞き返してしまった。


「捜索に専念して見つけだせるというなら、おまえにはそっちに力を注いでもらいたい。そうでもしなくちゃ、この状況を真の意味で切り抜けることはできそうにないからな」

「ウィンタース分団長……」


 そんなことを言われてしまっては――燃えてくるじゃないか。


「必ず見つけだします」

「いい返事だ。シャーリーとユマは討伐部隊の援護に回ってくれ」

「分かりました!」

「先生が安心して捜索ができるよう頑張ってまいりますわ」

「頼んだぞ、ふたりとも」


 戦力としてもふたりの離脱は痛いだろうから、これは仕方がない。

 俺は単独で黒幕の居場所を明らかとすべく探知魔法を駆使して周辺の調査に乗り出した。


 とはいえ、時間的な余裕はまったくない。

 早急に決着をつけなければ、被害は拡大していく一方だろう。


 責任は重大だ。

 しかし、そもそも黒幕が王都内に侵入しているかどうかさえ定かではないのだからこれもかなりの賭けになるな。


 ただ、可能性としては極めて高い。

 だからこその決断だろう。


「どこだ……どこにいる……」


 探知魔法を使う上で大事なのは相手の魔力だ。

 この状況で魔法を使っているのは魔法兵団所属の魔法使いくらい。王都に暮らす者のほとんどはすでに避難を終えているようなので間違いないだろう。


 それ以外の魔力で、尚且つ通常とは異なる使い方をしているとなると、条件はかなり絞られるだろう。


 あの数のドラゴンを従えるには魔力は必要になってくるはず。

 だとすれば、それは明らかに攻撃魔法とは質の異なる魔力となる。


 俺の探知魔法の精度なら、その異質さを察知できる。


 ただ、この魔法の有効範囲を考慮すれば、王都内にとどまらなくても使用が可能。つまり向こうがこちらの読み通りの思考をしていなければこの捜索は無意味となってしまう。


 闇雲に捜し回るよりも場所を絞り込んだ方がいいのだろうが……彼がどんな場所を好んでいたとか、そういう個人的な情報についてはまったくない状態だからな。

 とにかく手当たり次第にいくしかないか。


 そんな俺の視界に、ある物が飛び込んできた。


「あれは……」


 広い王都内でも特に存在感を放っている建物がひとつある。

 それは王立学園の象徴とも言うべき大きな校舎搭だ。


 決まった時間になると屋上にある鐘が鳴り響き、それが王都ではひとつの名物になっていると以前メイジーが教えてくれたな。


「……行ってみるか」


 学園に入らなくても、近づけば何かしら反応があるはず。

 そう判断して駆け出すと――すぐに答えが出た。


「っ!? あそこだ!」


 探知魔法に反応アリ。

 しかもこちらの条件通り、攻撃魔法以外の目的で使用されている魔法だ。


「よし。掴んだぞ、黒幕の居場所を」

 早く知らせなくてはと一旦戻ろうとしたが、そこに思わぬ人物がふたり同時に現れる。


「お待たせしました、先生」

「その顔だと黒幕を見つけたんだね」

「メ、メイジー!? それにマリーナまで!?」

 

 姿を見せたのはドラゴンと戦闘中だと思っていたメイジーとマリーナであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る