第61話 王都攻防戦
突如襲撃してきたドラゴンのうち、二体はなんとか撃破できた。
ここまでの状況を振り返ると、ドラゴンにはそれぞれ特徴があるようだ。
炎を吐き出すのは一般的に知られているが、雷撃を放つドラゴンというのは聞いたことがない。恐らく、人工的に生み出された際につけられた特殊な能力だろう。
……もしそうだとしたら、かなりまずい展開だぞ。
今回の襲撃をなんとか無事にやり過ごせたとしても、黒幕には新たにドラゴンを生み出せる技術がある。今後はさらに強力となったドラゴンで攻めてくるかもしれない。そうなれば、もうノーザム王国だけの問題ではなくなるぞ。
危機感を覚えながらも、とにかく今は目の前の危機に対処する方を優先させなくてはと、ユマやシャーリーとともに次のドラゴンのもとへ。
この頃になると、他からもドラゴンの討伐が完了したという報告がいくつかあがってきた。
人工的に生み出されたからなのか、本物のドラゴンに比べるとそれほど力はないようだ。
だが、ここで気になるのはバークス分団を壊滅寸前にまで追い込んだドラゴンの存在。
恐らく、そいつもこの場に来ているだろう。
襲来した十体のドラゴンのうちのどれかに紛れているのだろうが、今のところそれらしい個体は発見できていない。
魔法兵団の中でも実力者が揃うバークス分団があそこまで追い込まれたのだから、その実力ですぐに把握できそうなものだが……もしかして、まだ来ていない?
戦いが終わり、疲弊しきった頃を狙って再襲撃してくる可能性も考えられた。
「こいつらはただの先兵かもしれないな……」
俺がそう呟くと、ユマとシャーリーの表情が強張る。
「先兵ということは、まだ別に本隊がいると?」
「その可能性についてはわたくしも考慮していましたわ。王都を襲撃するというにはドラゴンたちがあまりに弱い」
ユマの見解は俺とほぼ同じだった。
十体のドラゴンというインパクトに押され、その実力には目を向けられずにいた。
みんな必死で戦い、なんとか勝利を収めて安堵しているようだが……こういう状況が一番危険といえば危険なんだよな。
安心感を得た直後にさらなる絶望が待ち構えている。
戦意を喪失させるのにこれほど効果的な展開はない。
黒幕の狙いがそれだとしたら、全員に注意喚起をしておかなければならないだろう。
――と、思っていたのだが、それは杞憂のようだ。
「おまえら! 気を緩めるなよ!」
「敵はこいつらだけとは限らん! 増援も視野に入れて行動しろ!」
各分団のリーダーたちが、緩んだ空気を一喝するように叫ぶ。
分団長クラスともなればその辺は抜かりなしってわけか。
本当に頼れる存在だよ。
ベテラン魔法使いたちの一喝によって気合を入れ直した若手や中堅たちはハッと我に返って警戒を続行。
とりあえず、増援による戦意喪失という最悪のシナリオは回避できたようだ。
しかし、まだまだドラゴンは残っている。
王都攻防戦は始まったばかりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます