第59話 闇夜の襲撃

 ついにこの時がやってきた。

 しかし、まさかこれほどの数のドラゴンを揃えていたとは驚きだ。


「ゼルク先生!」

「ああ……迎え撃とう」


 俺とユマは城の周辺に舞い降りたドラゴンたちを討伐するため駆け出した。


 ちなみに舞踏会が行われる城は魔法兵団の強力な結界魔法によって守られている。そう簡単に打ち破れるものではないが、これだけのドラゴンが一斉攻撃を仕掛けてきたら――そうさせないためにも、魔法兵団と騎士団は協力して王都内に侵入したドラゴンたちの討伐へと乗り出した。


「取り囲め! これ以上ヤツを城へ近づけさせるな!」

「ヤツは炎を吐き出すぞ! 気をつけろ!」


 手近なドラゴンのもとへ到着すると、すでに戦闘は始まっていた。

 真っ赤な鱗に覆われたこのドラゴンは口から炎を吐き出して周囲の木々を燃やしていく。ここは普段、王都に住む人たちにとって憩いの場となっている公園なのだが……ひどいことをする。

 

まあ、相手がドラゴンである以上、そんなことを微塵も考えてはいないのだろうが、だからといって許すわけにはいかない。

 

 騎士と魔法使いたちは必死に応戦するが、その巨体の前に攻撃の効果が薄れてしまう。

 すると、ユマが一歩前に出た。


「ここはわたくしが!」


【風慧】の異名を持つユマは得意とする風魔法でドラゴンに攻撃を仕掛ける。

 魔力で風を生み出しているため、肉眼では捉えきれないものの、その効果が絶大だった。


「グオオオオオオオオッ!?」


 苦しそうに悶えるドラゴン。

 強靭な鱗はユマの風魔法によってズタズタに引き裂かれ、ついには立っていられないほどのダメージを負う。


「よし! 我らも続くぞ!」


 このユマの攻撃が、落ち込みかけていた騎士や魔法使いたちの士気を一気に持ち上げる。

 とりあえず、ここはもう大丈夫そうだ。


 ただ、ドラゴンは少なくともまだ九体はいたはず。

 他の場所にも加勢に向かった方がいいだろう。


「ユマ、この場は彼らに任せて、俺たちは他の応援に回ろう」

「はいですわ!」


 ヤツらはかなりの巨体なので、遠く離れていても大体の位置は把握できる。その中から城への距離が一番近いドラゴンを止めに行こうとした――まさにその時、俺たちのすぐ近くで轟音と震動が発生。


「な、なんだ!?」


 慌てて振り返ると、そこにはさっきまでいなかった別のドラゴンが。

 どうやら空を飛んで移動してきたらしい。


 だが、それだけではさっきの轟音と震動の説明にはならない。


 全身が黄色い鱗で覆われたそのドラゴンは一体どんな攻撃をしてくるのか。

 そう警戒した直後、ヤツの口がゆっくりと開いていき、そこから閃光とともに強烈な雷撃が放たれた。


「何っ!?」


 まさかの攻撃手段に慌てつつ、防御魔法でなんとか雷撃をしのいだ。


「あ、ありがとうございます、先生……まともに受けていてはひとたまりもありませんでしたわ」

「……そうだな。あのドラゴンの攻撃力はこれまで戦ってきたヤツとはだいぶ違うみたいだ」


 上位個体というべきか。

 とにかく厄介な敵が現れたな。

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