第57話 疑惑の生徒
全体ミーティング終了後、俺は少しだけ時間をもらって今朝メイジーとの話に出てきたハインリックという名の教師について報告する。
すると、若手メンバーであるダンハムとレイラニも彼を知っていた。
「あぁ、確かにハインリック先生って古代魔法を研究してたっすね。情熱的というか、とにかく熱くて優しい先生って印象が残っているっす」
「現代では当たり前に使われている魔法も、かつては不便なもので先人たちの努力によって磨き上げられたって口癖のように言っていた……とてもいい先生だった」
どうやら、ふたりともハインリックについては好意的なイメージを持っているようだ。
実際、メイジーも似たようなことを話していたし、本当に生徒たちからの評判自体は悪くなかったのだろう。
とはいえ、すでにそのハインリックは亡くなっている。
そのため一連の事件については無関係――と、思われていたのだが、ここでダンハムから意外な情報が飛び出す。
「そういえば、俺の同期にハインリック先生をめちゃくちゃリスペクトしている男子がいたっすね。あれはもう崇拝ってレベルだったなぁ」
懐かしむように語るダンハム。
慕っているとかじゃなくて崇拝か……ちょっと気になるな。
「たとえばどんな感じだったか、エピソードみたいなのってあるのか?」
「とにかくハインリック先生の研究室に入り浸っていたんすよ。書類整理とかの雑用を買って出ていたって話っすけど、魔法実験にも参加していたみたいっす」
「……本当に先生を尊敬していたんだな」
そんなハインリックが学園から不当な扱いを受け、追いだされるような事態となり、さらにはすぐに病が原因で亡くなったと知ったら……その生徒は一体どんな気持ちになるだろう。
「ちなみにその生徒の名前は?」
「ジノン――ジノン・バークハートっす」
ジノン・バークハート、か。
俺はさらに彼の卒業後の足取りについても尋ねてみたが、そこまでは知らないという。ジノンはもともと友だちが多いタイプではなかったのに加え、学園生活の大半をハインリック先生との時間に費やしていたという。
これはますます怪しくなってきたな。
とりあえず、ジノン・バークハートという人物の現在を知っておきたい。
――が、まずは目の前の任務に集中することが先決。
もし舞踏会が何者かの襲撃を受けて失敗に終われば、ノーザム王国の信用問題にかかわるからな。
気合を入れていかないと。
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