第54話 王都帰還
あれからウィンタース分団長など大勢の魔法使いたちを動員して謎の転移魔法陣を含めた追加調査を行ったが……何も掴めずに終わってしまった。
現地に残ってさらに調べを進めようとしていた俺たちだが、グラムスキー兵団長に呼びだされて王都へ帰還することに。
別に怒られるわけじゃなく、近々城で近隣諸国の大物たちを招いた舞踏会が開かれるのでその警護に当たってほしいとのこと。
ただ、ウィンタース分団長はこの命令に眉をひそめていた。
「グラムスキー兵団長が舞踏会の警護をさせるためだけに俺たちを王都へ呼び戻したとは思えん。何か他に指示があるはずだ」
帰路の途中で、彼はそう呟いた。
グラムスキー兵団長が俺たちを遊撃部隊として扱っているのは聞いていたが、確かにそういった立場にあるウィンタース分団をわざわざ警護につけさせるのだから他に目的があるのだろうと勘ぐってしまう。
戻ってきて早々にウィンタース分団長はグラムスキー兵団長のもとへ報告に向かった。
その間、俺たちは詰め所で待機となる。
時間もあるので、俺は休憩室でこれまでの流れを振り返っていた。
気になったのはあの時に使用されていた魔法陣だ。
俺もコリン村にいた際、足が弱っているお年寄りでもすぐに町へ行けるようにと転移魔法陣を使用していたが、あの時は魔力を込めれば移動可能という使いやすさが重視されたものだった。
しかし、あの魔法陣は違う。
同じ転移魔法でも扱いがずっと難しいとされる上位種だ。
ただ、あれは使い勝手が悪すぎるという理由で廃れてしまい、今は俺が使っているタイプの魔法陣の方が主流。
わざわざあのような古い魔法を使って何を――
「うん? 古い魔法?」
そういえば、マダム・カトリーヌも忘れ去れた古代魔法に強いこだわりを持っていたな。
ひょっとして、敵は彼女と同じタイプなのか?
……いや、ただの古代魔法愛好家とはタイプが異なる気がする。
もっとこう、執念のようなものを感じるのだ。
「随分と難しい顔をされていますね」
思考を巡らせていると、そこにひとりの女性魔法使いがやってくる。
「メイジーか! もう体はいいのか!」
「私自身はそれほどダメージを負っていませんから」
そう言って笑顔を見せるメイジー。
再会した当初は重傷を負った仲間を守るため、狼型モンスターの群れ相手に奮闘していた。そのせいもあってか、あの時のメイジーは疲労困憊で今にも倒れそうな感じだったからな。
今の彼女の方が、コリン村にいた頃の彼女に近いと言える。
「それより、先ほどは何も考えていらしたんですか?」
「ああ、実は――」
俺は今回の事件でたびたび浮上した古代魔法についてメイジーに話した。
「古代魔法ですか……確かに私たちの世代になってくると望んで覚えようっていう人はいませんね。学園時代のテキストにも記載はほとんどありませんでしたし」
「まあ、それが普通だと思うよ」
魔力消費や利便性を考慮しても、長い研究の末に進化した現代魔法の方が役に立つ。
それを好きこのんで使っているヤツがいるなんてなぁ。
「あっ、でも、その話を聞いて思い出したことがあります」
「思い出したこと?」
「えぇ。私が王立学園にいた頃、古代魔法を研究している先生がいたんです」
「へぇ……詳しく聞かせてくれるか?」
意外なところからヒントが転がってきたかもしれないぞ。
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