第50話 区切り
その後、バークス分団やシャーリーのいるアマンダさんの分団もチェスター家の屋敷に到着して、本格的に調査が始まった。
ちなみに当主のブラッグス・チェスターだが、彼は量産したドラゴンを売りさばくようなマネはせず、自身がそのドラゴンたちを率いて世界の支配者になろうと画策していた事実が明るみとなり、監獄送りとなった。
……まあ、処刑は免れないかもな。
屋敷内にある彼の執務室には、計画の証拠となるさまざまな書類が発見された。おまけに隠し部屋まで用意してあり、そこではさらに詳しいドラゴンの製造工程に関する資料だったり、名うての悪党や呪術師と一覧表まであった。
恐らく、彼の計画に賛同する者を集めていたのだろう。マダム・カトリーヌや彼女に呪いをかけた呪術師もこのリストから選別していたに違いない。
次々と発見されていく情報の数々。
だが、それは同時にもっと別の大きな闇の存在を予感させた。
俺たちが注目したのはドラゴンの製造工程に関する資料だ。
「このような方法は未だかつて耳にしたことがありません」
「生き物を生みだすっていうのはいわば禁忌だからな」
アマンダさんとウィンタース分団長はかき集められた資料に目を通しながら唸る。
問題はこいつの出所だ。
一体どこの誰がこのような方法を思いついたのか。
よくよく考えたら、そいつが一番危ない存在とも言える。
「資料はかなり古い物のようですから、すでに書いた者は亡くなっているかもしれませんね」
同じく資料を眺めていたシャーリーが呟く。
俺もその点が気になっていた。
何者かが新しく作ったというより、遥か昔に書かれた物を持ち出してきたのではないか。そっちの方がいろいろとしっくりくるんだよな。
「この資料に関しては専門家にきちんと分析をしてもらいましょう。仮にこれの写しがどこかに流通しているとなったら、事態は深刻です」
アマンダさんが訴えた可能性もなくはないが……それが最悪の展開だな。
「私は集まった資料を持って王都へと帰還します。あなた方は?」
「俺たちはもう少し周辺を探ってみる。もしかしたら屋敷外にもドラゴンにかかわる情報があるかもしれないからな」
「分かりました。ではお気をつけて」
「そっちもな」
中間報告のため王都へ戻るというアマンダさんやシャーリーを見送った後、ウィンタース分団の面々は周辺の調査へと乗りだす。
「何か新しい発見があるといいね」
「そうだな」
大事件にひと区切りついたことで、俺たちは安堵していた。
決して気を抜いていたというわけじゃない。
ただずっと張りつめていた空気がほんのちょっと緩んだ程度――という認識だった。
しかし、これによってある人物の接近にこの時までまったく気づいていなかったのである。
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