第47話 再戦

 この短い間に二度もドラゴンと戦うことになるなんてな。

 人生どうなるか分からないものだ。


 ――と、しんみりしている場合じゃないな。


「やれ! こいつらを食い殺すんだ!」


 自分のうっかりミスで悪事をバラしてしまったブラッグスは、それを帳消しにすべく俺たちをドラゴンに食わせて文字通り証拠隠滅を図るつもりらしい。


 敵のサイズは十メートル以上。


 俺たちくらいのサイズなら丸呑みできてしまうな。


「グギャアアアアアアアッ!」


 大きく口を開いて急降下してくる黒いドラゴン。

 最初の標的となったのは――マリーナだった。


 年齢的に一番若く、それでいてもっとも小柄だからな。

 的確な選択と言えなくもないが……それはあくまでも彼女が普通の人間の女性だったらという前提がつく。


「あたしを一番に狙ってくるなんて、よく分かっているじゃない!」


 命の危機にさらされているというのに、マリーナの顔つきはイキイキとしていた。

 ……あの子は昔からそうだったな。

 常に強い者と戦って、自分を鍛えようとしていた。


 時には村の近くの森で暮らしていたクマに戦いを挑んだっけ。

 いつまでも帰ってこなくて心配になった村人たちと一緒に探しに行くと、戦った熊と一緒に寝息を立ててお昼寝中だったなんてこともあった。さらにそのクマがモンスターに襲われたと知った時は単独でそのモンスターを倒して帰って来たな。


 とにかく、何事にも物怖じしない性格――というより、相手が強ければ強いほど燃え上がるタイプのマリーナは、バークス分団を壊滅寸前にまで追い込んだほどの力を持つドラゴンとの腕試しは願ってもないチャンスと捉えていた。


「あたしの水魔法に耐えられるかな!」


 マリーナは魔力で生みだした水で巨大な三叉槍を作り出すと、こちらへ突っ込んでくる黒いドラゴンへ先端を向ける。

 すぐに投げては避けられると判断し、ギリギリまで粘ってから力いっぱい放つ。


 凄まじい勢いで飛んでいった三叉槍だが、ドラゴンもマリーナの動きをしっかり見ており、直前でひらりと回避してみせた。


「おっと!」


 そのまま大口を開けて突進してくるドラゴンを紙一重のタイミングで避けるマリーナ。

 万事休すか――と、思いきや、ここで避けられた三叉槍が意外な動きを見せる。


 空中で一旦止まったかと思うと、なんと蜘蛛の巣状に広がってドラゴンを包み込もうとしていたのだ。


「これは読めなかったでしょ?」


 ニヤッと笑いながらマリーナはドラゴンへと語りかける。

 向こうからすれば完全に虚を突かれた奇襲。

 今度は避けられない。


 そう思った次の瞬間、ドラゴンは大きく開けた口から炎を吐いた。

 

 しかもあれはただの炎じゃない。


 緑色をしていて、わずかだが魔力を感じる。

 おいおい……まさかあのドラゴン――魔法が使えるんじゃないだろうな!?


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