第46話 切り札
人工的にドラゴンを生みだすというとんでもない計画を実行していたブラッグス・チェスター。
彼はなぜそのような凶行に打って出たのか。
真相を追求するよりも先に相手側の切り札が俺たちを襲ってきた。
その正体は――
「あ、あれは……ドラゴン!?」
まあ、予想はしていたのだが、まさかその通りだったとは。
ブラッグスを救うために屋敷の上空へ姿を見せたのは真っ黒なドラゴンであった。
体長は以前マリーナと協力して倒した個体とほぼ同等か。
「あれが例の人工的に生みだされたというドラゴンか?」
「恐らくは……」
実際にドラゴンを目の当たりにした経験はこの前の戦闘が始めだが、少なくとも黒いドラゴンが存在しているという話は聞いたことがない。
「だが、君たちはこの前もドラゴンと戦って勝っているのだろう?」
「そうなんですが……あいつは以前のヤツとまったく別物ですね」
「なんだって?」
ウィンタース分団長は驚いていたが、前に倒したヤツよりも遥かに強いという点に間違いはないと思う。
全身から漂う雰囲気が別格なのだ。
悠然と俺たちを見下ろす黒いドラゴンを眺めているうちに、俺の脳裏にある仮説が浮かび上がった。
「ひょっとすると、湖でバークス分団を襲ったのはあいつかもしれません」
「その通りだ。鋭いじゃないか」
突如背後から聞こえてきた声に驚いて振り返ると、そこには配下の兵士に体を支えられつつ屋敷を出てきたブラッグスの姿が。
驚いたのはこの状況下でもヤツに味方をする兵士がいたという事実だ。
「何をしている! おまえたちも王国騎士団所属の兵士ならばその悪党の言いなりになるんじゃない!」
ウィンタース分団長の怒りが爆発するものの、兵士たちはまるで動じない。
それもそのはずで――
「残念だが、彼らは私が個人的に雇ったいわば私兵だ。騎士団も魔法兵団もお堅い上に金や地位に無頓着なヤツらが多くて困る」
何よりも国防を任される組織として健全な証拠だな。
……幹部連中はその限りではないようだが。
「計画が明るみとなったのはこちらの落ち度だが……ミスはねじ伏せてもみ消さなくてはいけないよなぁ」
下卑た笑みを浮かべながら語るブラッグス。
もみ消す――つまり、ここで俺たちの口を封じるというわけか。
実に分かりやすい悪党ムーブだ。
あと、消すと言われて素直に消えるほどウィンタース分団の面々はやわじゃない。
相手が何者であろうと、必ず勝って王都へ帰還してみせる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます