第45話 悪徳領主
もしかしたらと罠を張っていたらまんまと引っかかったブラッグス様。
ここからどんな言い訳をするのか待っているのだが、彼は黙って俯いたまま何もしゃべらなくなった。
だからといってこのままというわけにもいくまい。
「お話しいただけないというのであれば、ぜひとも魔法兵団の詰め所へご同行いただきたいのですが」
「そ、それは……」
「では、納得いく説明を」
ウィンタース分団長の静かだけど迫力のある追い込みを前に、ブラッグス様は何も言えなくなってしまう。
これ以上追求しても無駄だろう。
そう判断した俺たちは外で待機している仲間に連絡を取り、ブラッグス様の身柄を魔法兵団の詰め所へ移送する準備を整えようとする――まさにその時だった。
「私としたことが……このような形でうまくいっていた計画を露呈させてしまうなんて……まあ、表沙汰になるのは時間の問題だったのだろうが」
あきらめなのか。
それとも他に策があるのか。
ブラッグス・チェスターの表情は不自然なほど穏やかなものだった。
「計画というからには、人工ドラゴンの件はあなたの指示で行われていたと判断してよろしいですな?」
「今さら誤魔化したところで無駄だろう。――その通りだ。マダム・カトリーヌに依頼して人工的にドラゴンを作り出したのは私の計画だよ」
素直に自供を始めたブラッグス。
この態度急変……どう考えても裏があるな。
「すべてを語っていただけるのは手間が省けて大変ありがたいですな」
「だろう? 感謝してもらいたいね」
なんだ?
なぜあんなにも余裕でいられる?
これが王家にバレたら間違いなく爵位剥奪――いや、それどころか場合によっては反逆罪で処刑される可能性だって大いにあるというのに。
確実に裏があるぞ。
「しかし、なぜドラゴンを人工的に作り出すなんてことを?」
「それについては――教える必要はない」
「何っ?」
どういう意味だ、とウィンタース分団長が問いただそうとした次の瞬間、屋敷の外から叫び声がした。
「ゼ、ゼルク先生! 大変だよぉ!」
俺の名を呼ぶのはマリーナだった。
あの子があんなにも動揺しているなんて、一体何が起きたんだ?
「ふん。今頃慌てたところでもう遅い。すでにこうなった時のための仕掛けが動きだしているのだ。切り札ってヤツだよ」
「貴様! 一体何をしたんだ!」
もう貴族だろうが関係ない。
ウィンタース分団長はブラッグス・チェスターの胸ぐらを掴んで迫る。
だが、ヤツはまったく動じる素振りを見せることもなく、こちらを挑発するようにヘラヘラと笑いながら答えた。
どうやらその切り札というのに相当な自信を持っているようだ。
果たして何が待っているのか。
とりあえず、ブラッグスを拘束魔法で捕えつつ、俺とウィンタース分団長は屋敷の外へと飛び出した。
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