第40話 決着
このままヤツを逃がすわけにはいかない。
全力の炎魔法をマダム・カトリーヌへと放った。
「くっ!?」
すでに逃げる気満々だった彼女は突然の魔法攻撃に動揺。おまけにさっきまで繰りだしていた魔法とは威力が段違いだからな。
こっちとしても切り札としてとっておいた魔法だ。
それくらいの反応を見せてくれなくちゃ困る。
回避はできないと察したマダム・カトリーヌは俺の魔法を弾き飛ばそうとする。
だが、こいつはさっきの拘束魔法のようにはいかないぞ。
「バカな!?」
押し返しきれなかった炎魔法はやがて渦となってマダム・カトリーヌの全身を覆いつくす。彼女は咄嗟に逃走用の転移魔法を解除して防御へと全振りする――が、それでも完全には消滅できず、かなりのダメージを負ったようだ。
「こ、この私が……」
「相手が悪かったなぁ、マダム・カトリーヌ」
膝をついた彼女にそう告げたのはウィンタース分団長だった。
「あんたも大魔導士ゼルクの話くらいは耳にしたことがあるだろう?」
「……ただの噂にすぎないわ。そんな人間が――ま、まさか」
「そのまさかだ」
呆然と目を見開いたマダム・カトリーヌ。
その視線はゆっくりと炎魔法を放った俺へと注がれた。
「彼こそが噂の大魔導士ゼルクなのだよ」
「そ、そんな……」
ガックリと項垂れた彼女はそれ以降まったく抵抗を見せなくなった。
「おまえさんにはどう足掻いても勝てないと悟ったんだろうよ」
ウィンタース分団長はそう説明してくれたが、正直、紙一重だったからな。俺が強力な魔法を封じていたのも、それを弾き返すだけの魔法を秘めているかもしれないって危惧していたからで、実際そうならなかったのは運がよかったに過ぎない。
――という持論を話すも、「そんな人はいませんよ」とマリーナに笑われてしまう。
他のメンバーも似たりよったりなリアクションだったけど……そうなのか?
ともかく、抵抗する気力を失ったマダム・カトリーヌを拘束魔法で封じ込め、駆けつけた護送用の馬車に放り込む。
こいつは魔法封じの仕掛けが施された特注品で、逃げだすことはまずできないという。
まあ、あれだけ戦意を失っていれば今さら抵抗するようにも思えないが。
何はともあれ、こうして事件は一応の解決となった。
もっとも、ドラゴンの正体とその目的に関してはこれからマダム・カトリーヌからたっぷりと聞き出すつもりらしい。
一体どんな情報が飛び出すのか、待ち遠しいな。
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