第39話 マダム・カトリーヌ
事件の核心部分に深く関与していると思われるマダム・カトリーヌ。
ヤツの身柄を確保するため、俺は拘束魔法を放つ。
だが、それを嘲笑うようにマダム・カトリーヌはあっさりと俺の魔法を打ち消した。
「なかなかの練度ね。けど、まだまだかしら」
そう語った直後、彼女の全身を取り巻く紫色の煙が俺たち目がけて勢いよく飛んできた。
鋭利な刃物というわけではないが、異様な気配を察知して回避。
煙はそのまま壁に直撃し、被弾部分を大きく削り取った。
「っ!?」
なんて威力だ。
ただの煙と油断していたら、今頃全身は真っ二つだったな。
他のメンバーもあの煙の異常性は察していたようで回避活動に映っていたようだ。
「いくらあんたでも、この数を同時に相手するのは無理だろう?」
「そうね。想定以上に腕の良い魔法使いが集まっているみたいだし……ここは名残惜しいけど撤退すべきかしら」
意外にも、マダム・カトリーヌは弱気になって退散を示唆する。
だが、これもこちらを油断させるための罠かもしれない。
そもそも重要な情報を隠し持っているであろう彼女をすんなり逃がしてなるものか。
「悪いが、そういうわけにはいかねぇ。あんたには知っていることを洗いざらい吐き出してもらうぞ」
当然ウィンタース分団長もこのまま逃がすつもりなどない。
分団の力を集結して、マダム・カトリーヌの身柄拘束に挑む。
――だが、それを実行するうえで一番厄介なのがあの煙だ。ただの攻撃手段というだけでなく、防御にも転用できる優れもの。さすがは手配書に載るほどの実力者といったところか。
見慣れない魔法に悪戦苦闘するウィンタース分団。
その間にマダム・カトリーヌは着々と退路へと向かっていく。
「さて、そろそろ御暇しましょうか」
どうやら準備が整ったらしく、ついに逃亡を図る。
「逃がすかよ!」
ウィンタース分団長をはじめ、俺たちも全力で阻止にかかるが、マダム・カトリーヌは再びパイプから煙を大量に吐き出して俺たちの視界を塞ぐ。
「なかなか楽しかったわ。また会いましょう」
そのまま煙の中へ姿を消そうとするマダム・カトリーヌ。
しかし、そこへマリーナが食い込んだ。
「逃がさないから!」
「っ! カトリーヌ!」
どうやらマダム・カトリーヌとともに彼女の用意した逃げ道へついていくつもりらしい。
これなら敵の本当のアジトへ侵入できるかもしれないが、かなり無謀な賭けだ。
あの子をこのままにはしておけない。
そう判断した俺は最後の魔力を振り絞ってとっておきの魔法を放つ。
「離れろ、マリーナ!」
俺が放ったのは最大級の炎魔法。
敵の本拠地内ということもあって何が起こるか分からないが、マリーナの度胸を買ってここは俺も全力で挑もう。というか、こうでもしなくてはもうマダム・カトリーヌを捕らえる術はないだろう。
「何っ!?」
さっきまでとは火力の違う魔法を前に、さすがのマダム・カトリーヌも動揺している様子。
となれば、効果も期待できる。
果たして、俺の炎魔法はヤツに通じるのか。
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