第37話 不思議だらけの屋敷
探知魔法には何の反応もなかったはずなのに、部屋へと入った瞬間に床が消えて俺たちは底の見えない穴を物凄い速度で落ちていく。
「くっ!?」
俺は咄嗟に無重力魔法を発動させ、周りのみんなも浮かせることに成功。
コリン村では思い荷物を運ぶために活用していた魔法がこんな形で役立つとは夢にも思っていなかったよ。
「た、助かったぜ、ゼルク」
「無重力魔法まで使えるとは……さすがだな」
「感謝っす!」
「凄い……」
「だから前々から言っているじゃない! 大魔導士ゼルク先生は偉大な魔法使いだって!」
なぜか本人以上にドヤ顔で語るマリーナ。
まあ、そう言ってもらえて悪い気はしないけどね。
ただ、問題はここからだな。
「穴の底は見えませんね」
「ならば浮上しよう。屋敷に戻って今後の方針を立て直さなくては」
「それがいいですね」
この屋敷には常識が通用しない。
そもそも忘れ去られた認識阻害魔法を使って守られているとう時点でなんだか嫌な予感はしていたのだ――って、ちょっと待てよ。
「認識阻害魔法……」
より高性能で高火力となった現代魔法。
それに対応できず、埃をかぶる状態となっていた古臭い古代魔法。
今となってはよほどの物好きでない限り現代魔法を多用するが、このトラップもその古代魔法だとしたら。
その可能性が脳裏をよぎる中、レイラニが異変に気づく。
「変」
「何が変なんだよ、レイラニ」
エリック副分団長の言葉を受け、レイラニは頭上を指さした。
「距離が縮まっていない」
「何? ――た、確かに、さっきからまったく進んでいないぞ!?」
これには俺も驚いた。
頭上には俺たちが落ちてきた部屋の天井が見えるのだが、そこを目指して浮上しているはずなのにまったく近づいてこないのだ。
「また別のトラップが発動してるんすか!?」
「だとしたら、こいつも古代魔法である可能性があるな」
わざわざ誰も使っていないような古い魔法で存在を隠していた屋敷の主。
だが、もしかしたらこちらの目を欺くというよりそもそも古代魔法という存在に対して並々ならぬこだわりを持っているのではないか。
だとしたら、このトラップの正体は――
「殴れば分かる……!」
俺の読みが正しければ、この屋敷を発見した時と同じ手法で突破できるはず。再び拳へ魔力を集中すると、今度は頭上目がけてぶん殴る。
ここでもやはり手応えがあった。
やはり、敵は古代魔法へのこだわりがかなり強いタイプらしい。おかげで楽に突破することができたよ。
そのまま浮上し、元いた屋敷の廊下へと戻ってきた。
「二種類の魔法を同時に、しかも威力をキープしたまま発動できるとは……」
「何を言ってんだ。ゼルクは入団試験の際に属性の異なる魔法を同時に発動させて有望株であるギルバートに勝っているんだ。これくらいやってくれるさ」
「噂に違わぬというヤツですね」
ウィンタース分団長とエリックさんはそう言うけど、これはコツさえ掴めれば誰でもできるはず。ただ、魔法兵団では推奨していないってだけだ。
気を取り直して、俺たちは二階へ進むために階段のある広間近くへ移動。
――と、その時、どこからともなく女性の声が。
「思ったよりもしぶといわねぇ……」
全員が警戒する中、彼女は紫色の煙とともに姿を現す。
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