第30話 新たな発見
曲者が揃うウィンタース分団の面々とともに、メイジーたちがドラゴンに襲われたとされる湖へとやってきた。
「こいつはひどいな……」
放置されたままになっているテントなどの残骸を見て、ウィンタース分団長は表情を曇らせる。
「うちは比較的自由に動ける連中を集めているが、バークス分団はエリート揃い。そいつらが壊滅寸前まで追い込まれたと聞いた時は耳を疑ったが……これほど荒らし回れるヤツが出てきたとなったら苦戦するのも無理はないか」
激戦の跡地を眺めながら、分団長はそう呟く。
その見解についてはまったく同意見だし、だからこそ二度目に俺たちが戦った際の弱さが信じられなかった。
「しかし妙な話だな。一度目と二度目で強さの異なるドラゴンというのは」
「二回目は体調不良とか?」
「それならそもそもおまえたちの前に姿を見せることはないだろうよ」
そりゃそうだ。
ドラゴンは知能の高い生物なので、その辺りの分別はつくはず。
だとしたら、なぜ襲ってきたりしたのか。
「やはり別個体と考えるのが自然では?」
異を唱えたのはエリックさんだった。
「確立としては低いですが、外見が一度目に見たドラゴンとよく似ていたまったく別のドラゴンが現れた……すべての状況を説明するにはこれしかありません」
「それもあり得ない話ではないんだろうが、どうにもしっくりこねぇ」
長年にわたって戦い続けてきたウィンタース分団長の勘は、もっと悪い事態を想定しているようだ。
「あのドラゴンの登場だが……誰かに仕組まれたというケースもあるんじゃないか?」
「誰かに仕組まれた?」
それはつまり、あのドラゴンを自在に操れる者がいると言っているようなものだ。
「ドラゴンを……操る者がいる……?」
レイラニが俺の思っていたことをそのまま口にしてくれた。
相変わらず声も小さいし、存在感は薄いけど勘は鋭いな。
「ドラゴン・テイマーですか……」
「人間がやっているとも限らねぇが、とにかく人工的な力が加わってあの場に現れたってこともあるんじゃないかと俺は睨んでいる」
「ま、まさか……」
表情を引きつらせているのはエリックさんだった。
それもそうか。
あんなおっかないドラゴンを自在に操れるヤツがいるとしたら、この世界のパワーバランスが大きく変わってしまう。
もっとも、二度目に現れたドラゴンのような実力しか持ち合わせていないなら、今の魔法兵団でも十分に討伐は可能だろう。
その後もウィンタース分団長の仮説を証明するか、或いは新たな発見を求めて周辺をくまなく調査するものの、これといって進展はないまま時間だけが過ぎ去っていく。
誰もがあきらめかけたその時、湖の岸辺を調べていた俺はある物を見つける。
「これは……鱗?」
キラキラと輝くそれは間違いなくドラゴンの鱗。バークス分団の面々が戦ったとされるドラゴンの物であるなら、昨日倒したドラゴンの鱗と比較して同一の個体であるかどうかしっかりと証明できる。
「でかしたぞ、ゼルク!」
「昨日のドラゴンの死体なら今別の分団が処理に向かっているはず。すぐに動けば間に合うはずです」
「よし! 早速移動開始だ!」
ウィンタース分団長の命により、俺たちは二度目にドラゴンと戦った荒れ地を目指して馬を走らせるのだった。
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