第28話 ウィンタース分団

 早朝の自主鍛錬を終えると、俺はウィンタース分団長の執務室へ。

 そこではすでにマリーナをはじめとする分団のメンバーが勢揃いしていた。


「来たか、ゼルク」


 相変わらずご立派な白髭を蓄えたウィンタース分団長は悪党も真っ青になるくらい邪悪な微笑みを浮かべる。味方だと物凄く頼りになるが、敵に回ったらまず戦うのを避けたくなる人相だな。


 さて、気になるのは分団長とマリーナの他にこのチームを構成する魔法使い。

 この場にいるのは三人。

 バークス分団に比べると随分少ないな。


「まずは自己紹介といこうか」

「では、自分から」


 そう言って一歩前に踏み出したのは俺と年齢がそう変わらないか少し上と思われる中年男性。恐らく三人の中で最年長だろう。


「俺はエリック。一応、副分団長ってことになっている」

「ゼルク・スタントンです」

「あんたの噂はよく耳にしているし、先日も早速活躍したそうじゃないか」

「いや、そんな……」


 この人が副団長か。

 気さくな感じで話しやすいし、俺のことについてもマイナスなイメージを持っていないようでひと安心だな。


 続いては若い青年。


「ダンハムっす! まだ入団二年目の若輩者っすけど、よろしくっす!」

「ああ、よろしく」


 入団二年目というと、かなり若手だな。

 マリーナより年下になるのか。

 こちらは絵に描いたような後輩ぶりだ。


 最後のひとりは二十代半ばほどの女性。


「レイラニ……よろしく……」

「よ、よろしく」


 こちらはなんというか……メイジーとはまたベクトルの違った大人しさだな。他のふたりが濃い分、うっかりしていると視界から消えてしまいそうになる。

 

「さて、ひと通り自己紹介も終わったようだし、早速新しい任務について話そう」


 ウィンタース分団長は流れを変えるようにパンパンと手を叩いた後、関連資料を手に取って説明を始めた。


「すでに各々の耳に入っているとは思うが、先日のバークス分団襲撃事件について……あまりにも謎が多いので再調査をすることとなった」

「再調査ですか……そいつは上からの命令で?」


 エリックさんが尋ねると、ウィンタース分団長は即座に答えた。


「いいや。連中の返事を待っていたら何年先になるか分からんからな。今ならまだ現場に多少でも手がかりが残っているかもしれん」

「やっぱそうなるんすねぇ」

「分かりきっていたこと……」


 ダンハムもレイラニも、ウィンタース分団長が独断で動くと事前に予期していたようだ。

 それにしても……組織としての統率力はかなり低そうだな。

 

 それもこれも、すべては上層部が頼りないから。

 面子や派閥争い、さらには私腹を肥やすのが目的という者までいるらしい。


 根底が腐り始めている魔法兵団だけど……大丈夫なのか?

 ちょっと不安になってきたぞ。

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