第27話 評価
翌日。
早朝から自主鍛錬のため、俺は寮の裏手にある自主鍛錬場へと足を運ぶ。
これはコリン村にいた頃からの日課だった。
魔法は一朝一夕で身につくものではない。
剣術と同じように、日々の積み重ねで上達していくのだ。特にAを超える上位ランクの魔法を覚えようとなったらかなりの努力が必要だ。
自身をさらなる高みへ押し上げようという名目で鍛錬をするわけだが、今回はそれだけではない。
俺はどうにも昨日戦ったあのドラゴンが忘れられないのだ。
バークス分団長は「まったく別個体」とほとんど断言していた。俺は最初に襲ってきたドラゴンを見ていないので何とも言えないが、少なくともあとから戦ったヤツが単体でメイジーたちのいるあの分団を壊滅寸前にまで追い込んだとは到底思えない。
だが、不思議なのはバークス分団の面々が「最初に戦ったドラゴンと後から戦ったドラゴンは同じように見えた」と証言している点。ただ実力だけが大幅に劣っているのだという。
何らかの理由で弱体したか、或いは別の理由があるのか。
どうにもそれが引っかかっている。
考えすぎなのかもしれないが、ハッキリさせておかないと気持ちが悪いんだよなぁ。
俺は鍛錬をしつつ昨日までの行動を振り返り、おかしなことがなかったか確認していこうと思っていた。こういうのは体を動かしていた方が閃くんだよな、俺の場合。
というわけで自主鍛錬場へとやってきたが、どうも先客がいるようだ。
「あれ? メイジー?」
「あっ! ゼルク先生!」
得意の雷魔法を磨いているメイジーと遭遇。
彼女は俺を発見すると小走りに近づいてきてペコリと頭を下げる。それから昨日のお礼を口にした。
もうすでにお礼の言葉は受け取っているのだがと伝えると、メイジーは「それでもお礼をしなくちゃ私の気がすまないんです!」と興奮気味に語ってくれた。
こういう律儀なところも昔と変わっていない。
それから、俺はメイジーと一緒に鍛錬を開始。
ともに鍛錬をすることで、バークス分団のその後について聞くことができた。
まず、負傷者は全員今日中に復帰できるという。
あまり無茶をしない方がいいのではと思ったが、「ベッドで横になっていては体が鈍る一方だ!」と言って半ば無理やり診療所を出たらしい。
なんというタフさ。
騎士もビックリだな。
「先生はこれから任務ですか?」
「その予定だよ。ウィンタース分団のメンバーとは、マリーナ以外まだ顔合わせが終わっていないからね」
一体どんな人が同僚になるのか……今は不安の方が大きいかも。
入団試験終了後の上層部の反応がどうしても脳裏をチラつくんだよな。
ウィンタース分団長はそういうの気にしないタイプっぽいけど、全員が全員そうとは限らないし。
ただ、その前にメイジーと会って話せたのは大きかった。
おかげで少し気持ちが楽になったよ。
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