第26話 報告
アドナス山脈からバークス分団を連れ帰った後、俺とマリーナはメイジーたちと別れて報告のためにウィンタース分団長の執務室を訪ねた。
「おぉ! いきなりやってくれたか!」
作戦成功の一報を耳にしたウィンタース分団長は俺とマリーナの肩をバシバシと勢いよく叩きながら喜ぶ。
「相変わらず議論は何の進展もないからうんざいしていたが、おかげでスカッとしたいい気分だよ!」
「だっはっはっ!」と豪快な笑い声とともにウィンタース分団長。
相当鬱憤がたまっていたようだな。
それにしても……魔法兵団の上層部というのはいろいろと闇が深そうだな。いろいろと事情はあるのだろうが、もっとも優先すべきは人命だろうに。大体、有望株が揃っているバークス分団をほとんど見殺しにしようとしていた判断が信じられない。
「君には魔法兵団の判断が愚かしいと感じているんじゃないか?」
「っ!?」
こちらの思考をウィンタース分団長に読み取られ、思わず体が強張った。
「ははは、そんなに緊張しなくてもいいさ。俺だって君と同じ気持ちだよ」
そう語る分団長の顔はどこか悲しそうに映った。
やはり、今回の判断について思うところがあるんだろうな。
「面子だの派閥だの、そんなものはさっさと捨て去って魔法兵団本来の目的を果たすべきだと思うんだがな」
「本来の目的……人々の平和を守るということですね」
「その通りだ!」
俺もウィンタース分団長の意見には同意する。
なんのために魔法兵団が存在しているのか……それを見失ってしまっては存在意義がなくなってしまう。
「まあ、今すぐに大規模な組織改革なんて無理だろうが、いずれはもう少しまともな組織へしていきたいと考えているよ」
「……農村で生まれ育った俺には、政治の裏にある思惑などについては理解の及ばない部分もあります。――でも、そういう意識を持っている方はひとりでもいれば、きっかけひとつで変われると思いますよ」
「だといいんだけどな」
困ったような笑みを浮かべながら語るウィンタース分団長。
……そういえば、魔法兵団のトップであるグラムスキー団長はどう思っているのだろう。
彼がその気になれば多少なりとも状況は好転すると思うのだが。
ウィンタース分団長が言及しないところを見ると、望み薄なのかな。
「さて、辛気臭い話はここまでにして……飯でも食いに行くか」
「賛成!」
「いいですね」
「よっしゃ! 今日は成功報酬代わりに俺のおごりだ! 好きに飲み食いしてくれ!」
「「おぉ!」」
太っ腹なウィンタース分団長の御厚意に甘え、今日はトコトン楽しむとしよう。
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