第24話 ドラゴン、急襲
「あ、あの時のドラゴン!?」
最初に叫んだのはバークス分団長だった。
あの時――それは間違いなく、襲撃された瞬間を指しているのだろう。
つまり、このドラゴンがバークス分団を壊滅寸前にまで追いやった犯人なのだ。
「い、いつの間に!?」
「なぜこのタイミングで!?」
次々に疑問を口にするバークス分団所属の魔法使いたち。だが、どれだけ尋ねたところでドラゴンが答えるわけもなく、ヤツは青白く光る細長い目をこちらへ向け、同時に大きな口をゆっくりと開いた。
「っ!? 来るぞ! 回避するんだ!」
それが攻撃の合図だと判断した俺は全員にそう叫ぶのがやっとだった。
しかし、わずかに間に合わず。
分団のメンバーが逃げ切るよりも先に、ドラゴンは大きく開いた口から火炎を吐き出す。
「やらせない!」
この攻撃に対し、真っ向から勝負を挑んだのはマリーナであった。
彼女の魔法属性は水。
おまけに水聖という名をつけられるほどのスペシャリストだ。
ドラゴンが吐き出した炎に対し、正面から自慢の水魔法で迎え撃つ。
「くっ……」
当初はマリーナが優勢であったが、徐々に押され始めていた。
このままでは彼女が丸焦げになってしまう。
「援護するぞ、マリーナ!」
俺は大慌てで彼女の横へ立つと、同じように水魔法で援護する。
だが、同じ威力では意味がない。
もっとランクの高い魔法で攻撃をしなくては。
「我が敵をその爪牙をもって滅せよ――【
マリーナの水魔法へ上乗せするように、四つの鋭い牙となった水魔法がドラゴンへと襲いかかる。
「シャアアアアアアアアアアアッ!?!?」
予期せぬ四方向からの攻撃に、ドラゴンが悲鳴をあげる。
とはいえ、あの巨体だからなぁ。効果はあったのかもしれないが、言うほどダメージはないだろう。
ここで大事になってくるのは攻撃の手を休めないこと。
「マリーナ!」
「おまかせ!」
こちらの意図を事前に察知していたマリーナは俺が声をかけるよりも先に動き出していた。
「こいつでトドメ!」
マリーナは自らの魔力で水を生み出し、さらにそれを無数の矢へ変える。
入団試験ではギルバートが炎を矢に変えて俺に放ってきたが、それの水バージョンといったところか。
炎でないなら火傷の心配もないと油断しそうなものだが、その分こちらは貫通力に長けているようで、硬い鱗に覆われたドラゴンの皮膚をいとも簡単に貫いた。
結局、これが致命傷となりドラゴンは沈黙。どんな強敵なのかとヒヤヒヤしていたが、終わってみればあっさりとした決着だ。
「おぉ……こうもあっさり倒してしまうとは。さすがは大魔導士ゼルク殿だ」
バークス分団長はそう言ってくれたが……俺は言い知れぬ不安にかられていた。
いくらなんでも手応えがなさすぎやしない?
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