第23話 救出作戦、開始!

 仲間を守るために全力を出せないでいるメイジーたちを救うため、俺たちすぐさま行動を開始した。


 まずは敵の注意をこちらへと引き付けるため、バークス分団長が初級の炎魔法で牽制。

 それに反応したモンスターをマリーナたちが軽く蹴散らしている間に、俺は負傷した魔法使いのもとへと向かった。


「大丈夫か!」

「あ、あんたは……?」

「増援だよ。もう大丈夫だ」


 早速、俺は負傷している魔法使いに治癒魔法をかけていく。


「あんた、回復魔法使いなのか」

「他にもいろいろとやるよ」

「ふっ、それは頼もしいな」


 治癒魔法の効果がすぐに出たようで、男は冗談っぽくそう言うって笑った。

 ……俺の方は冗談のつもりじゃなかったんだけどな。


 それからしばらくして、ようやくメイジーも俺の存在に気づく。


「えっ? あ、あなたは……」

「久しぶりだな、メイジー」

「っ!? ゼ、ゼルク先生!?」


 驚きのあまり声が裏返るメイジー。

 だが、それに匹敵するくらい、治療中の男性魔法使いは驚愕していた。


「ゼ、ゼルクだと!? まさかあのゼルク・スタントンなのか!?」

「ま、まあ、一応」

「てっきりただの噂と思っていたのだが……まさか実在するとは」


 またしてもこの反応か。

 噂に関してはシャーリーやマリーナから聞いてはいたものの、かなりデカめの尾ひれがついているようだ。

 ともかく、それは一旦置いておくとして、今は治療に専念しないと。


「メイジー、彼は必ず俺が助ける。だから君はしっかり戦ってくるんだ」

「はい!」


 俺のひと言でメイジーの瞳に輝きが宿る。


「雷の精霊よ……我が願いに応えよ」


 静かにそう唱えると、メイジーの周辺からバチバチと音が鳴り始める。

 雷魔法。

 属性魔法の中では攻撃力が高い反面、魔力の消費も激しいという扱いの難しさから、あまり得意とする者はいないとされている。俺自身、光属性と闇属性を除けば一番習得するのが難しかった魔法属性だ。


 だが、メイジーはそんな素振りをまったく見せず、強力な雷撃を自在に操ってオオカミ型モンスターを蹴散らしていった。


「見事なものだな」


 たまらず凝視してしまうほど完成度の高い雷魔法。

 圧倒的な攻撃力で狼型モンスターを一瞬にして十体以上葬った。


「相変わらずえげつない攻撃力だなぁ」


 感心と呆れの入り混じった、複雑な感情で語るマリーナ。

 負けず嫌いの彼女があっさりと認めるとは……これはとんでもないな。


 ともかく、これで敵は全滅。

 任務完了だ。


「よし。すぐに王都へ戻って――」


 話している途中で、急に辺りが暗くなる。

 まだ夜どころか昼前だというのに。


 不思議に思って空へ視線を移すと――俺は固まった。


「なっ……」


 雲ひとつない快晴の空に浮かんでいたのは、これまでに見たことがないほど巨大なドラゴンであった。

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