第20話 合流

 突如現れたドラゴンと戦っていたバークス分団の者たちの反応を発見し、その場へと急行する俺とマリーナ。


 場所は山に近く、そちらへ向かっていくと次第に周辺の景色が変化していった。

 背の高い木々は数を減らし、足元にはゴツゴツとした岩肌が目立つようになってきたのだ。


「マリーナ、足元に注意して進もう」

「先生こその方こそ、転ばないでよ」


 さすがに若いマリーナは軽快に進んでいくな。

 俺も農業で足腰を鍛えているから年齢の割に動けると自負している――が、想定通りにはいかず、理想と現実のギャップを感じるよ。


 さらに進んでいき、たどり着いた目的の場所。

 そこまで来るともう森の面影はなくなり、荒れ地となっていた。


 ここから少しずつ標高が上がっていくのだろう。


「さて、この近くにいるはずなんだが……うん?」


 辺りを見回しながら捜索していると、ひと際大きな岩を発見。その傍らでわずかに動く人影のようなものが――もしや、あそこにいるのか?


 ゆっくりと慎重に近づいていくと、マリーナが声をあげた。


「バークス分団長!」

「マ、マリーナさん!」


 マリーナがバークス分団長と呼んで声をかけたのは丁寧な物腰が特徴的で眼鏡をかけた三十代半ばほどの男。その横にもふたりの男女がおり、全員が同じ魔法兵団の制服を身にまとっている。


 どうやら、彼らが捜していた人たちみたいだ。


「君が来てくれたのは心強い!」


 魔法兵団の若きホープが助けに来てくれたのだから喜ぶのは分かる。問題はその視線が俺に向けられた時だ。


「君は……始めて見る顔ですね」

「え、えぇ、実は昨日入団したばかりで」

「なんだって!?」


 バークス分団長だけでなく他のふたりもビックリしていた。

 まあ、あんまりこういう場に新人を放り込むようなことはしないだろうからな。おまけに若手でもなく農村で暮らしていた普通のおっさんだし。


 しかし、ここでマリーナの口にした言葉が状況を一変させる。


「この人こそ、長きにわたって王都での噂の的だった大魔導士ゼルク先生本人だよ!」

「「「なっ!?」」」


 どうやら三人とも噂とやらは耳にしていたようで硬直。

 最初に正気を取り戻したのはバークス分団長だった。


「な、なるほど……マリーナがここにいるということは、ウィンタースが送り込んだというわけだから実力は折り紙付きと見て間違いないか」


 ウィンタース分団長はかなり信頼されているようだな。

 上に忖度とかしなさそうなタイプだったし、それも納得だ。


「バークス分団長! メイジーはいないの!?」


 この場にメイジーの姿が見えないことに気づいたマリーナが訴える。

 そうだ。

 俺にとってもかかわりが深いメイジーは一体どこなのか。

 マリーナの質問に対して、バークス分団長はなんとも言いにくそうな表情を浮かべていた。


 これは……嫌な予感がするな。

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