第15話 初仕事
農家から魔法兵団へ転職し、いよいよ迎える最初の任務。
それがまさかあのメイジーの所属する分団の安否確認になるなんて。
穏やかで心優しい性格だった彼女のことだ。
きっと分団では回復魔法使いとしてサポート役に回っているのだろう――と、思っていたのだが、馬に乗って移動中にマリーナから衝撃の事実を知らされる。
「メイジー? バリバリの戦闘魔法使いだけど?」
「えぇっ!?」
イメージとは真逆の姿となっていたメイジー。
あの子が戦闘用の魔法を覚えるなんて、にわかには信じられないな。
「心境の変化があったのか……」
「まあ、最初は補助魔法を主体にやっていたんだけど、そのうち雷魔法に適性があるって分かってからはそっちにのめり込んじゃったみたい。いつの間にか雷英って異名がつけられるくらい実績をあげているし」
「ら、雷英……」
シャーリーが炎麗。
マリーナが水聖。
そしてメイジーが雷英か。
幼い頃に魔法を教えていたあの子たちが、今や魔法兵団のエース候補。
感慨深いと言っていいのかどうか。
……まあ、残った最後のひとりに関しては家柄的にいずれ大物になるだろうって思っていたけど。
あの子も魔法兵団にいるはずだから、いずれ会ってみたいな。
「あっ、先生、あれがアドナス山脈だよ!」
馬を止めたマリーナが指さす先には標高の高い山が連なっている。
あの周辺に大型モンスターの目撃情報が集まっているらしいが、ここから見る限りでは特に変わった様子はない。
とはいえ、かなり距離もあるから何も分からないだけだろう。
「よし。探知魔法で周囲を探りながら行こう」
「えっ? 先生って探知魔法も使えるんですか?」
「まあな。――って、マリーナは使えないのか?」
「あたしの場合は攻撃魔法主体にやっているからそっち系の魔法は扱えないよ」
そういうものなのか。
コリン村にいた時の俺はとにかく魔法を覚えようと手当たり次第に魔導書を読み漁って身につけていったから、属性による得手不得手に関してはあまりピンと来ない。
ともかくそれは一旦置いておくとして、今大事なのはメイジーたちの状態だ。
探知魔法で辺りを警戒しつつ、俺とマリーナはバークス分団が調査の拠点に選んだという湖を目指して移動を開始する。
馬を走らせること約二時間。
そろそろ辺りが暗くなってきた頃にようやく目的地へと到着した。
「夜の湖か……不気味だな」
「だねぇ。――っ! せ、先生、あそこ!」
何かを発見したらしいマリーナの視線を追っていくと、そこにはボロボロになったテントがあった。
まさか……あれはメイジーたちのテントなのか?
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