第6話 オールドルーキー
魔法兵団へ再就職するために受けた入団試験。
俺の対戦相手は学園をトップの成績で卒業したギルバート。
彼はその成績に恥じぬ強烈な炎魔法を放った。
それに対抗すべく、俺は水魔法で迎え撃つ。
ギルバートの攻撃は数えきれないほどの炎の矢。
これをひとつひとつ弾き返していたのでは間に合わない。戦いの決着はダメージ量で決まるため、あれをすべて防がなければ意味はないだろう。
「なら、あれを試してみるか」
数年前、村にある一軒家に雷が落ちて家が燃え上がったことがある。俺は住人を守るために水魔法で全身を守りつつ炎の中へ突っ込んで救出した。
さすがにあの時とは規模が違う――が、そこは水魔法の精度を上げれば解決するはず。
「青き水壁よ。我が身を守れ」
俺は魔力によって生みだした水を全身にまとうと、そのままギルバートへと突っ込んでいった。
「何だとっ!?」
すでに勝利を確信していたギルバートはこちらの行動に驚き、魔力が大きく乱れた。あれではすぐに炎魔法を打ち出すのは難しいかな。
彼の学園での功績や先ほどまでの態度を見る限り、実力はあるのだろうが打たれ弱さがあるのではないかと推察したが、どうやら見事に当てハマったらしい。
言ってみれば、挫折を知らずにここまで来たタイプの人間だろう。
こういう咄嗟の場面でどのような反応ができるのかも魔法兵団のチェック項目にはあるんじゃないかな。
そういう意味では、すぐに反撃へと移れない彼の行動は致命的だ。
確かに火力の高い攻撃魔法を扱えるようだが、それだけではいざという時に対処しきれなくなるからな。
さて、こちらの狙い通りに水魔法によるシールドはギルバートの放った炎の矢を完璧に防いでくれた。
おかげでもうひとつの攻撃手段に移れる。
「雷の聖霊よ。我が声に応えよ」
水魔法のシールドをキープしつつ、雷属性の魔法も使用できるよう魔力を分散。
こちらが攻撃のメインとなる。
「雷槍よ。我が敵を貫け」
俺は魔力によって生みだした雷を槍の形に変えてギルバートへと放つ。
「バカなっ!?」
これまた予想と違った動きだったようで、ギルバートは真正面から俺の攻撃をまともに食らってしまった。
同時に防御魔法が解除され、審判の「勝負あり!」という声が修練場内に響き渡る。
それはギルバートの敗北を意味していた。
「ふ、ふたつの属性を同時発動だと!?」
「しかもどちらもかなり高度な魔法だったぞ!?」
「何者なんだ、あの男は!?」
「だからさっきから伝説の魔導士ゼルク・スタントン先生だと言っているじゃないですか」
ドヤ顔で魔法兵団幹部たちに説明するシャーリーは、こちらへ視線を移すと他の人には見えないように小さくピースサインをして勝利を祝ってくれた。
とりあえず、勝利すれば入団できるというわけなので俺も今日から晴れて魔法兵団勤務となる――はずなのだが、どうも修練場内のざわつきが消えない。
もしかして……何かまずいことやっちゃったかな?
さすがにやりすぎとか?
一抹の不安を抱えつつ、俺は次の試合があるからと審判に促されてステージの外へ。
だ、大丈夫だよね……?
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