第8話

 なるほど…ラブコメは守備範囲外か。どうやら天使の求めているものはラブコメではないらしい。であるならば、彼女との関係には見切りをつけるべきだ。

 俺は彼女を待たずに素早く登校する。


 通学路は上り坂だ。御剣みつるぎ学園は丘の上にあって、街のシンボルとも言うべき存在でもある。徒然荘からも遠望に見える。

 その坂道を駆けあがっていく。

 普段はちんたら歩いて登る道なのだが、俺は駆け抜けていく。何か、何かが足りないと。


「うわっ?!」


 俺としたことが、焦り過ぎた。学校に早く着いたからと言って何が出来るわけでもないのに。狭窄した思考に気を取られて、角から飛び出してくる少女に気が付かなかった。俺たちは見事に衝突した。


「いったた…」


「すまん、大丈夫か?」


 彼女の顔には見覚えが無い。それに制服も違うから、近所の別の高校の生徒なのだろう。俺はそう言って手を差し伸べる。


「あ……好き」


「は?」


 こいつは何を言っているのだろう。もしかして、『すき焼きにしてやる』と言おうとしたのだろうか? いや、そんなことはあるまい。……全く。


「悪いがかまっている暇はないんだ。」


 だが、恐らくもう駄目だ。このアクシデントで字数を消費しているはず。


「でも私は――」

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