第5話

 まただ。

 時間じゃない。明らかに今までよりも短かった。やはりが重要らしい。それがどうやってカウントされるのかはわからないが、いずれにしろ素早く行動は完結させた方がいいように思う。

 俺はすぐに家を出て、201号室の前で待つ。


「あ、おはようございます」


「おはよう。一緒に行かない?」


「あ、はい。是非」


 彼女は動木ゆるぎ伝江つたえ。14歳。中学三年生で、俺の後輩だ。彼女とは同じ部活、文芸部だったわけだが……。


「…………」


「…………」


 やっぱり、何も考えなければ、ある程度長い期間が過ごせるらしい。坂を上って、学園の校門まで行き、動木ちゃんとはそこで別れる。


「またね」


「はい。また」


 柔和な笑みに送り出され、俺は靴を履き替える。上履きで階段を踏みしめて、いつも通り教室に向かう。

 こうした日常の動作には描写すべき点が少ない、というのが俺の仮説だ。


「よぉ、斜森ななもり


初世はつせ。悪いが今日は話しかけないでくれ。ちょっと実験したいことがある。」


「ん? ……まぁ分かったよ。じゃあな」


 初世はつせゆうは俺の親友とも言える人物だが、今回は接触しない。そしてあいつのことだから、他の奴等にも俺の実験の事を触れ回ってくれるだろう。そうすれば字数を消費せず――

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