第2話

「――っはっ…はっ…はっ…」


 死んだ。その実感がある。なのに全身の感覚は正常だと示している。

 俺の脳だけが孤立したように危険を訴えていて、悍ましい嫌悪感が支配する。


「おえっ…おぅえっ…」


 気が付けば吐瀉していた。その先にあったのは、あの白い羽。


「……。」


 引きつった顔で、俺は駆けだす。


「いやだ…いやだ!」


 靴も履かずにドアを開け、外付けの階段を駆けおり、信号を無視して交番へ最短距離で渡る。


「ちょっと君――」


「助けてくれ! 殺される!」


「…落ちついて、一旦こっちへ。」


 そう言って、さっき一緒に死んだはずの交番のおっちゃんが扉を開けて、イスに座るよう促してくる。

 俺は真剣な面持ちの警官に指示されるままに深呼吸をして、話し始める。


「ついさっきまで、貴方と話していたつもりなんです。でもその時、あいつの羽が光だして――」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。順を追って話してくれないか?」


「えーと…まず、大天使が来て…」


「その大天使って言うのは?」


「知らない人です。なんか金髪碧眼で、白いワンピースで、金のヘイローを浮かばせてて、羽を生やした……」


 言っていて気が付いた。これは錯乱しているんじゃないか?

 それなら大丈夫だろう――

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