―――3―――
兄妹の髪の毛がべとついていたのを見て、姫埜は二人に順番に風呂に入るように言った。
こんな若い子が風呂に入れないほど困窮していたのなら、親を姫埜は許せなかった。
そして、「殺したかった」あの魅禄は本気だった。
二人に何があったかはまだ聞かない。
二人が言えるようになったら、受け入れよう。
「琉亜、先入れよ」
「いいの?」
「うん、オレは後でいい」
「ありがと、おにぃ」
やはり、魅禄はいいお兄ちゃんだ。
「琉亜、これ、私のブランドの余ってた部屋着。あんたにあげるわ」
「え!! いいの?」
「あんたらの荷物の中身も洗わなあかんやろうし、部屋着以外にもあげるわ。勿論、魅禄、あんたにも」
「ありがと!! 姫埜さん!!」
「色々、悪い」
「ええよ。ほら、琉亜、入っといで」
「うん!!」
そして、姫埜は魅禄の服を見繕いに、仕事部屋に向かった、
一人、取り残された魅禄は、姫埜の後を着いていった。
「あれ? 魅禄、どうし……」
「ここまで色々してもらったら、マジ、オレのこと好きにしていいから」
低い声で囁かれる。
本能で、『この男はヤバい』と警告が鳴った。
必死で理性をふり絞って、詰め寄ってくる魅禄を引き離す。
「そんなつもりで、あんたらを家にあげたんちゃう。今度そういうこと言ったら追い出すから」
「オレはあんたに琉亜を任せて死んでもいい」
「あほなこと言いなや」
「じゃあ、オレを好きにして」
「ぅわっ」
ちゅっと二人の唇が重なる。
ああダメだ。
渇いていた身体が火照ってくる。
「ちょっと……」
「オレはこれしかあんたに返せない」
それを聞いて、姫埜はかちんっときた。
「あほか!! もっとあるやろ!! 私がおらん間にモカの世話したり家事したり、それが嫌ならうちの店で働かせるからな!!」
ぽかん、としてから、魅禄は豪快に笑い出した。
「わははははははは!! あんた面白いね!!」
「言っとくけどな、独身女が皆飢えてると思うな!!」
「ごめん。キスしたりとか、してごめん。これから、世話になる」
「ん。わかったならええ」
リビングに移動して、少し話をしていると、琉亜がリビングにやってきたので、交代で魅禄が風呂に入る。
部屋着はやはり、姫埜のアパレルブランドの服になった。
魅禄が風呂に入っている間、姫埜と琉亜は夕飯を宅配してもらおうと、ウーバーのサイトを見ていた。
そして、魅禄が出てきたので、三人で相談して、ハンバーガーのセットを頼んだ。
ハンバーガーが届いたころ、時間は、十二時前だった。
モカはもう爆睡していた。
私の人生を狂わせた二人の男 三途ノ川 黒 @jakou
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