第3話 終わりゆく世界での告白を

 ビリビリと頭に電流が走るような音が流れるとともに目が覚める。

 


 「痛い・・」



 目を開くと、木製の天井が見える。


 長く年期が過ぎているのかボロボロだ。


 ……ここは、自分の知らない場所だということが直感で理解出来る。


 フカフカな感覚。


 どうやら自分は、ベットに寝ていたようだ。


 誘拐でもされたのか、それとも海で遭難して誰かに助けられたのか?


 嫌な妄想を淡々と思い浮かべ、体を起こし周りを見る。


 自分の身の回りには、机や椅子、直方体の鏡、箪笥、本棚があり、全て木製だ。


 ザーザー。


 微かに波の音が聞こえる。


 ベットから立ち上がり、窓のカーテンを開く。


 オレンジ色の大きな光が部屋を包み込む。



 ……違う。


 違う!!!!


 思い出した……思い出した。


 自分の脳裏にキーーンと金属音が響く中。


 脳の記憶のページに様々な文字が書かれていく。



 『昼間に行った屋根裏の修理。俺が蜘蛛にびっくりして屋根に頭をぶつけたとき、スグナは、頭を撫でながら、笑ってくれていたこと』

 『昼過ぎに行ったクッキー作り。俺がオーブンの温度を間違えて、全部焦がしていた時、彼女は笑いながらクッキーを食べて、笑ってくれていたこと』

『夜に行った青い花が広がる花畑。俺が名も知れない花で花冠を作って彼女の頭にかぶせると、涙をこぼしながら、笑ってくれたこと』



 数々のレサワスグナとの思い出。


 記憶の最後にスグナに告白しようとした時、プツンと時空が歪んだ。


 そうだ…………そうだった。


 伝えなきゃ。


 ベットから立ち上がり、急いで部屋から出る。



 「……あれは」



 リビングの机の上に、一輪の青い花があった。


 反射で花を取り、家を出る。


 そして、浜辺へ向かう。


 ザー、ザー。


 甚だしく波の音が聞こえる。


 海風が俺の背中を後押しする。


 夕焼けの浜辺に着くとある少女がいた。

 

 淡いピンク色のツインテールの髪型。

 虹色にきらきらと、宝石箱のように鮮やかな目。

 雪のように美しい肌、人形のような顔。

 黒と白のメイドの姿をした少女が海を見ていた。



「スグナ!!!!」


 

 俺はスグナを強く抱きしめる。


「思い出したよ!! 思い出したんだよ!! 俺!!」

「どうして……き、記憶が戻ってるの?」



 彼女は驚きつつも俺を優しく抱きしめる。


 しばらくスグナを抱きしめた後に、背中に回していた手を放す。



「……どうやらこの世界は、そろそろ終わるようだね」

「……そうみたいだな」



 不可思議な文字列が空を覆う夕陽を見ながら俺は、彼女に一言放つ。

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